009 下僕は常に分がわるい
逃げ惑い続けること1時間、屠られたモンスターは実に182体。モンスターが出現、俺は逃げる、モンスターが出現…その永久機関からなんとか脱出をはたした。
―――も、もう無理です…。
「いやー、倒したたおした。これで魔王軍もおとなしくなるでしょう。…それで…カイト…その…ごめんね♪」
かわいくすればなんでも許してもらえると思ってませんか。デレデレおじいちゃん相手ならともかく、俺には通用しません…。
いえ…思いっきり通用します。…アリスはずるい。俺が必死にフタをしている恋心を、こうも容易く利用するのだ。ちょっと困ったような微笑みと、強調される胸元。ちらっと右肩から顔を出しているピンクの紐。これもずるい、絶対わざとだ。こちとら青春まっさかりの下僕なんです!…はぁ、敵わない。
「ど…どうして止めてくれなかったんですか…はぁ…はぁ…。」
必死に呼吸する俺。途中、何度も倒れそうになった。それでも走り続けたのは命惜しさからなのだが、レベルアップのおかげであることが大きい。ただ逃げ惑っているだけなのだが、敵の的となり、アリスの攻撃を補助しているともいえる。それすなわち俺も戦闘に参加していることになり、申し訳ないながらも経験値がもらえた。結果、倒れそうになる度にレベルアップにともなう強制回復が入った。
―――絶対…身体によくない。
そう、絶対に悪いと思う。ぶっ倒れる寸前で全回復。そんなことを繰り返すこと50回近く。いつの間にやら俺のレベルは80をこえていた。アリスは9000レベルくらいだったはずなので、遠く及ばないのだが…。
「えへへ…その、魔王軍にダメージ与えられたら…一石二鳥かな?って思って。」
「…つまり、魔王軍にダメージを与えるべく、ゲートを開いたと。それで俺への罰も一緒に執行しようと、俺の頭上に開いたと。」
デレデレおじいちゃんからの依頼と俺への罰、同時に片づけようとしたのかこの美少女。
『…はい。』
「木っ端みじんになるところだったんですよ!」
『…でも、生きてるから大丈夫、大丈夫。』
ものすっごい笑顔で言われた。たしかにそうではあるが。
「そういう…はぁ…いえ、アリスの『裸』を見ちゃった俺が悪いです。」
反論は無駄だと悟ったので、ちょっと意地悪をしてみることにした。下僕の小さすぎる反抗である。ことあるごとに「裸」って言ってやる。
『裸って…パ、パ〇ツは穿いてたもん!』
「パ〇ツしか穿いてなかったじゃないですか!」
『うわぁー、やっぱりしっかり見たんだ!変態っ!』
「うぐっ…。」
墓穴を掘ってしまった俺。返す言葉もない。ピンクの水玉模様、がっつり見てしまったことがバレた。その上、この勝負は分が悪すぎる。ノックをせずに扉を開けた俺が100悪い。アリスは部屋でお着がえをしていただけなのだ。
3秒後、やっぱり土下座をすることになった俺。
■■下僕の心得■■
無駄な抵抗はしない。
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