第81話 露天風呂に入れば身も心も丸裸【笛吹風雪視点】
青山クンは大丈夫だったのだろうか……?
彼は間違って女湯に侵入してしまった罪を問われ、赤槻サンに蹴り飛ばされてしまった。
まあ、彼の自業自得なので、仕方ないことだが……。
女子グループの方はというと、更衣室で服を脱いでいる最中だ。
ブラホックに手をかけ、外す。
以前よりも気持ちキツくなっている気がする。
胸が大きくなったところで邪魔になるだけなのに。
ゲーマー目線で申し訳ないが、胸が大きくなってもゲームが上達するわけではないので無意味である。
周りの仲間たちも服を脱ぎだす。
彼女たちの自然な姿が露になる。
そういえば、皆の裸は初めて見るな。
もし、青山クンがあのままこの場に居たら、刺激が強すぎて卒倒ものだろうな……。
そんな無意味なことを考えていると、あることに気づいく。
しかしぼくはかなり「デカい方」なのに、周りを見渡すと、そんなぼくに負けず劣らずの「強豪揃い」だ。
同世代でぼくより大きい人はほとんどいないはずなのに、赤槻サンの「それ」は、ぼくの「それ」と同程度がそれ以上に見える。
「貴公らは、どれだけの犠牲を払えば、そんなにデカくなるのじゃあ!」
この中で唯一「小さい」、比屋根サンが喚いている。
彼女は小柄ないでたち通りの幼児体形だ。
その体系に見合った、小ぶりなものを搭載しているようだ。
「何かを犠牲にして能力を手に入れるみたいな発想はいいから。逆にぼくはきみが羨ましいよ」
「それは嫌味か、ブリュンダストよ」
「いや、本心だよ。こんなものゲームに一切不要だからね」
「不要……じゃと……ぐぬぬ」
「きみたち裸で何やってるんだー。さっさと入るぞー」
大本命は遅れてやってくる。
ぼくや赤槻サンを凌ぐ、そのド迫力の二房の巨峰。
数々の男を幻惑してきたであろう、熟練ささえ感じるオトナの完成されたボディ。
キングオブキング、ならぬ、クイーンオブクイーン。
女帝・二部崎蘭子の「すべて」が露になる――。
大浴場に入ったぼくたちは、比屋根サンの熱望により、早速露天風呂へ。
海が見える絶景露天風呂は、アウトドアにまるで興味を示さないぼくでも感動を覚えるレベルだった。
ぼくたちは肩を並べて、露天風呂を堪能する。
夜空に立ち上る白い湯気と、遠くに見える夜の海が何とも幻想的だ。
「ところできみたちは好きな人とか居るのかい?」
「ぶほっ!」
二部崎先生がぶっこんできたせいで、せっかくティアSの景色を見ていたのに、何も口に含んでいないはずなのに吹き出してしまった。
二部崎先生のぶっこみに、周りが凍り付いた。露天風呂のおかげで身がホカホカであるはずなのに、である。
「先生、何ですかそれ」
赤槻サンが怒り口調で問いただしてくる。
赤槻サン、そういう話、嫌いそうだもんな。
「まあまあ、赤槻よ、そう言わずに。旅行に恋バナはつきものだろ」
「教師が恋バナを率先するのはどうかと思いますが」
「勿論、私が学生の時は修学旅行で寝る前に恋バナしていたぞ。勿論、教師が見回りに来たときは、寝たふりをしていたがな」
「いや、それ、現役教師から飛び出した言葉としては不適切すぎますよ」
「まあまあ、細かいことは置いておいて、どうせきみたち寝る前にそういう話しないだろ。だから、私が気を回しておいたぞ」
「一番要らない気回しですね」
「さぁて、まずは、そんな赤槻に聞いてみようかな。やっぱり、青山か?」
次の瞬間、赤槻サンは拳で思い切り水面を叩いた。
バシャンという豪快な音が露天風呂に響いた。
何事かと、周りにいる人がこちらを一瞥する。
どうやら神の逆鱗に触れてしまったようで、赤槻サンはご乱心の様子だ。
「先生だけどすみません。本気で言っているのならぶちのめす!」
とんでもない剣幕で、赤槻サンは二部崎先生に詰め寄っている。
これではどちらが生徒で、どちらが先生か分からない。
「すまんすまん、悪かったな。でも私はお似合いだと――」
「先生っ!」
「ごめんて。それで、いないのか?」
「いるわけないじゃない。男なんて皆、サルよ。男なんて女にとって百害あって一利なしなのだから、絶滅すればいいのよ」
「まあ、そう言わずにな、赤槻。一応、女にも性欲というものがあるんだから、そればかりではないだろ」
「高校教師が生徒に性欲って不適切ですよ」
「とはいえなあ、きみにもあるだろう。こう、自分の欲が抑えきれなくなる瞬間が」
二部崎先生がそんな際どい質問をすると、赤槻サンの様子がおかしくなる。
顔をプルプルと震わせて、首を何度も横に振り、「ないないない!」と叫び散らしている。
……何か二部崎先生の言葉に心当たりがあるのだろうか。ぼくはそのことが非常に気になった。
「比屋根はどうだい?」
赤槻サンはこれ以上深掘りできないと思ったのか、二部崎先生は次に、比屋根サンに話を振った。
「我はヘルケルベロス……うんにゃ、青山春海のことが好きじゃぞ」
「「「えっ……」」」
比屋根サンの爆弾発言に、ぼくたちは凍り付く。
さらっと、凄いこと言ってないか、この子?
比屋根サンは周りの反応を気にせず、更に続ける。
「勿論、レッドクリムゾン・赤槻暁美も、ブリュンダスト・笛吹風雪も、ミス二部崎も皆、好きじゃ。大事な我の配下じゃからな。わっはっは」
その発言に、ぼくたちはほっと肩をなでおろした。
多分、この子はピュアすぎて、言葉の意味を分かっていない。
「そういうことじゃなくてだな、比屋根。こう……異性として好きな人は居ないのか?」
「どういうことじゃ……?」
「えっとだなあ……手を繋ぎたいとか、抱き合いたいとか、その他諸々したいとか、そういうことを思う人は居るのかと聞いているんだ?」
「二部崎先生。ちょいちょい発言がエロいですよ。もしかしてまだ酔っているんですか?」
「いや、シラフだが」
「そっちの方が問題よ! 貴女は教師と言う自覚が欠如している!」
「うーむ……つまりは生涯契約を交わしたい存在が居るかどうか、ということか?」
「そう! それ! で、どうなんだ、比屋根」
「おらぬ。なぜならば、我は唯一無二の存在、万年の魔女・ヒヨテリウスじゃからな! あっはっは!」
立ち上がり、小さな体を目いっぱい使い、比屋根サンは胸を張っている。
二部崎先生、この子は多分、そういう話できない……。
「そうか、じゃあ、最後に笛吹、どうだ?」
「ぼくは…………いない……ですね」
「そっか、残念だなー。全員好きな人はナシか。まあ、高校には大量に男が居るからな。そのうち見つけられるはずさ」
「そう……ですね」
湯の温もりがほどなくして全身に伝わった。




