003 ツンデレと下僕の心得
『ただいまー。』
「おかえりなさい。お荷物、お預かりします。」
■■下僕の心得■■
重たそうな荷物であれば、必ず預かる。
『ありがと。あ、これ…おいしそうだったから買ってきた。』
「あ!ケーキじゃないですか。この前オープンしたばっかりのお店の。アリスさん、イチゴ好きですもんね。」
■■下僕の心得■■
好き嫌いの傾向を把握し、会話の種をまく。
『うん。カイトにはブルーベリーのケーキ。ブルーベリー、好きだったよね?』
「はい。…あ、でも…。」
3日間食事抜きの罰を受けていました。透けすけ黒色の布を見た罰として。
『いいよ、許す。』
「え、本当ですか!?ありがとうございます。やったー!食べましょ、食べましょ!」
こういうことしてくるから、かわいい。絶対服従の命令権を用いた究極的ツンデレ。その笑顔に俺は惚れてる。一方通行の恋だけど。
『明日、サクラの王都に行かなきゃいけないから、旅の準備しといてね。』
「わかりました。でも急ですね。」
お皿とフォークを準備しつつ、言葉を返す。魔法使いとして引く手あまたのアリス。実力は折り紙付きで、各国トップが三顧の礼をもって迎え入れようとしているほどだ。戦力的な話をすれば、一国の軍レベルと同等。アリスの意向ひとつで、誇張ではなく言葉通りの意味で、各国のパワーバランスがひっくり返る。
見た目はあんなかわいい美少女なのに、魔王ですら名前を聞いただけで震えあがるらしい。そんなこんなでこの世界、魔王軍は超絶低迷中。なにか問題を起こそうものなら、アリスの魔法をもって魔王軍は消滅する。これは覆しがたい事実。よって魔王軍はほそぼそと活動しているらしい。
―――怖…。
『魔王がまた水面下で活動始めたんだって。あれだけ弱体化させてボロボロにしたのに…もう。』
さらっと言っているが、この人、魔王を弱体化させたそうです。怖いです。逆に恐ろしいです。
「また…戦いになりそうですか?」
『…心配してくれてるの?ふふっ、大丈夫。カイトと違って私、強いから。』
「そりゃそうですけど…。」
好きな女の子が危険にさらされる、黙ってみている俺ではない。…と、格好つけたいところなのだが…。
下僕としてここに住みだして以降、俺は自分の気持ちフタをしている。大好きな女の子とひとつ屋根の下、そうでもしないと身が持たないのだ。もちろん変なことを考えようものなら、実力をもって排除されるのがオチ。魔法の実力はもちろん、単純な腕力も勝負にすらならない。この前腕相撲をしてみたが、小指1本でアリスにねじ伏せられた。しかも右手が机にめりこんで、とるのも大変だった。もう絶対しない。…命令されればするしかないけども。
『さて、食べましょ!』
「はい。ありがとうございます。いただきます。」
■■下僕の心得■■
お礼は丁寧に。謝罪は全力で。
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