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僕のお姫様

作者: 真彦

白いカーテンに囲まれて、今日も僕のお姫様はそこにいました。


揺れる隙間からは、悲しげな貴女の顔。この扉を開けて、僕が貴女に挨拶をすれば、その気持ちは消すことができますか。きっと、貴女はこちらへ振り向くことでしょう。女神の瞬きのように、ふわり、と髪を耳にかけるあの仕草は、きっと私が喜ぶことを知っていてやっているに違いありません。


今日は貴女はずっと眠ったままです。透ける睫毛が美しいので、今日も話しかけずに見つめています。そういえば、貴女は人見知りのようですね。今朝、偶然廊下ですれ違いましたよね。あの時、何故貴女は何も見ずに、何も言わずに通り過ぎていったのですか。少し、悲しかったのですよ。大勢の人に囲まれているとはいえ、声くらいはかけてくれてもいいのではないでしょうか。まぁ、もう過ぎたことですので、これ以上小言はよしましょう。


おや、ご家族の方々がはいって来ました。これでもう、寂しくはないでしょう。玩具が高い音で、ピーピーとうるさい音を出し始めました。お母様がこの音を聞いた瞬間、泣き出してしまいました。その肩を掴み、お父様も苦しそうに目を伏せています。何故でしょうか。ああ、もしかして、その玩具が壊れてしまったのですか。だから、それで泣いているのですね。人には人の大事な物があります。それを失ったお二人は今、悲しみの深みに落ちていくような気分でしょう。可哀想なお人だ。


ああ、私もあの白く滑らかな貴女に触れてみたいです。もう少しで我慢はきかなくなるほどです。なんて、美しいんだ。なんて、艶めかしいんだ。貴女の温かい柔らかな唇に、私がキスすると、貴女は頬や耳までもを真っ赤に染め上げるのです。そのかわいらしい様を、今、見たくなりました。


すっと扉を開けて貴女のもとに歩いています。待ってて、僕のお姫様。君を幸せにしてあげます。君のそばに手をついて顔を近づけると、お父様が僕を抑えました。そういえば、挨拶はまだでしたね。ですが、失礼とはわかっておりますが、今はどうしてもお姫様にキスがしたいのです。


お父様の手を振り払い、貴女の唇に僕の唇を、重ね合わせました。おや、今日はすぐには赤くなりませんね。機嫌を損ねられているのですか。では、もっと赤く染めて差し上げます。私は貴女の舌を弄びました。どうですか、いつもの貴女ならもう、立つことはできないでしょう。ところが、貴女の肌は絹のように白く、さらさらしたままでした。


もしかして、体調が優れないのでしょうか。確かに、いつもより肌の温度が低いようです。では、日を改めることにします。具合が悪いのに、申し訳ないことをしました。そう言うと、私はいつもより冷たい唇にキスをひとつ、おとしていきました。

わかりましたか?

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