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第14話 関西人は全てお笑いに繋げる

「改めまして、二年の女子野球部部長、関西出身、大島翔天や飛翔の翔に天日干しの天で『かける』。面白い名前やろ? よろしくな」


 大島先輩は関西出身らしく、関西弁でユニークな自己紹介をする


「《アオハル救助隊》の青山春海です」

「いやー、すまんなー、いきなり見苦しゅうとこ見せてしもうて」

「いえいえ、むしろご褒美と……いてっ!」


 隣に座る赤槻に、いきなり耳を引っ張られた。

 どうやら、セクハラ的な発言は厳正な処罰が下るらしい。


 そういうことで、俺と赤槻は、改めて、ユニフォームに着替え終わった依頼主と対面する。

 やはり、お騒がせな女子生徒こそが大島翔天さんであり、今回の依頼主らしい。


 一学年上とは思えない、くりくりとした目鼻立ちの童顔。茶髪のショートカットに、日に焼けた健康的な褐色の肌は、典型的な運動系女子の風貌だ。


「なあ、ところできみ、たこ焼きに青海苔入れる派?」


 大島先輩は唐突によく分からない質問をしてきた。

 何この質問。新手の試験?


「入れる派です」


 わけもわからず、正直に答える。


「おっしゃー、なかまやー。たこ焼きの味は青海苔でしまるんや。全く、こっち来てから、これが分からん人、多いんやな~」


 両手を交互に上げてはしゃぐ大島先輩。

 どうやら、ただの質問だったらしい。

 なんだか掴みどころがない人だなあ。


「しっかし、《アオハル救助隊》ちゅうのが、男子である可能性を失念してもうて。堪忍堪忍~」

「は、はあ……」


 なるほど。だから、下着姿であるにも関わらず、招き入れてしまったわけか~。


 ……って、納得できるかい!

 地味に、女子の下着姿見たの初めてなんだけど。まさか、こんなところで下着姿女子童貞喪失するなんて。


 閑話休題。

 肝心の依頼について話さなければ。


「それで依頼内容ですが、女性野球部の助っ人ってことで間違いないですか?」

「せやで。日時は今週末の土曜日、朝10時から! 練習試合や!」

「だいぶ、急っすね。というか、メンバー揃っていないのに、練習試合組んじゃったんっすか?」

「せやで! ウチ、ノリとパッションで生きてるからな! いやー、しかし助かったで、ほんまに、これで二人確保や!」


 陽キャすぎて眩しくて見えなくなりそうだな、この先輩。

 とはいえ、俺たちのことを全く知らない二年生だけあって、向こうに変な先入観が無いから自然と話が弾む。


 うん、待てよ?

 俺はここで、初歩的なことに気づいてしまった。


「そもそもなんですけど……俺って見ての通り、男じゃないですか? それでここ“女子”野球部ですよね? 助っ人、無理じゃないですか?」

「あ……」


 「いっけねー」って顔をしている大島先輩。


 今の今まで気づかなかったらしい。本当に大丈夫か、この先輩……?

 とはいっても、性別の壁は越えられない。

 どうやら、この依頼は赤槻一人でやらないといけないらしい。


「ということで、一人で頑張ってくれ、赤槻。俺は応援しているぜ!」

 

 俺はサムズアップしてエールを送るが、赤槻はたいそう嫌な顔をしている。


「はああああ⁉ なんで私が一人でやらないといけないのよ!」

「赤槻さあ、そんなに俺と一緒がいいのか?」

「はあ、バカじゃないの! 誰が貴方みたいな単細胞性獣と一緒に居たいと思うのよ!」

「単細胞性獣ってなんだかかっこいいな……なんか秘密兵器みたい……」

「最大級の侮辱よ」


 俺と赤槻がいつもみたく不毛な言い争いをしていると、大島先輩が微笑ましそうにこちらを見ていた。


「へー、仲いいんやな。もしかして、二人付き合ってるんちゃう?」


「「誰がこんな奴と!」」


 いきなり何を言い出すんだ、この先輩。どこをどう見れば、そういう発想に至るんだよ。


「すまんなあ。人のことずけずけ聞いてまうんは、関西人の悪い癖や。許してや」


 赤槻は俺と付き合っていると勘違いされ、ひどく気分を害したのか、ふんぞり返っている。

 一応、目の前の人、お前の先輩なのだけれど……。


「そもそも、私、野球なんてこれっぽっちもやったことないのだけれど」

「そこらへんは心配ご無用や! 初心者大歓迎! 優しい先輩が優しく丁寧に教えるさかいな!」


アルバイトの求人にありそうなうたい文句。そして、そういう求人に限ってブラックなんだよな。……アルバイトやったことないから知らんけど。


「エラーしても文句言わないでよ? 文句言ったら、ボコボコにするから」


 赤槻は大島先輩に啖呵を切った。


 ……いや、だから先輩だって。

 しかし、相変わらず怖いなあ、赤槻は。先輩をもボコボコ(靴下匂い嗅がせ)にする気かよ。


「おおきに! ……えーと、何さんやっけ?」

「赤槻、赤槻暁美よ」

「よろしくな、赤槻ちゃん!」


 大島先輩は赤槻の両手を握り、子どもみたいにぶんぶんと振る。

 赤槻は終始鬱陶しそうな表情をしていた。


「しかし困ったな~。あと一人なんやけどなあ~。でも、また一から募集するのは時間ないし……あっ、ウチ良いこと思いついた!」


 大島先輩は何かを思いついたように、拳の腹を手のひらにぽーんと叩いた。この上なく嫌な予感がするのは気のせいだろうか。


「青山くんが女装すればええんや! ヘルメット被って素顔見えないからへーきへーき! おもろそうや! おもろそう!」


「えええええええええええええええ⁉⁉」


 何を言っているんだ、この人。本当に。

 関西人って本当に笑いで生きているんだな……。


 ……え? ガチで女装するの?


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