第18話 神社って気持ち空気が澄んでいる気がする 【赤槻暁美視点】
私の名前は赤槻暁美。
人と関わることを辞め、友情、恋愛、青春などという言葉を最も嫌う孤高の存在。
……で、あるはずなのに。
私は今、人間たちに囲まれ、祝福を受けている。
……なぜ、こんなことになっている?
私の思い描いていた高校生活と大きくかけ離れている。もっと、ストイックに、スマートに、クレバーに……そんな青写真を描いていたはずなのに、どうして私自身が一番忌み嫌うような空間に身を置いているのだ。
それもこれも、《アオハル部》なる、奇怪な部活に入ったからだ。
あんな部活に入らなければ、こんなに狂いだしていないはずだ。
そして、そこに必ず居るのは、あの男。
青山春海とかいう愚夫。
あいつといると、どうも私の信念が捻じ曲がってしまう。
それだけでも嫌なのに、最も腹立たしいのが、なぜか不快な気持ちにならないことだ。
それに、もしかしたら、小学生の時、キャッチボールを一緒にしていた相手は……。
いや、それはない。
あんな奴が、私の…………。
「赤槻、大活躍だったじゃないか!」
ぽーん、と無遠慮に肩を叩かれた。
勿論、こんなデリカシーのないことをするのは、一人しかいない。
「ねえ。気やすく触らないでくれる? セクハラで訴えるわよ」
「労っただけなのにセクハラ認定って世知辛すぎるるだろ……」
「というか、何で当たり前のように一緒に帰ろうとしているの? 貴方もしやストーカー?」
「帰る方向が一緒なんだから仕方ないだろ!」
「そういって、どこに連れて行く気? あー、怖い、怖い」
「いや、一瞬でそういう発想に至っているあたり、お前の方が怖い気がするんだが……」
「うるさいわね! というか、私の隣いつまで歩かないで貰えるかしら。不愉快」
「わーた。わーた。んじゃ、先帰るわ。また明日な」
鬱陶しいハエを追い払い、私はようやく一人になる。
やはり、一人はいい。誰の目も気にしなくていいし、何をしてもいい。
自由奔放。天上天下唯我独尊。
などと、悦に入っていると、後ろから微かに声が聞こえるのを感じ取った。
「……ねえ……あの」
細雪のような今にも消え入りそうな声。
だが、その声は明らかにこちらに向けたものだった。
「貴女は……」
振り返ると、そこには見覚えのある女子が立っていた。
「……どうも」
それは、謹慎を受けたきっかけとなった例のトラブルで、私が助けた女子生徒だった。
「どうしてここに?」
「偶然、学校の前を通りかかったら、君が野球をやっているのを目撃したんだ。それで、つい、ずっと君のことを見ていたんだ」
「そうなのね」
「驚いたよ。まさか野球部に入っていたなんて」
「入っていないわよ。ただ、助っ人で行っただけよ」
「本当かい? 大活躍だったじゃないか」
「そこまで見ていたのね……」
「ごめん……本当はすぐ通り過ぎようとしたのだけれど、君のプレーに目を奪われてしまって」
「それで……ここまでついてきたのね」
「ごめん……本当はすぐに声をかけようと思っていたのだけど、君が知らない人と歩いていて。ぼく、人見知りだから、なかなか声をかけられなかったんだ」
「ふん、あんな奴のこと気にしなくていいのに」
「随分親し気だったね。もしかして、彼氏かなんかかい?」
「はぁ! どこがよ! 貴女の目、節穴?」
「……すまない。……ほら、ぼくと違って、君ってモテそうだからさ、彼氏の一人くらいいると思ったんだよ」
「それこそ節穴よ。私なんかより、貴女の方がずっとモテそうだけれど」
「そんなことない! だって、君はぼくを助けてくれたじゃないか! 例えるのなら、ボス戦でゲームオーバーになる寸前で助けてくれるキャラ的な」
「ボス戦? 貴女が何を言っているかよく分からないわ」
「とにかく話を聞いてほしいんだ」
「分かったわ」
断ろうとしたが、彼女が余りにも真剣だったので、了承することに。
ちょうど神社に通りかかったので、そこにあったベンチで腰かける。
目を及ばせオドオドしているので、私から話を振ることに。どうして、私はこんなことをしているのだろうか。ガラじゃないのに。
「それで、話って何なのよ」
「風の噂で聞いてしまったんだ。君があの一件で謹慎していたって。その理由も。君が開星君を殴ったから。でも、それは違う。……実はぼく、見てたんだ。……陰からコッソリ。一部始終を。そして、君は彼を“殴ってなんかいない”」
そうして彼女は、当時のことを仔細に語り始めた。




