愛情不信症
結局のところ、彼らの言う愛情とは、彼らの欲望を満たすための道具のひとつでしかないのだ。
いつも同じ時間に、もうとっくに食い飽きた味の飯を出し、音の出るユーモアセンスの欠片もない玩具で遊び、目を瞑らずとも鮮明に思い出すことができるほど、何度も見た景色の中を首輪をつけて歩かせる彼がその証拠だ。
彼はいつも私に笑って見せたが、きっとその笑顔だって純然たるものではなかったに違いない。
もしそうでなければ、無責任に私を陰鬱でジメジメとした路地裏に捨てたりなんか、しなかっただろう。
ふと横を見ると、きっと私と同じ境遇なのだろう。
髭を無造作に伸びはやし、ハエに集られた男が、詰めれば、成人男性が5人ほどは入れそうな大きなダンボールから顔だけをだして、虚ろな目で中空を見つめていた。