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第5話「強者」

作中用語

・フィーヴェ:ディンフル、フィトラグス、ティミレッジ、オプダットの生まれた世界。ユア達が目指している所。

・ディファート:見た目は人間と変わらないが、一人ずつ生まれつき不思議な力を持つ種族。能力は人それぞれ違う。昔から老若男女関係なく、人間から差別を受けて来た。


前回のあらすじ

ユアはイグザムの母と家に残り、ディンフルを除く男性四人で森のぬし探しを始める。

途中魔物と遭遇するも、白魔導士のティミレッジは魔法が使えなくなっていることを思い出し、家に帰ることになった。

その頃、ユアとイグザムの母が皆の帰りを待っていると、家に魔物が襲来した。それも、かなりの巨体であった。

 男性陣(ディンフルを除く)を送り出したユアとイグザムの母親がいる家に、巨大な魔物が襲撃した。

 二人共、戦う力を持っていない。


 ユアが「逃げましょう」と言うが、母はガタガタと震え、その場に屈みこんでしまった。腰が抜けたようだ。


「ごめんなさい……。ユアちゃん、一人で逃げて……」

「何を言っているんですか?!」


 イグザムの母は声まで震えていた。

 魔物は屋根に突っ込んでいた手を抜き、こちらへ飛ぼうと体勢を変え始めた。ユア達は顔面蒼白になった。



「やめろ!!」



 男性の声が響き渡る。

 ティミレッジと共に戻って来たイグザムが叫んだのだ。


「イグザムさんに、ティミー?!」


 二人はすぐさまユア達の元へ駆け寄った。


「どうしたの?」

「魔法が使えないことを思い出して戻って来たんだ。森の(ぬし)はフィット達が探してくれてるよ」

「そっか。戻って来てくれて良かった……」


 戦えるイグザムが帰り、ユアは安心した。


「ユアさん達は早く逃げて下さい!」

「僕が避難させます!」


 ティミレッジがイグザムの母をおぶって、それを後ろからユアが支え、避難を始めた。

 一人残ったイグザムは、家を襲った巨大な魔物を睨みつけ、剣を抜いた。


「よくも俺の家を……。許さないぞ、森の(ぬし)!!」


 ユアとティミレッジは足を止め、イグザムの方へ振り向いた。


「い、今、何て……?」

「僕の耳が正しければ、“森の(ぬし)”って……」


「イグザムさん! このモンスター、森の(ぬし)なんですか?!」

「間違いありません! 兄が最期に撮った写真に映っていた魔物です!」


 襲って来たのは、イグザムの兄を殺した森の(ぬし)だった。

 兄は、(ぬし)の姿を収めていた。イグザムは彼が命懸けで撮った写真のお陰で、森の(ぬし)の姿がすぐにわかった。

「これが息子を殺した魔物」……イグザムの母の脳裏に息子を亡くした恐怖が蘇った。


「おばさん、大丈夫ですよ。さっき僕、息子さんの戦いっぷりを見たのですが、とてもお強い方です。きっと、森の(ぬし)も倒してくれますよ」

「……あの子の兄も強かったわ。町一番の剣士と言われていたのに、殺されてしまって……」


 ティミレッジと母が話している間に、(ぬし)の戦いが始まった。

 (ぬし)は地面に降り立ち、イグザム目掛けて鋭い牙と爪を向けて襲って来た。彼は軽い身のこなしで攻撃をひらりとかわし、巨体の上に乗った。

 自身の剣を(ぬし)の体に刺すが、あまりにも硬く、浅い傷しかつけられない。


「剣が入らない?!」


 見た目は普通の動物のような体毛に覆われ柔らかそうだが、毛の下の皮膚は岩のように硬かった。

 しかし、イグザムが動くと同時に相手も手を激しく動かした。鋭い爪が彼の鎧を抉る。


「イグザムさん!」

「大丈夫です……!」


 爪攻撃を受けながらも、イグザムは(ぬし)の顔の前に出た。

 剣を振るより先に、大口と牙の攻撃が襲い掛かった。牙も爪と同じように鋭く、少し当たっただけで鎧の肩当てが壊されてしまった。

 (ぬし)は大口を開け、彼を食べようとした。


「くっ……!」


 飛び上がり大口から逃れたところで、繰り出された鋭い爪がイグザムに当たった。攻撃は思ったより強く、彼の体は地面に叩きつけられてしまった。


「イグザムさん!!」


 防具はボロボロになり、体中から出血していた。

 ティミレッジは白魔導士だが今は魔法を使えない。助けたい人がいるのに、何も出来ない自分に不甲斐なさを感じていた。

 歯痒い思いをする彼の横で、ユアも気の毒に思っていた。


 その時、森の(ぬし)が大きな口を開けてイグザムに迫って行った。


「やめてー!!」


 (ぬし)へ向かって走り出そうとするイグザムの母を、ユア達はすかさず引き止めた。


「おばさん、危ない!」

「離して! もう、息子を失いたくないの!! イグザムを殺すなら、私を殺して!!」



 彼の体が大きな口に(くわ)えられたその時、(ぬし)の背中に紫色の光の球が当たった。

 口の力が緩み、イグザムは解放された。


「い、今のって……?」

「魔法?!」


「白魔導士! そいつを治してやれ!」


 (ぬし)の後ろで、ディンフルが宙に浮いて立っていた。

 魔法と縁が無い世界で育ったユアは、その光景に驚いた。


「浮いてる?!」

「ディンフルさん! 魔法が使えるように……」

「死なせたくなければ早くやれ!」


 質問を遮られた上に早口で怒られたティミレッジは、持っていた杖を傷だらけのイグザムに向けて白魔法の呪文を唱えた。

 イグザムの体は白く優しい光に包まれ、体の傷が塞がり、壊れた鎧も元通りになった。


「使えた?!」

「な、何で……?」


 ティミレッジは感激で目を輝かせ、ユアは我が目を疑った。

 イグザムが全快すると、母は泣きながら「よかった! よかった……!」と彼に抱き着いた。


 攻撃を受けた(ぬし)は、今度は宙にいるディンフルを睨みつけた。


「ディンフルさん、気を付けて! この魔物が森の(ぬし)で、相当強いです!」

「ほう……」


 ティミレッジの忠告を、まるで真剣に聞いていないようだった。

 まもなく、(ぬし)がディンフルに向かって鋭い爪を向けながら飛び掛かった。

 巨体のジャンプを初めて目の当たりにしたユアが思わず声を上げた。


「飛べるの?! あんなに巨大なのに!」

「フン。大きかろうが小さかろうが、私の敵ではない!」


 何故か余裕気なディンフルは爪攻撃に対し、マントで自身の身を覆い、防御の態勢に入った。


「ダメ! 逃げて!!」


 マントでは物理攻撃は防げないと見越したユアが叫ぶ。

 だが間に合わず、(ぬし)は爪でディンフルをひっかいた。


 次の瞬間、(ぬし)の爪がバラバラに砕け、地面に落ちた。


「えぇーーー?!」


 ユア、ティミレッジ、イグザム、彼の母が叫んだ。

 爪が折れる様子を見届けたディンフルは覆っていたマントを元に戻し、地面に降り立った。マントはまったくの無傷だった。


「何故、私が逃げねばならぬ?」


 ディンフルのあっさりとした様子に、ユアは警告したことを恥ずかしく思った。


 イグザムも開いた口が塞がらなかった。

 先ほど、ディンフルが戦闘に特化したディファートである話を聞いたばかりだ。まさか、自分が苦戦した爪攻撃をマントだけで無効にさせるとは、予測できなかった。


 (ぬし)も爪が折られるとは思わなかったので、目が点になっていた。


 早速、反撃する。ディンフルに向かって、口から白い光線を放った。


「口から魔法?!」


 ユアの心配をよそにディンフルも利き手の左手だけを向け、紫色の魔法を放った。

 白い光線はあっという間に消され、紫の魔法が炸裂した。(ぬし)はダメージを受けて倒れてしまった。


「話にならぬ」


 今度はディンフルが近づき、四メートルもある巨体を持ち上げてしまった。


「えぇぇ?!」


 再びユア達が悲鳴を上げる。

 武闘家のオプダットでさえ持ち上げられなさそうな巨体を、森方面へと投げてしまった。


「すごい……」


 今のでイグザムは、ディンフルが戦闘に特化したディファートであると確信し、「これなら、(ぬし)を倒せるかも……?」と希望が湧いた。

 そして、魔法が解禁されたディンフルの勇姿を初めて生で見たユアは目がハートになっていた。



 一方で、森の(ぬし)を遠くへ飛ばしたことでティミレッジが焦っていた。


「ディンフルさん! 遠くへ投げてどうするんですか?! もし、民家があったら……?」

「心配無用。例の森は魔物で溢れ、人は住んでいない。ここでは巻き込みが起こる故、奴の故郷である森で戦った方が良かろう」

「そこまで考えて……?」


 他の四人はディンフルに見惚れていた。


「カッコいい……。そしてやっぱり、助けに来てくれたね!?」

「助けたわけではない! あの程度に手こずるお前達がもどかしかったのだ!」


 ユアが賞賛するも、ディンフルは精いっぱい否定した。


「ところでディンフルさん。いつから魔法を使えるようになったんですか?」

「つい先ほどだ。魔物の群れと会い、一掃しようといつもの癖で出したら、使えたのでな」

「じゃあ僕達、魔力が戻ったんですね?!」


 ディンフル達が話をしていると、突然イグザムの母が叫んだ。


「待ちなさい、イグザム!」


 イグザムが再び森へ行こうとしていた。


「すまない、母さん。あいつが生きている以上、行かないと……」

「お願い、行かないで。あなたを失いたくないの!」


 母はイグザムを行かせたくなかった。元々、魔物退治の仕事に反対しており、先ほどの戦いを見て、ますます彼を戦わせたくないと思ったのだ。


 二人を見ていたディンフルが静かに言った。


「ここで待っていろ。お前では力不足だ」

「そ、そうですけど、兄の仇を……」

「僕達が取って来ます。僕は白魔法しか使えませんけど、フィットやオープン、それにディンフルさんもいるし、魔法も戻ったので前より戦いやすいはずです!」


 ティミレッジは自信たっぷりに言った。


「疲れもあるのだろう? その状態で参戦されては却って迷惑だ。……仇も大事だが、今いる家族を大事にしろ」


 そして、ディンフルが最後に小声でつぶやいた一言をユアは聞き逃さなかった。「フィーヴェでは怖い魔王様だったけど、根は優しい人なんだ」と、()()()()言った。声に出すと、また彼が怒るからだ。


 イグザムは言う通りにし、母と家に残ることに決めた。

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最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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