第61話 コスパを考えると人類は牛丼チェーンに辿り着く
瓦礫撤去ボランティアを終えた俺と赤槻は、先に体育館に戻り、清掃ボランティアに行っている笛吹、比屋根の帰りを待っていた。
「お〜い、比屋根〜、笛吹〜、こっちこっち」
彼女たちの姿が見えたので、手を振ってみた。
すると、こちらに気付いた二人が近づいてくる。
「おまたせ」
「どうだった?」
「我の手にかかれば一瞬よ」
「ほんとかよ。なんか心配だなあ……」
「大丈夫だぞ、部長。私が見る限りでは、コイツらはちゃんとやっていた」
「先生が言うなら安心しました」
そうこうしていると、ミーティングを終えた久中さんが近づいてきた。
「全員揃っているみたいね。皆、良くやってくれたわ。ボランティアスタッフを代表して、ありがとう。次は、炊き出しの手伝いをやってもらうわね」
瓦礫撤去&清掃ボランティアはこれで終わりなので、一旦更衣室に戻り、作業着から普段着に戻る。
少し待っていると女性陣が到着する。
こういう時、男一人だと孤独感あるな。
……しかし比屋根は相変わらずの魔女コスチューム。
個性を尊重する姿勢いいと思うぞ、うん。
体育館を後にした俺たちは、久中さんのワンボックスカーに再び乗り込む。
たどり着いた先は海辺にある大きな広場だ。
潮風が吹き付け心地よさを感じるも、災害の惨禍が残り、なんとも言えない趣きを醸し出している。
そこに場違いな巨大なトラックが止まっていた。誰もが知る有名牛丼チェーン『もりもり亭』のトラックだ。
聞くところによると、施策の一つで、被災地に向けて牛丼を無料で提供しているらしい。
利益度外視で困っている人を助ける。素晴らしい心意気だ。俺たちも見習いたい。
ボランティアスタッフがずらりと整列する中、トラックから牛丼チェーン店のスタッフが現れた。
炊き出しは一か所にすると殺到する恐れがあるということで、何か所かに分けることになった。
俺、赤槻、笛吹、比屋根、二部崎先生、久中さんは、同じグループに固まった。
そして俺たちのグループを担当する、牛丼チェーンのスタッフが説明を始める。
「本日は、お集まり頂きありがとうございます。牛丼チェーン店『もりもり亭』の営業担当・大松と申します。ところで皆さんは、『もりもり亭』を利用したことはありますか?」
『もりもり亭』にはよくお世話になっている。
美味しいし、何よりリーズナブルなんだよなあ。万年金欠の高校生にはありがたい。
だからこそ、こういう形でいつもお世話になっている『もりもり亭』の役に立てるのは嬉しい。
「はーい」と意気揚々と手を上げたら、なんと俺意外、全員が手を上げた。
お前らもかよ……⁉
リップサービスなんてする面々ではないし、どうやらガチで行っているらしい。
男子高校生ならまだしも女子高生が行くような店じゃねえぞ。
すると特にヘビーユーザーなのか、笛吹が目を輝かせて語りだした。
「勿論ですとも! 『もりもり亭』には大変お世話になっておりまして! 何と言ったって、一人で来ても全く浮かない! 一人で来たら白い目で見られるリア充の巣窟であるファミレスやファストフード店など万死に値する! それに比べて牛丼チェーンはなんて居心地が良いのやら! ぼっち大歓迎! むしろグループで来たリア充に、こちら側から白い目を向けることが出来る! すぐに食事が提供されて、すぐに食べて帰れる点もグッド! 天国とはここだったんですね! 今後とも、ごひいきにお願いします」
どこでスイッチ入っているんだよ、こいつ。
「ははは……。いつもご利用いただき、ありがとうございます……」
ほら、大松さんが困っているよ。
「笛吹、人を困らせるな」
「す、すまん……。つい、大好きな『もりもり亭』の前で正気を失ってしまった……」
そんな笛吹にやや困惑した様子の『もりもり亭』の社員さん。
すみません。これが《アオハル部》なんです……。
『もりもり亭』の社員さんはコホンと咳払いして、心をリセットさせながら話を始める。
「皆さんにはこれから、被災者の方に牛丼を配ってもらいます。牛丼は既に容器に封入されていますので、容器ごと渡してもらえれば大丈夫です。多くの人が来ることが予想されますので、順番に整列してもらうように誘導をお願いします。牛丼は一人につき一つなので、そこは徹底するようにお願いします」
「分かりました。では、整列する係と、配膳する係で分かれた方が良いですかね?」
「それでお願いします。私は配膳をさせていただきます」
外行きの丁寧な口調で、大松さんに応対したのは久中さんだ。
ボランティアリーダーの名は伊達ではないらしい。
「うし、じゃあ《アオハル部》諸君、グッパーで、また二、二で分かれてくれ。私と久中は見守り係ということで」
座席といい、さっきのボランティア活動といい、今日は二、二で分かれることが多いな。
「それじゃあ、グッとパーで分かれましょ!」
結果、俺と比屋根、赤槻と笛吹グループに分かれた。
ついに赤槻と離れ離れ。それに少し寂しさを覚えた自分がいた。
「それでどっちやる?」
俺の質問に、笛吹が鼻息荒く答えた。
「勿論、配膳係だ」
……おい、配膳、だからな?
……食べるのはお前じゃなくて、被災者の方だからな?
一抹の不安を覚えつつ、そんなこんなで炊き出しが始まった。




