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第3話 転生③

 守が死んだ後の世界ではこんなことが起こっていた……



 守がトラックにぶつかったのを守の母が知ったのは、病院からの1本の電話だった。


プルルルルッ プルルルルッ、ピッ


「もしもし」


「もしもし、こちら――病院のものですけれども、大変申し上げにくいのですが……」


「なんなの!? こっちは今忙しいのよ。早く要件を言ってちょうだい!」


「貴方の息子さんである守さんが亡くなられました……」


「なんだって? 息子が死んだ? なんで死んだのよ?」


「少女を突き飛ばして、守さん自身がトラックにはねられてしまいました。私どももできるだけのことをしましたが、力及ばず申し訳ありません。つきましては、一度病院に来ていただけませんでしょうか?」


「今は忙しいから仕事が終わってからそっち伺うわ」


「息子さんのご冥福をお祈りいたします」


 なんなのよ!? 今男から金をもらってるとこなのに、あいつが死んだですって。なんで死んでからも私に迷惑かけるのよ。死ぬならもっと迷惑をかけないように死になさいよ!!!


「どうしたの? 何か用事?」


「ううん! 何でもないよ。 じゃあもう1回ヤろっか!」


「え? いいの~!!! やったね」


 息子への苛立ちをすべて発散するかのように男をむさぼり食うのだった。

もちろん、行為が終わってお金をもらうときにはもう息子の死のことなど頭から抜けかけていた。


 しかし、この女が考えていたのはもっと息子の死ではなく、賠償金のことだった。



 場所は変わって会議室へと移る。


 守の母親は、まずトラックの運送会社へと電話をした。「うちの息子がトラックに轢かれて死んだんだから、賠償金を払え。」と。警察が間に入り、トラック会社から100万円ほど支払ってもらった。しかし、それだけでは飽き足らず、守が突き飛ばした少女の家にまで押し掛けたのだった。そして、後日話し合うという話になった。


 一室には、守の母、突き飛ばされた少女の両親、そして、両親が雇った弁護士が一堂に集まっていた。


「「この度はご足労いただき大変ありがとうございます」」


「いいわ。息子のためだもの」


 この女はそんなこと本当はこれっぽっちも思っていなかった。


「貴方の息子さんには私たちの娘を助けてもらった恩があります。私たちとしましては、できる限りのことをしたいと思っています。まずはこれをお受け取り下さい」


 両親がおもむろに取り出したのは厚めの封筒だった。中には、およそ100万円ほどが入っていた。


 守の母は受け取り、中身を出して数え始めた。


「足りないわ!」


「「「は?」」」


「足りない。こんな金額じゃ全然足りない! 私の大事な大事な家族の命をなんだと思っているの? 正気なの?」


「すみません。私たちにはこの金額までしか出せません。どうかそれだけで勘弁していただきたい」


 トラック会社の賠償金と同等の額を出してきているということは、この家族はそれほど感謝しているという気持ちの表れであった。しかし、この女はまだまだお金をせびれると思い、更なるお金を要求したのである。


「あんたたちバカね。こんだけしかくれないのなら、今回の事をマスコミに売りつけちゃおうかしら。貴方たちがクズだってこと。貴方たちの可愛い可愛い娘ちゃんはどうなるかな~? 人殺しなんてよばれちゃったりして~!」


「「それはっ……。」」


「アハハハハハッ。たまんないわ~」


 この女からすれば、息子の代わりに遊ぶ相手が見つかったようなものだった。


 しかし、守が死んだことによって、明らかになったこともあった。


コンコンッ


「警察だっ!!! 磯崎望! 貴方を児童虐待罪、脅迫罪で逮捕する!!」


「なんですって!? 私はそんなことしてないわよ!!!」


「詳しくは署で聞かせてもらおう」


「ちょっ!! 離して!! 離してってば!!」


 ――そう、守の体には凄惨な日常的な虐待の跡が残っていたのだ。また、少女の夫婦に脅迫まがいのことをしたため、罪が重くなったのである。


 彼女の人生は終わった。この事件は、マスコミでも報じられ、悪魔の女としてのレッテルを貼られ生きていくことになる。反対に、少女の両親は、子供を失わずに済み、天寿を全うしたのだった。


神様は必ず見ている。いい人も悪い人も……。


神様は()をついた……。 だが、その嘘は彼にとって必要な()だったのかもしれない……。


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