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第43話  イジメを助けてもらったら、その人は神様に見える

 ジャガイモを運搬している最中、遭遇したのは三人組の男性生徒だ。

 いずれも見知った一組の生徒で、特に俺に対して強い言葉を浴びせてくる生徒だ。彼らは部活終わりなのか、いずれもユニフォームを身に纏っていた。


「イキリ陰キャが何してんの、こんなところで?」

「陰キャちゃんはもうお家に帰る時間でちゅよ」

「あれ、こいつ、女といる? もしかしてまた勘違いして告白するのかなあ? お前みたいなキモい陰キャが彼女出来るわけねえだろ。思い上がるなよ、バーカ」

「うぇ。よく見たら『赤の暴姫』もいるじゃん」

「嫌われ者同士、お似合いカップルじゃね? ぎゃはは」


 容赦なく浴びせられる罵詈雑言。


 いつも以上に胸が苦しく、痛かった。

 俺一人で言われる分には構わない。

 だが、今は《アオハル部》の仲間や生徒会の先輩方と一緒だ。


 その人たちに、見られるのが何より辛い。

 イジメを受けているという事実を知られるのが、何よりしんどい。


「貴公らは我を封印した神の刺客じゃな! 処されたくなければ、ここから立ち去れ!」


 比屋根がステッキ……の代わりにスコップをぶん回し、奴らに敵意を示している。

 比屋根……遠回しに俺を助けてくれてるんだよな。ありがとな。


「邪魔よ」


 続く赤槻も冷酷な目を向けて、敵意を示す。

 赤槻も遠回しに俺を庇ってくれているんだよな。ありがとな。 


「そ、そうだと……も。いや、何でもありません」


 笛吹も助けようとするも、怯んでしまう。

 笛吹、その気持ちだけでも嬉しいよ。ありがとな。


 そうだ。俺はあの時とは違う。


 仲間がいる。

 だから怖くない。


「何、お前ら? ガチでキモいんだけど」

「キモ集団だ! キモ集団!」

「つーか、何その恰好?」

「じじばばみてえなだっせえ格好」

「ここ高校なんだけど? おじいちゃんおばあちゃんは老人ホームに入りましょうね」

「おいみろよ、ジャガイモ入っているぜ」

「ジャガイモってやばっ! 農業してるじゃん!」

「お前らみたいなキモ集団は農家みたいな底辺職がお似合いだからな!」


 矢継ぎ早に繰り出される暴言の数々。胸糞が悪い。

 それに、俺だけでなく皆に標的が広がってしまったから、罪悪感もこみあげてくる。


「さっきから、何だね、君たちは?」


 そこへ、鶴の一声ならぬ、神の一声がかかった。


 高橋先輩がいつもの柔和な表情とは一変して、般若のような形相で奴らを睨みつけていた。


「(誰だ、あいつ?)」

「(おい。もしかして、あの人って、生徒会副会長の高橋って二年じゃねえか?)」

「(うわ、マジじゃん。なんで、そんな人がイキリ陰キャと一緒なんだよ)」

「(意味分からん。とりあえず怒っているっぽいし、適当にやり過ごそう)」


 全部、聞こえているのですが、それは。


「あれ、生徒会副会長さんじゃないっすか。何か用っすか?」

「青山君に対して、色々言っていたみたいだが」


 口では丁寧な対応をしているが、目が笑っていない。

 その圧力で今にも圧し潰せそうだ。


「なに、マジになってるんすか。イジリっすよ。イジリ」

「イジリの範疇を超えていると思うが?」

「副会長は枯葉咲って女子生徒知ってます? その子、満場一致で学年で一番可愛いんですけど、そんな子にこんなどうしようもない陰キャ男が告白したんすよ? ヤバくないっすか?」

「だからって人をいじめていい理由なんてならない。良いか、君たち。イジメかどうかの定義は加害者ではなく被害者が決めることだ」

「堅いっすね~。これだから生徒会は」

「きみたちはその生徒会の庇護下に入っていることをお忘れなく。私はな、いじめという言葉が一番嫌いなのだ。私が生徒会会長になった暁には、いじめを根絶する」

「いやいや、そもそも、この男と関わっちゃいけないっすよ。悪い奴なんで」

「悪い奴……? きみたちは青山君に何か被害を被ったのか?」

「それは……ないっすけど」

「私から見ればきみたちの方がよっぽど悪く見えるがな。青山君に対する罵詈雑言、それだけではない、高齢者や農業従事者に対する不躾な発言、恥を知るがいい!」

「だるっ。何ムキになっるんすか?」

「対し、青山君たちは私たち困っている時に手を差し伸べてくれた恩人だ。生徒会は青山君たち《アオハル部》の味方であると、ここで宣言しよう。即ち、青山君たち《アオハル部》を侮辱するということは、生徒会が敵に回るということを覚えておけ。最後通牒だ。青山君に対するいじめまがいなことは即刻辞めろ」

「ちっ、めんどくせえ。行こうぜ」

「ああ、大丈夫なん、これ」

「知らね」


 三人組は尻尾を巻いて逃げて行った。


 清々しい気持ちと、高橋先輩に対する感謝の気持ちでいっぱいだ。


「先輩、ありがとうございます。こんな俺に対して、ここまで助けてくれるなんて。なんてお礼を申し上げていいやら」

「そう固くなるな。生徒を助けるのが生徒会の役目だからな。……うん、泣いているのか?」


 高橋先輩の指摘通り、俺の瞳からほんのりと涙が零れ落ちる。


「ありがとう……ございます。こんなに良くしてくれたの……生まれて初めてで」


 言葉が詰まる俺に対して、高橋先輩は更にありがたい言葉をかけてくれた。


「こうして味方が増えたのは、自分自身の頑張りだろう。きみががむしゃらに行動したからこそ、周りがついたきた。もし、また何か言われたら私まで言ってくれ。厳正に対処する。皆も、何かあったらすぐに私や生徒会に言うんだぞ」


 考えうる中で、史上最高の味方が出来た。


 俺の青春は、着実に上向いている。


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