第11話 困っている人を助ける部活って創作だとたくさんあるけど現実だと無いよね
「よし、赤槻も入部してくれるみたいだし、早速、活動内容を考えてみようのコーナー」
「急に雑なバラエティのコーナーみたいなのが始まった⁉」
二部崎先生の提案に待ったをかけたのは赤槻だった。
「時期尚早じゃないですか? 私、まだこの部活のことそこまで知らないのですけど」
赤槻の質問に対し、二部崎先生は後頭部を掻きながら苦い表情を作り答えた。
「いやあ、ゆっくりいきたいのはやまやまなんだけどな。活動内容をさっさと決めないと、生徒会からツッコまれるからなあ」
「そんなものは適当に流せばいいでしょう? それに、前年度の活動内容をそのまま流用すればいいのでは?」
「赤槻の言う通りなんだけどな、せっかくだから自分たちで決めたくはないか? 今の《アオハル部》はきみたちのものだからな」
赤槻の言う通り前年のものをそのまま流用すれば楽なのは楽なのだが、確かに先生の言う通り自分たちで活動内容を考えと自分たちの部活みたいになって、なんか良い気がする。
そして何より青春っぽい!
「よーし! 考えようぜ、赤槻!」
「貴方、本当に単純ね。この単細胞生物」
「凄いディス貰った気がするんだが……。単細胞生物って、あれだろ? アメーバみたいなちっこいやつだろ? 俺バカだけど、それくらいは分かるぞ」
「あら、それくらいは分かっていたのね。色々知っていて凄いわね、貴方」
「今すっごいバカにしているだろ!」
俺と赤槻の不毛な言い争いに、二部崎先生がクラップして鎮める。
「おーい、いちゃつくなー。本題から脱線してるぞー」
「「いちゃついてない!」」
なぜか俺と赤槻の声が揃ってしまう。名誉なのか不名誉なのか分からんな。
「それで、何をしたいんだ、きみたちは」
「旅行とか行きたいです!」
せっかく良い提案をしたと思ったのに、赤槻は両腕で自分の身を抱きしめながら俺に白い目を向けていた。
「旅行とか……私と一緒に一夜を過ごしたいっていう下心が見え透いていて気持ち悪いのだけれど。貞操の危機を感じるわ」
「旅行に行きたいって言っただけで、こんなに叩かれる⁉ コンプライアンスがガチガチに固まった、こんな世の中、嫌です!」
「そうだぞ。それは流石に被害妄想が過ぎるぞ、赤槻。青山がそんなことをするわけ……うーん」
「そこはきっぱり否定してください、二部崎先生!」
「すまん。前科があるから、否定できなかった」
「まだそのノリ続いていたんですか! いい加減しつこいっすよ!」
「まあ、話を戻すと、旅行良いんじゃないか。といっても、流石に男女二人きりの旅行は何かの過ちがありそうだからな……」
言い淀む二部崎先生に、赤槻は妙案を持ち出した。
「だったら部員を募集すればいいでしょう。そもそも、部活動に二人だけって少なすぎますよね。それに相手が、この性獣であることを考えたら、身が持ちません」
「淀みなく酷いこと言うな!」
「うん。部員募集は大いに賛成だな。だが、うちの部活は言ったように、学校に馴染めていない人の居場所的な立ち位置になる。出来るだけそういう人のための部活にしたいから、人員の選定は最終的にはこちらの判断となるが、それでもいいのなら」
「それでいいっすよ。あと、良いこと思いついたんすけど」
「なんだ、青山」
「それとは別に、お悩み相談&解決みたいのやってみたいっす。困っている人のために活動するみたいな、そういう系のアニメ見て、『青春っぽい!』って思っていたんで!」
「おお、いいな! 《アオハル部》っぽいぞ!」
「お言葉だけど、貴方みたいな頭が残念な人に、困っている人を助けるなんて崇高なことは出来るのかしら? それに女子が相談に来たら、発情しちゃいそうで怖いわ」
「さっきからひどすぎるぞ、赤槻! 俺を誰だと思っているんだ⁉」
「エロ山アホ海さん?」
「史上最悪のあだ名が爆誕した⁉」
「とまあ、その青山の活動は良いではないか。お悩み相談。それにお悩み相談に来る生徒は、学校生活に何らかの不安を抱えているケースが多いから、《アオハル部》の部員の候補にもなりえるし」
「一石二鳥っすね、先生! それでいいよな、赤槻⁉」
「……はぁ、ほんと単純。……ええ、良いわ」
「よっし、明日から《アオハル救助隊》出動だ!」
「……えっ、何その名前? ヤバいくらいダサいんだけど」
「《アオハル救助隊》行くぞ!」
「えっ、本当にその名前で行くの……?」
こうして俺たちの活動は幕を開けたのだ。
二部崎先生が先に退室して、残るは俺と赤槻の二人きりだ。
二人きりの空間が嫌なのか赤槻が荷物をまとめて帰ろうとするが、俺が待ったをかける。
「ちょっと待ってくれ、赤槻。提案がある」
赤槻は心底嫌そうに、
「はぁ、なに? これから帰ろうとしているのだけれど、手短に」
「……赤槻。友達にならないか?」
「はぁ? キモっ」
赤槻の辛辣な対応に心が折れそうになるが、俺はめげない。だって男の子だもん!
「俺とお前は割と似た境遇だ。学校から嫌われて居場所がない。だからタッグを組んで、少しでもお互い気を楽にしないか?」
赤槻は面倒くさそうに、
「……好きにすれば」
そう吐き捨てるように呟くと、ふてぶてしい背中を見せて帰っていった。
でも、その背中はどこか軽そうで……。




