君が僕に声を届けた日
僕にとって、星は道しるべだ。
時の流れにそって、夜空にのって...
闇を飛び出すための、一つだけの手段だ。
「ねぇ、声聞こえる?」
女の子の声が、聞こえた。
「うん。聞こえる。」
僕は、自然と頷いていた。
この声の優しそうな女の子は、誰だろう。
お母さんでは....ない、よね?
「不安を感じてる?」
「.......分からない。」
自分の口じゃないみたいに、しゃべる。
隣に、人がいるような気がするのに、そっちに首をむけることができない。
(....これ、夢なのかな)
夢の中だから、隣の女の子は僕の知ってる人かなぁ?
冷たい感覚が、指に伝わる。
波打つ音が、耳元に残る。
ここは...海....?
「分からないから、不安を感じてるの?」
「.......」
僕は、口を開けなかった。
なにを今考えてるんだろうか。
僕には、僕のことが分からない。
「いつも、そうやって、どうしようか悩んだ時は、口をつぐむよね。考えてるフリでしょ?」
「実際考えてるから....」
「ふーん。ねぇ、海の上に星が見えるよ。」
謎の少女の小さな手が星を指さす。
「.......綺麗.....だな。」
少しだけ、低い声だった。
本当は、僕じゃないのかもしれない。
だったら、この人は...誰なんだろうか。
「ねぇ、ちょっと寒くなっちゃった。」
チャックを引いて、ダウンジャケットがこすれる音ともに少女に「ん、」と渡す。
「ありがとう。」
「別に、これくらいどうってことないよ」
「.....うん」
腕をさすりながら、砂の上で座り続ける。
どうしてかな。少しだけ、落ち着いてくる気がする。
指先が、ぼんやりと暖かくなる。
「やっぱり、寒いんでしょ」
「.........いいんだよ。変に気遣わなくても」
「無理、させちゃったね。」
顔が、地面にそれる。
寒いなぁ...僕も寒いよ。
もう、変に渡さなくてもいいのに..
気を遣わせちゃったね。って言ってるんだから
「いいんだよ。」
「そう?」
「そう。」
.........。そうなんだ。
僕は、自分の言葉に納得させられた。
「そろそろだね。」
「だな。」
顔が、空へと向かう。
あぁ....もう、こんなに星が輝いてるんだ。
そこには、何千何万という星が輝く。
夜空の暗闇に、散りばめられた金箔を一つ一つ目で追っていく。
「まだかな。」
「いや...もうちょっと」
白い息と共に、手に持った水のボトルに口をつける。
星は、綺麗だったけど...この時間なら、アニメとか見たりしないのかな?とか...ふと、頭に浮かぶ。
その瞬間に、一つ小さな星が流れた。
「あ....きた」
「おぉ....」
その流れをひっきりに、いくつもの星が流れていく。
僕が、この星を見に来ていたら瞬きを忘れるほどに見とれていただろう。
「..........綺麗だね。」
「あぁ...来てよかった。」
「泣いてるの?」
「え.....ぁ....あぁ」
目元が熱くなって、涙が流れる。
「いや.....少しだけ懐かしくなっただけだ。」
そうして、腕を動かして、涙を拭う。
暗闇が、僕を包み込んだ。
グルグルと、その闇は僕を覆って───
「あぁ....」
手元の温かさに目が覚めた。
それは赤ちゃんだった。
「僕、寝ちゃってたんだ。」
目元に手をよせる。
ペタリと冷たい感触。
泣いてたんだ...僕。
「おぎゃあぁああ!!おぎゃあぁああ!!」
「あぁ...もう、起こしちゃダメでしょっ!!」
「え、えぇ!?僕っ!?!」
お母さんが、赤ちゃんの元にやってくる。
僕は、お母さんの肩で泣いている女の子を見た。
パチリと、目線が合う。
「君なの?」
泣いていた赤ちゃんは、少しだけ笑ってたような気がした。
一発書きじゃないと、言葉が乗ってかないですねw