第3話「決意」
作中用語
・フィーヴェ:ディンフル、フィトラグス、ティミレッジ、オプダットの生まれ育った世界。ユア達が目指している所。
前回のあらすじ
イグザムは魔物退治中に出会った五人の男女を家に連れて帰る。
彼らは異世界から来た者達で、男性陣四人はゲームのキャラクター、ユアはそれを遊ぶプレイヤーだと発覚する。
そんな中、イグザムは亡き兄の墓参りに行き忘れたことを思い出す。せっかくなので、五人も一緒に行くことになった。
幸い、道中に魔物は現れず、無事、墓地に到着した。
イグザムはついて来てくれたユア達に感謝した。
「何かすいません。気を遣わせてしまって」
「いえいえ。私達こそ、あなたにケガをさせてしまいましたから」
「それに、誰かさんがきっかけで始めた旅のせいで、お節介焼きになってしまったのでな」
フィトラグスはディンフルを見ながら付け足した。「誰かさん」とはディンフルのことを言っていた。
聞いていたユア達三人は「いつかフィットの皮肉でディンフルがキレたりしたら……?」と冷や汗をかく。ディンフルには町ごと異次元へ飛ばす力があるので、怒らせるとどんな仕返しが来るかわからないからだ。
数ある墓石が並ぶ中、イグザムは他のものよりもキレイな墓石の前に立った。
ティミレッジがイグザムに尋ねた。
「最近亡くなられた方ですか?」
「はい。半年前、兄が魔物に殺されたんです」
ユア達は絶句した。
イグザムは「魔物退治の仕事をしていたんです」と、兄の話をし始めた。
「俺は兄が亡くなってからこの仕事を始めました。剣術は父から習っていたのですが、商売の仕事に就いてたのであまり使っていなかったんです。その間、兄が魔物退治をしていましたが……、“森の主”に殺されてしまいました」
「森の主?」と、ティミレッジが興味深そうに聞いた。
「森で一番強い魔物の呼び名です。たびたび人間のいる町に降りて来ては、人や家畜を襲ったり畑を荒らしたりと、みんな困っております。倒さなくてはいけない存在ですが、人間の力では倒せないと言われていて……」
「そんなに……?」
ユアは血の気が引いた。
「兄は町一番の剣士でした。町長も兄なら倒せると思っていたようで依頼をしたのですが……。“貴重な若い命を失ってしまった”と、毎日後悔をしています」
イグザムは墓石に水を掛けたり、テキパキと花を用意しながら話し続けた。
「悪いのは町長じゃない。人々に迷惑を掛け、尊い命を奪った主です。俺は兄の仇討ちのために前の仕事を辞めて、退治の仕事に就いたんです」
横からユアが聞いた。
「主には会えそうですか?」
「主が出ると言われる森を中心に退治をしていますが、今のところは……。出て来るのは弱い奴ばかりで、たまに強いのが出てもすぐに倒せます。主でないのは明らかです。町一番だった兄が殺されたぐらいなので、かなり強いはずです」
イグザムが答えると、オプダットはその場で仁王立ちした。
「それなら、手伝うぜっ!」
「えっ?」
「お兄さんの仇討ちに、強すぎる魔物なんて放っとくわけにいかねぇじゃん! なぁ、みんな?」
他のメンバーへ振ると、フィトラグスとティミレッジは彼の気迫に苦笑いしながらも手伝う意志を示した。
「ま、まぁ、そうだね……」
「放っておけないな」
ユアもやる気満々で答えた。
「うん! このメンバーなら出来るよ! 私は戦えないけど……」
「ほ、本当に、手伝っていただけるんですか?」
イグザムが念を押して聞くと、ユア、ティミレッジ、フィトラグス、オプダットは自信に満ちた顔で頷いた。
「はい!」
「ケガをさせたので、償わせて下さい」
「俺も正義の国の王子だからな。困っている人を見過ごすと、父上に何て言われるか……」
「よっしゃ! 決まりだ、決まり~!」
四人が盛り上がる中、黙っていたディンフルが口を開いた。
「お前達だけでやってくれ」
「えっ?!」
他の者が一斉に彼へ向いた。
「我々は今、フィーヴェへ戻る途中。寄り道をしている暇などない筈。ましてや、人間に手など貸したくはない」
「そ、そんなこと言うなよ。他の世界でも助けて来ただろ?」
「人助けはお前達の役目だ。私はそのようなポジションではない。巻き込まないで頂こう」
オプダットが説得するも、ディンフルは首を縦に振ろうとしない。
「でも、いつも迷惑そうでも……」
「お前が説得できる立場か?」
ユアが何か言い掛けるが、ディンフルが遮った。
「何故、一人だけ戦えぬお前も賛成する? 我々の戦いを娯楽にしている故、今も遊び感覚ではないのか? 我々は遊んでいるのではない。常に死と隣り合わせだ。戦ったことも無い者に口を挟まれると迷惑だ。引っ込んでいろ」
冷たい言い方にユアはショックを受け、言い返せなかった。
「人間に手は貸さぬ。私は他の場所で待機する」
そう言うとディンフルはイグザム達に背を向け、来た道を戻って行った。
取り残された者の間に重い空気が立ち込めた。
「マジかよ……」
「ほっとけ。あいつは正義のヒーローじゃないんだから」
オプダットが落ち込む一方で、フィトラグスが淡々と言う。こうなることは想定内だったようだ。
「でもさ……、どこかで戻って来そうじゃない?」
空気が重くなる中、ティミレッジが期待を込めるように言った。
「そうそう! よく考えたら、そうだな!」
「……確かに」
しばらく考えた後オプダットは元の明るさに戻り、フィトラグスですら渋々認めた。
事情を知らないイグザムが尋ねる。
「な、何でですか?」
「彼、あんな言い方するけど、優しいところがあるんですよ!」
「でも、手は貸したくないって……?」
「大丈夫、大丈夫! そのうちどっかで会えるよ!」
ティミレッジとオプダットはディンフルに謎の信頼感を寄せており、それをフィトラグスは面白く思わなかった。
「あまり信じない方がいいと思うんだが……」
「フィットも知ってるはずだぞ? あいつがツンドラだってこと!」
「それを言うなら、ツンデレね!」
三人が盛り上がる中、ユアは微笑みながら彼らを見ていた。だが、先ほどの元気がなく、ディンフルから言われたことを気にしているようだった。
イグザムが心配して声を掛けた。
「大丈夫ですか?」
「あ、はい。怒られるのはいつものことです。私も後先考えずに言っちゃったし、怒られるのは当然ですよ……」
ユアはごまかすように笑って見せた。
イグザムは、戦えなくても手伝おうとする心遣いが嬉しく、彼女を元気づけるために礼を言って励ました。
「手伝って下さるお気持ちだけでも、すごく嬉しかったです。ありがとうございます」
「あ……。こちらこそ、ありがとうございます」
逆にイグザムに励まされ、ユアは礼を言った。元気が戻ったようだ。
「ところで……、断るディンフル、カッコ良くなかったですか? “手は貸さぬ”ってセリフとか?」
「はい……?」
ユアがデレデレしながら聞くと、イグザムは反応に困った。
怒った時のディンフルもカッコ良く見えたらしいので、ダメージはそう深くないようだった。
ディンフルを除いた五人で兄の墓に手を合わせると、オプダットが言った「思い立ったが吉日」という言葉通り、早速森の主探しが始まった。
ただ、「思い立ったが末日」と間違えたために、ユア達から総ツッコミされたのは言うまでもない。
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最後まで読んで頂き、ありがとうございました。




