初めての戦闘
ゲームを始めてから数日後、生産に慣れた自分たちはこんなことを思い始めていた。
「(紗夜も居るなら最初のモンスター位なら……)」
「(スズハルと一緒なら外に出て戦えるかな〜……?)」
街から一歩も出ずずっと生産していたのだ。失敗していない生産品の過剰分もあるから二人分の装備なら用意出来る。
「外に出て戦ってみない?」
「分かった〜、初心者の草原にれっつご〜」
「その前に装備整えないとね。剣の余剰分ってある?」
「ある〜」
「なら自分はこうして……」
トレード機能を使って自分は初心者の長袖、ズボン、バンダナを渡す。籠手や靴も本当は用意したいけどスキルが無いから無理だった。
紗夜からは銅剣を貰ってお揃いの装備で街の外に向かった。
「あ、羊さんだ〜」
「あんまり近づくと攻撃されるよ? 一応敵だし」
「この防具の素材になるんだっけ〜……」
「だね、試しに行こっか」
「は〜い」
小さめの羊に黄色のツナが無理やり生えたような見た目をしていた。見た目が可愛いからちょっと気が引けるけどやるしかない。
「えいっ」
「メーッ」
「やっ」
「メッ」
「今度こそ!」
「メー」
「避けないで〜」
「メッメー」
自分たちのへなちょこの攻撃は全部失敗した。まぁ剣のスキルが無いから当たり前なんだけど……。とは言っても諦める訳には!
「後ろから!」
「メ〝ッ」
「や〜!」
「メ〝ーッ?!」
紗夜に羊が意識を向けている隙に背後に回り込み、力任せに斬りかかる。そうするとちゃんと直撃し、紗夜も突いてトドメを刺した。
そこまでは良かった、羊は消えて自分たちにドロップアイテム等が割り振られた所で事件は起こる。
「スズハル避けて〜!」
「え? なんひゃぁっ?!」
突いた勢いが止まらず、剣こそ自分の横に刺さったものの押し倒されてしまった。
「……変な声出してたよ〜?」
「あ、危ないから早く立たないと!」
「知ってる〜? 初心者の草原の魔物さんって攻撃しない限り襲って来ないんだよ〜?」
「そ、それでも」
「ふ〜ん……恥ずかしそうな顔可愛いよ〜?」
「見ないで!」
何とかこの辱めから脱出しようと動くも、紗夜はびくともしなかった。
「私のSTRって多分スズハルより高いよ〜、鍛治だから上げなきゃいけなかったし〜……。でもここだったらお姫様抱っこ出来るかもね〜。あと……」
「は、はい」
「ゲームの中だったらいつもより長く夜のお遊び出来るみたいだよ〜、写真も撮り放題だし〜」
「……つまりは」
「スズハルの可愛い姿、たくさん見せてね〜?」
その後どうなったかは想像にお任せするけど、いつもより紗夜がドSでした。ログアウトしてから二戦目もありました。
……しばらくこの日のことが忘れなくなりそう。
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悔いはない