表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/121

第19話 運動神経良い奴はたいていイケメンなので普通に理不尽【赤槻暁美視点】

「クソ野郎がっ!」


 開星明生という男はうちのクラスの、いや学年のスクールカーストの頂点だ。

 顔が良くスタイルも良く、コミュ力も抜群。

 テニス部では早くも先輩を倒しエースに君臨したほどの抜群の運動神経。おまけに頭も良い。

 ぼくみたいなゲームしか取り柄が無いクソ雑魚陰キャとは正反対の存在。

 異性からはとんでもなくモテて、既に学年一の美少女とされている枯葉咲さんと恋人関係になり、それでは飽き足らず他にもいろいろな浮名が流れている。

 いうなれば、この学校という国の王様。誰も逆らえない。


 そんなキングに牙をむいた、彼女の姿はぼくにとって眩しすぎた。


「今、なんて言った? なんて言ったって聞いてんだよ!」


 キングの恫喝。

 しかし彼女は全く怯む様子は無かった。


「何度でも言ってやるわよ。クソ野郎が!」

「いやさ、君、誰に言ってるのよ。俺だぜ。見てよ、この顔。普通に芸能人レベルでしょ? きみみたいな性格終わっている女は、これから先、一生彼氏できないよ。この超絶イケメンのハイスペック男の愛人になれるんだから、ありがたく思わないと」

「……聞くに堪えない演説は終わったのかしら。それと、さっきから口、臭いのよ、貴方」

「あー、ちょっと痛い目見ないと分からないタイプか~。女は男に勝てないんだからさぁ!」


 互いの肩を掴み合い、取っ組み合いになる。

 だが、決着は唐突に訪れた。

 彼女は鋭く開星の足を払うと、態勢を崩した開星に素早く馬乗りをする。

 この態勢になれば、後は彼女の思うがままだ。

 開星は驚きすぎたのか、何も声を発せないまま、目を丸くしている。少しスッキリした。


 どうするのかと思ったら、彼女は想定外な行動をとった。

 彼女はどういうわけか上履きを脱ぐ。上履きで叩くと思いきや、更に靴下も脱ぎ始める。

 そして、その靴下を思い切り、開星の鼻に押し付けた。


「くっせええええ! なんだこりゃあああ!」


 彼の慟哭が廊下内に響いた。


 そのまま、開星はこちらに尻を向けて逃走した。

 その様子に、溜飲が下がる。


 ★


 彼女は事細かに、当時の状況を説明する。

 彼女の口から語られたそれは、紛れもない事実だ。

 どうやら、本当に彼女は見ていたらしい。

 面倒くさいことになってきた。


「どうやら本当に見ていたようね。で、それが何かしら? もう終わったことなのだからどうでもいいでしょう」


 彼女は必死に首を横に振る。どうして、何の繋がりもないのにこんなにも必死になのかしら。


「君は殴っていないじゃないか!」


 こんなに大きな声を出せたのね。


「厳密にはそうかもしれない。けれど、足払いして転ばせて、馬乗りにして、くっさいもの押し付けたのだから、同じようなことよ」


 私の主張にも、彼女は全く引くそぶりを見せない。


「百歩譲って、そうだとしよう。でも、君はぼくを助けたという大義名分があるではないか。だから、君が否定して、先生が調査すれば、こんな処分を受けることなんてなかった。なのに……どうして……君は」

「面倒くさかったのよ、単純に。私が否定したら、問題がややこしくなって、煩わしかったから。殴ったって言うのが、一番丸く収める方法だった」

「本当に君はそれでいいのかい? クラスでは開星が『ヤバい奴に絡まれた可哀そうな被害者』って扱いになっていて、君が大悪人になっているんだ。ぼくが声を出して否定しなくてはいけないのに……。ごめんよ、ぼくは君みたいな勇気を持てない。臆病者で卑怯なただの雑魚陰キャだから……」

「そんなこと思わなくていいわ。この選択は私が望んだことなの。貴女は何にも関係がない。私は貴女のことをこれっぽっちも恨んでいないし、今度恨みもしない。だから貴女はこれからも私のことなんて忘れて、堂々と生きればいいの。

 話は終わったかしら。この件はこれできれいさっぱり終わりにしましょう。あの件は無かった、良いかしら?」

「……分かった。……君が望むなら、これ以上、ぼくはもう君に干渉しない」


 話はこれで終わりだ。


 なのに……。

 どうして、私はあんなことを言ったのだろう……。


「《アオハル部》。これが私の所属している部活よ。退屈極まりない部活だけれど、興味があったら来てみれば? 詳細は二部崎先生に聞いて」


 まるで、あのバカのセリフみたい。

 あいつの病が移ったのだろうか?


 彼女はキョトンと目を丸くしている。

 それもそうだ。突っぱねた私が、誘い水を向けているのだから。


「《アオハル部》……? 君が所属している部活かい?」

「……そうよ」

「ところで二部崎先生って誰だい?」

「四組の担任よ。担当科目は国語」

「……知らない人に声かけるの恥ずかしいよぉ」


 やっぱり誘わなければ良かったかもしれない。


ここまでお読みくださり、本当にありがとうございます。

次話から新章突入です。

いよいよ《アオハル部》に新入部員が入ってくるそうですよ……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ