第1話:別れと出会い
―――僕は犬だ、でも好きな人間がいる―――
この世の中に存在している人間の多くが僕らの言葉を理解できない。
理解してもらえないことに不満はない。
でも…この思いだけは…
大好きなあの人に伝えたい…
「レオン~!ただいま~!」
この人は「天乃城 麗華」。
僕の大好きな人だ。
いつも僕のことを1番に考えてくれる優しいお嬢様!
一生そばにいたい…。そう思っていたのに…
運命は残酷で、僕たち犬は人間よりも寿命が短い。
僕ももうそろそろお別れが近いみたい…
ごめんね、れいちゃん。泣かないで僕を見送ってね…僕も泣かないから…
―――数日後―――
「レオン!レオン!ダメだよ!私を1人にしないで…」
あぁ…そんな顔しないでれいちゃん…。
いつもみたいにクールなお嬢様でいてよ…。
僕まで悲しくなっちゃうじゃないか。
あれ…。なんで今れいちゃんのことクールって思ったのかな…。
僕の前じゃいつも無邪気に笑って遊んでくれる優しい子なのに…。
ダメだ…わからない…。
「残念ですがレオン君の心臓はもう動いていません。悲しいでしょうが、お別れをしましょうお嬢様。」
「いやだ…。レオン…!親友だったのに…」
―――1か月後―――
「お嬢様、気を付けて行ってらっしゃいませ。」
「…。」
レオンが亡くなってから1か月が経った。
私は普段通りに学校へ行く。
そう、普段通りクールなお嬢様の姿で。
「麗華さん、学校が終わった後カフェでもどうです?」
ふと顔をあげるとそこにはクラスメイトの男の子「時東 楓」がいた。
校内でも有名なイケメンで女子たちに人気があるが、私はこの男が嫌いだ。
女を下にしか見ていないとこも、令嬢の私に気に入られようとしてくる姿も。
「結構です。習い事がありますので。」
「なによ、あの態度。せっかく楓君が誘ってあげたのに!」
「楓君!そんな女ほっといて私たちと一緒にカフェに行こ~!令嬢様には庶民の味は合わないのよ!」
時東楓の取り巻き女子。
何がよくてそんな男に仕えているのか…私にはさっぱり分からない。
今のところいじめはされてないけど、悪口・陰口は当たり前。
そんなのに負けてたら社長令嬢なんてやってられない。
こんなときいつもならそう思えるのに…。
レオンがいなくなってからというもの、私は精神的に弱くなっている部分がある。
はぁ…。ダメだわ。しっかりしなきゃ。
「皆さん席についてください。今日は授業を始める前にお話しがあります。」
お話…?何かしら。
「このクラスに転校生が来ることになりました。」
転校生…?この時期に…?
「さぁ、入って。みんなに自己紹介してください。」
まぁ、私には関係ないか。転校生なんてどうでもいいわ。
「初めまして。犬瓦 玲音と言います。よろしくお願いします。」
れ…おん…?
なん…で?
一瞬でレオンの笑顔が脳裏によぎった。
でも違う。この人は人間、私の親友は犬だわ。
本当に私は精神的にまいっているのね…。
「犬瓦君の席は天乃城さんの隣よ。」
「はぁ~い」
第1話はここで終了です!
第2話ではレオンと麗華が急接近!!
そして2人の仲をよく思っていない人物の登場も…。
第2話もぜひご覧ください!