第52話 旅行と合宿は紙一重
「ちなみに、二部崎先生も同行されるのですか?」
赤槻が質問する。確かに、それは気になる話だ。
……先生無しでこいつらの面倒見るのは厳しそうだからな。
「部活動の一環だからな、無論、私も行くぞ」
それを聞いて、ほっと肩をなでおろす。
「良かったあ」
「ん? なんだ、青山? そんなに私が居てくれて嬉しいのか?」
「当たり前じゃないっすか。先生が居るのと居ないとは、安心感が違いますよ」
「面と向かって言われると照れるではないか」
そこへ、おずおずと言った様子で、「質問があるのですが……」と笛吹が挙手した。
「ん? なんだ笛吹」
「朝、11時集合ですよね? 〇×県って結構遠いイメージがあるんですけど、何時に集合するでしょうか?」
確かに、それも気になる話だ。
「詳しいスケジュールは後日送るとして……、電車を乗り継いで4時間くらいだから、概算で6時駅集合とかかな」
それを聞いた笛吹は顔面蒼白になる。
「6時……? つまり、5時起き……? そんな時間に人類は果たして起きれるの……?」
朝早くから働く人たちに謝れ!
とはいえ、俺も朝は苦手な方なので、笛吹の気持ちも分からなくもない。
「まあまあ、小難しい話は一先ず置いておいて、楽しい話しようぜ。二日目の自由行動! 皆の者、何する⁉」
俺は興奮気味に皆に尋ねた。
二日目は俺たちに配慮してくれて、完全自由行動!
自由行動、なんて良い響きなのだろう!
「依頼を終えたのだから、さっさと帰ればいいんじゃないかしら」
「賛成だね。オンライン大会の調整をしなければいけない。一日たりとも油断はできない」
「魔女たる者、任務が終われば颯爽と姿を消す。痕跡を残してはならない」
冷めすぎだろ、こいつら……。冷やし中華もびっくりの冷め方だよ。
「いやいやいや、せっかく旅行に来たんだぞ! 遊ぼうぜ! 青春しようぜ!」
「旅行気分で来られたら向こうに迷惑じゃないのかしら? あくまで私たちはボランティア活動をしにいくのよ」
赤槻の正論メガトンパンチ炸裂。
「勿論一日目はボランティアとして行くよ。でも、ボランティアは一日目で終わりだ。二日目は旅行と言っても差し支えないだろ」
「いや、その理論で行くと、旅行するためにボランティアに行っているようなもんじゃない。二日目は旅行ではなくて、何もない日よ。何もないからとっとと帰ればいいんじゃない」
「海だぞ! 海! 海、入りたくないんか、お前ら!」
「本性表したわね! どうせ私たちの水着が見たいってことでしょ? 見え見えなのよ、このヘンタイ!」
「ふぐっ! 否定は……できない!」
「ほら、見なさい! やっぱりなしよ、なし!」
「待て、それだけじゃない! 俺はこの合宿が楽しみで、色々と調べたんだ! この地域は海鮮料理が絶品らしいんだ! それに水族館があって、遊覧船にも乗れるらしいぞ! ほら! 被災地にお金を落とすのも、ボランティアの一つだろ!」
「まあ……それは、一理あるわね」
赤槻に言い争いで勝利したぞ。
なんか、達成感エグしゅぎい。
「笛吹と比屋根も遊ぶだろ、二日目?」
「まあ、ゲームは旅行中でも出来るしね。構わないよ」
「ヘルケルベロス! お土産屋はあるのか? どうだ?」
「あるだろ、当然」
「よしっ、戦利品を頂こう!」
お土産屋があると聞いて、比屋根は露骨にテンションが上がっている。
こいつ絶対、修学旅行のお土産屋で、木刀とか手裏剣とか買うタイプだろ。
……俺もだけど。
「いやー、こうして話し合っていると、がぜん楽しみになってきたな、合宿!」
俺が問いかけると、珍しくメンバーはうんうんと頷いていくれた。
「うむ」
「確かにね」
「まあ、悪くないんじゃない」
「ということで、詳しいことは分かり次第伝えるから、当日はよろしく頼むよ」
二部崎先生が最後にそう伝える。
こうして《アオハル救助隊》による初の出張依頼、災害ボランティア活動が幕を開ける。
この活動で果たして俺たちは成長できるのだろうか?




