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第28話 夕方のテレビは食レポが一番面白い

 大盛り上がりだった『NGワード』ゲームを終えた、俺たちは部活終了までの残り時間をまったりと過ごした。

 こういう何でもない時間も青春だよね。


 赤槻はいつもの窓際スペースで勉強している。本当に真面目だよなあ。俺なんて、勉強する気、起きないよ。

 笛吹は畳に寝そべりながら携帯ゲームに身を興じていた。あれだけみっちりゲームやったのに、まだゲームするのかよ。


「笛吹も元気だよな~。あれだけゲームやったのに」

「皆とやるゲームと一人でやるゲームは別腹だよ」

「主食とデザートみたいに言うな」


 笛吹はまるで自分の部屋に居る時みたいに、膝を組み仰向けになりながら、だらしない態勢でゲームを興じている。

 笛吹が着ているシャツの裾がめくられ、そこから息を呑むような白い肌が露出し、へそ部分も露になってしまっている。


 エロすぎるぜ……。

 しかも本人が気にも留めない様子だから、殺傷能力が高い。

 その光景を目に焼き付けていると、


「気づいているぞ、青山クン……!」

「す、すまん!」


 ゲームに釘付けだったじゃないか。

 笛吹は目が三つあるのかよ!


「まあ、ぼくは構わないが。減るものではないしね」

「いいのかよ!」


「おっ、なんかやらかしたか?」


 するとコーヒー片手に、部室に標準装備されている大型テレビを眺めていた二部崎先生が話に入ってくる。


「なんか、笛吹の身体、最近流行りの見放題らしいっす」

「笛吹、それでいいのか、きみは? 嫁入り前の大切な身体だぜ」

「嫁になんて興味ないので」

「そうか。嫁か……嫁……なりてえなあ……ちくしょおおおおおお!」

「先生、どうして自分で話振っといて、悶絶しているんですか?」

「そうだったな。取り乱して、すまん」

「というか先生、くつろぎすぎでは。コーヒー飲みながらテレビ見てるって、もう家じゃないっすか」

「むしろ、きみたちがいるから家より心地よい」

「もうダメそうですね、この人」

「人をダメにする部活だ」

「人聞きの悪いこと言わないでくださいよ。というか、先生何見てるんですか?」

「食レポ系のバラエティー番組だ。この番組、美味そうな店が紹介されるんだよなあ。この番組で紹介された店に休日行くこともあるくらいだぜ」

「一人で行くんですか?」

「……悪ぃかよ」

「休日一人で、バラエティー番組で見た飲食店に足を運ぶ独身女性教師。うん、そういう人生も良いと思います」

「おい、今、憐みの目で見たな」

「ごめんなさい」


 そんな軽妙なトークを繰り広げながら、視線はテレビ画面に吸い込まれていく。  

 最近スマホで動画ばっかり見ていたから、テレビ番組をこうやってしっかり見るのは久しぶりかもしれない。


 紹介されたのは昔ながらの街中華のお店だ。

 レトロな店構えからは想像もつかない綺麗な店内。

 そこから繰り出されたのは、脂がスープ一面に大量に乗っかった、余りに濃厚そうな醤油とんこつラーメンだった。

 麵は太麺で、極厚なチャーシューと、メンマがめちゃくちゃ美味しそうだ。


 ……ヤバい。腹が減ってきた。

 夕飯直前の黄昏時。

 こんな時間にこんなもの見たらヤバいって。


 食べ物の誘惑には勝てないのか、いつのまにか笛吹がゲームをやめて画面に釘付けになっているし、何なら赤槻も勉強をやめ、いつの間にかこっちにやってきている。

 やっぱり食は偉大だ。


「……絶対、休みの日、いこ」


 隣で決意を胸にしている者が一人。


「俺もおともします!」

「そうかそうか、一緒に来てくれるのか。独身の恋人無しの寂しさを紛らわしてくれてありがとう」

「お前らも行くよな?」

「ゲームがひと段落ついたときに食べる深夜のラーメンは案外好きでね。深夜ならお供しよう」

「なぜ、深夜限定⁉ いやー、しかし、部活仲間とラーメンなんて青春ポイント高くね? 赤槻も行くよな?」

「その青春で何でも強要するのやめてくれるかしら? 青春ハラスメントよ」

「新しいハラスメント生まれちゃったよ! 多分、今までのハラスメントの中で一番平和だろ、それ」

「特別に行ってあげてもいいわよ」

「なんだよそれ……。素直で可愛いじゃねえか」

「はっ、キモっ! いきなり可愛いとか!」

「落ち着けって、赤槻。コーヒーでも飲むか? 君は甘いのが好き? 苦いのが好き?」

「ややこしいので二部崎先生は入ってこないでください。あと、甘いのが好きです」


 最後は収拾が付かなくなってしまったが、楽しい楽しい《アオハル部》の今日の活動は終わり。


 ……これ、ちゃんと部活になってる?


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