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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

僕が産まれた意味

作者: 檸檬

 僕は、ふと考える。自分がなんの為に産まれて、なんの為に生きているのかを……全世界で、人間という種類の生物は現在七十七億存在している。僕はその内の一つでしかない。故に考えてしまう。

 僕は高校生二年生で、今は春である。新学期が始まり、短かった春休みは直ぐに終わった。僕はどのクラブにも所属していなかった為、毎日読書か、勉強をしていた。友達はおろか、ハマっているゲームも無かった為、毎日が退屈な日々であったが、僕にとってはいつもの日常であった。そして今、僕は学校に登校している。勿論一人でだ。

 二年生になり、新しいクラスになった。新しいクラスになったところで僕は友達を作ろうとは思わなかった。クラスに入り自分の席を探す。どうやら、一番後ろの窓側の席だった。周りでは一年生の時に仲が良かった同士で群がっている。勿論僕には、一年生の時に友達が居なかったからだ。友達の一人ぐらい出来るはずだが、僕はいつも無表情だった為、クラスメイトからは呆れられてしまった。

 教師が入ってくると、皆に席に座るように促す。何故か俺の隣は空いていた。新しいいじめか、それとも新学期初日から遅刻するヤンキーか、僕はそんな事を考えていた。それ以外の考えが思い浮かばなかったからだ。


「突然だが、今年この学校に転校してきた生徒を紹介する。入ってきなさい。」


 先生の掛け声と共に、廊下から一人の女性がクラスに入ってきた。僕は入ってきた女の子の容姿に驚いていた。こんなに整った顔の持ち主はそうにいないと思わせるような顔立ちをしていたからだ。彼女が入ってくるやいなやクラス中の男子は発狂していた。先生が静かにしろと言ってもそれは一分間続いた。一分間でよく収まったと思う。彼女は日本人とアメリカ人のハーフらしく日本産まれ日本育ちの為、日本語はペラペラだった。髪の色は勿論金髪だった。言うまでもなく、僕の席の隣が空いていたのは、彼女がそこに座るためであった。先生は僕に彼女に学校の事を教えるように頼んできた。いや、拒否権が無かった為、これは単なる命令の一種だ。彼女は僕に向かってよろしくと言ってきた。僕はいつもどうり無表情で、どうもと言った。僕の無愛想な返答に他の男子生徒からは怒りの目で見られていたが、僕には関係の無い事だつた。僕は他人からどう見られても何も感じないからだ。だが、彼女は何故か笑顔のままだった。

 一ヶ月経つと彼女はクラスの男子達とは仲良くなっていた。だが彼女は何処か笑っていないように見えた。それもそのはず、彼女は彼女の容姿に嫉妬した他の女子から、いじめを受けていたからだ。それは日に日にエスカレートしていった。

 ある日、僕は少し体調が悪くなったため、体育の時間に保健室に向かった。保健室には、先生は居なかったが、その代わりに彼女が居た。泣いていた。僕は二週間ほど彼女に学校を案内したり、学校の過ごし方について教えていた。だが、ここ一週間は口を聞かなかった。彼女と話している姿を他の男子に、見られたら面倒な事になると思っていたからだ。彼女は僕に気づくと直ぐに泣き止んだ。僕は彼女に尋ねた。何故泣いているのかを。彼女は直ぐに答えてくれた。いじめられている事、その事を親に相談しても、教師に相談しても、真面目に聞いてくれない事、近づいてくる男は皆彼女の顔しか見ていない事、そして、僕だけがそうではない唯一の男子だった事。彼女は泣きながら僕に頼んできた。助けてほしいと。僕は淡々と無表情のまま言った。


「君が助けてほしいと言うなら助けるが、どうなってもいいんだね?」


 僕がそう答えると、彼女は首を縦に振った。その返事を聞くと直ぐに僕は、保健室から出て行った。

 ある日の放課後僕は、教師が話している時に手を挙げた。教師は話を止め、僕に尋ねてきた。


「なんだ?」


 僕が少し話があると言うと、教師は渋々それを了承してくれた。僕が前に出ると、面白がって笑う奴、僕だと分かって寝る奴、窓の外を見る奴など皆様々な事をする。僕はその事を気にも留めず、ある写真を配った。その写真のせいでクラスの雰囲気が一気に凍った。その写真の中には彼女がいじめられている写真があった。一人は彼女の髪を引っ張り、一人はそれを笑い、もう一人はそれを撮影していた。僕は教室が静まり返ると更に追い打ちをかれた。


「この写真は、校長先生、及び他教師に見せました。こんな事をした人は、これからどうなるか、分かりますよね。」


 その時も僕は無表情で、声色を変えないで言った。瞬間、主犯格の女達は泣き出しクラス内で、戦争が起こった。ほぼ壊滅状態だった。僕は彼女の声も聞かずその壊れきったクラス出た。彼女は泣いていた。その涙がどんなものなのか今でも分からない。

 それと僕は、校長先生、及び他教師の人に写真を見せただけではない。それだけでは証拠が、不十分だと思ったからだ。だから僕はあの日こっそりと録音していたものも聞かせた。そう、あの日彼女が泣きながら言ってきた真実をだ。

 次の日僕はいつもと変わらず一人で登校していた。すると、目の前に彼女がいる事に気づいた。彼女も僕に気づいたようだ。するといきなり大声で叫んできた「後ろー」っとそれを聞いた時にはもう遅かった。僕はある人に刺された。薄れる意識の中、その人に目をやった。するとそこには、僕のグラスの教師が居た。やってやったと言わんばかりの顔をしていた。まるで死神に取り憑かれているかのように。そのまま僕は死んでしまった。死ぬのは怖く無かった。何故なら僕は病気でこの夏には死ぬ予定だったからだ。だから僕は皆に無愛想に振る舞った。あの日クラスを崩壊させたのは僕が生きた証を作りたかっただけだ。それ以上でもそれ以下でもない。

 ただ僕は、七十七億人の僕では無く、僕が居た七十七億人にしたかっただけだ。

 ただ僕が、生まれた意味にしたかっただけだ。

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