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第13話 目安箱を使う人生を送りたかった

 翌朝。


 ここ最近、ずっと憂鬱だったが、新しい部活に入部したことで多少心は晴れやかになっていた。


「うわっ、イキリ陰キャ今日も来てるじゃん」

「よく、学校に来れるな~」

「キモい陰キャが学年一の美少女に告白するとか普通に犯罪だからな!」


 が、心無い罵声を浴びせられて、現実に引き戻される。


 ……はあ、せっかく楽しくなってきたのになあ。やっぱり、俺に青春を送ることって許されていないのかなあ。


 俺は自分の席につく。

 席は通路側の一番前、一説によれば最悪な席とも言われている。これが出席番号1番の宿命である。

 クラスで移動するときは先頭だし、授業とかではたいてい最初に当てられるし、何も良いことが無い。

 だから高頻度で出席番号1番になる『あおやま』という苗字はあまり好きではない。何でいないんだ、『あおき』さん!


 そんな取るに足らないことを考えていると、クラスメイトが騒めき立っていた。


「うわ……来たぞ、『赤の暴姫』……」

「ひえっ、こわっ」

「一組の開星をボコしたという……」


 そんな周囲の戯言を我関せずといった具合に、颯爽と教室にやってきたのは俺の唯一の部活仲間、赤槻暁美だ。

 赤槻は肩で風を切るように威風堂々とした態度で歩き、席に着いた。


 ――俺の真後ろに。


 ん???


 えっ、俺の真後ろの席って赤槻だったの⁉⁉


 よくよく考えれば出席番号的に『あおあやま』の次って、確かに『あかつき』の可能性が高いじゃねえか!


 俺は後ろを振り向き、引きつった笑顔で挨拶する。


「お、おはよう……。あ、赤槻……」


 赤槻は暫く無言で睥睨していると、


「あー。思い出したわ。昨日の……何さんでしたっけ?」

「おい、昨日の今日で記憶を忘却するな! 青山だ、青山春海!」

「貴方、何で私の前の席に居るのよ。ストーカー?」

「違うわい! 俺の席、ここなんだよ!」

「そうなのね。自分の前の席にいる人なんて気にもしたことなかったわ」


 俺と赤槻が話していることで、クラスメイトが騒めき立っていた。


「おい、『イキリ陰キャ』と『赤の暴姫』が話しているぞ」

「嫌われ者同士、お似合いじゃね?」

「バカッ、聞こえるだろ!」


 ……丸聞こえだよ、ちくしょう。


とはいえ、言い返せない小心者なので、どうすることもできないのだが。

 同じく言われている赤槻の顔を見ると、当の本人はケロッとしている。


「おい、赤槻。気にならないのか、色々言われているけど」


 赤槻はいとも簡単に言ってのけた。


「ねえ、逆に聞くけど、貴方は雑音を気にするのかしら?」


 周囲の声を雑音と形容し一蹴したのだ。


 人間性には多々問題がある人だが、正直赤槻のマインドは尊敬せざるを得ない。

 その証拠に、俺はこの言葉でだいぶ楽になった。


 ☆


 放課後。


 ずっと楽しみにしていたこの時間がやってきた。

 息苦しい学校生活の中で唯一のオアシスになりえるのが、放課後の部活動だ。


「目安箱に依頼、来てるかな?」

「昨日の今日で来ているわけないでしょ」


 二部崎先生のアイディアで生徒会が以前使っていた目安箱のお古を特別に譲り受け、それをお悩み相談の受け皿とした。

 だが十分に告知する時間が無かったので、確かに赤槻の言う通り、依頼が来ている可能性は極めて低いだろう。

 ダメ元で目安箱の中に手を突っ込むと、一枚のかみっぺらの感触が手に伝わってきた。

 それを勢いよく取り出すと、ノートの切れ端だと推測される紙が二つ折りにしてあった。


「来てた……」

「えっ、本当? 適当なこと言っているんじゃないでしょうね」


 思わず俺と赤槻は目を見合わせる。

 が、手に持っている紙きれは本物だ。


 一体、誰が……。

 とりあえず、二つ折りになっている紙きれを開いてみる。


《初めまして!(^^)! 二年の女子野球部部長、大島翔天やで(._.) 今度うちの野球部で対外試合をやることになったんやけど、部員足りなくてな(+_+) 困っていたら、一年の時に担任でお世話になった二部崎先生に目安箱のこと教えてもらって( ゜Д゜) 詳細は放課後、女子野球部まで。おおきに!(^^)!》


 うおー、なんていうか、すげえ、キラキラとした文章。


「なに、この文章? これが、人に物事を頼む時の文章なのかしら? 依頼者は頭が残念な方なのね」

「言いすぎ、言いすぎ! とにかく、俺たちの記念すべき初依頼だ! 喜ぼうぜ!」

「はーあ、単細胞生物……」

「どうもミジンコです。ってちゃうわい! しっかし、野球かー。そういえば、部室にグローブあったし、準備万端だな!」

「もう、好きにしたら」


 女子野球部の部室は、我が《アオハル部》の三つ隣にあった。

 中から楽しそうな喧噪が聞こえる。どうやら、部室に居るみたいだ。


「すみませーん、依頼預かった《アオハル救助隊》でーす」


 中を伺うために、三度ほど女子野球部の部室の扉を三度ほどノックする。


「よく、その恥ずかしい名前、堂々と言えるわね」


 割とオシャレなネーミングだと思うの、俺だけ?


「入ってええぞ! 部長の大島翔天や!」


 中から明朗快活な声が聞こえてくる。名は体を表すように文章は体を表すらしく、文章のイメージ通りの明るそうな人の声だ。


 ドアを開け、部室に入ると、ボールやバット、グローブ等が置いてあり、小綺麗に整頓してあるが、ここはれっきとした野球部なんだと実感する。


 ……そんなことよりも、刺激的な光景が目に広がっていた。


 目の前には、大島翔天さんと思しき、女子生徒が居るのだが……。


 なんと、その女子生徒が下着姿だった。真っ白のブラジャーとパンツが丸見えである。


「あ……。きやあああああ!!」


 俺に気づくと、女性生徒は悲鳴を上げた。


 ……いや、ちょっと待って。あなたが入っていいよ、って言ったんですよね?

動揺していると、背後からどす黒いオーラのようなものを感じた。


 その刹那、俺の鼻周りが何かの布に覆われた。


 布……? ……って、もしや‼


 気づいた時には手遅れだった。


 俺の鼻がへし折れるのではないか、というくらい、強烈な臭気に襲われた。


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