世界の記憶。
PV2000HITありがとうございます。
「それが……たぶん、あなたに見つかる前の最後の記憶です。」
パチンと音をたて火の粉を天へと飛ばす炎を見つめながら、俺は今までのいきさつをかすれてうまく出てくれない声でなんでか必死に炎を挟んで反対側にいる女性に話していた。
こんなに多くのことを他人に話したのは、すごく、久しぶりな気がする。でも……
気がついたのは、今から半刻程前。
鉛でも張りついてるかのように重い瞼をやっとのことでこじ開けて見えたのは、小さく紅く揺れる火と、名も知らない女性。
そして、少し目線を外せば、広がるのは世界を飲み込むような深い深い闇、しかし、目が暗順応をすればそこには儚いながらも数多の星の焔が揺らめいてみえる、街道から少しはずれた野営地。
そう、現代では、少なくとも日本では全く見ることの無くなった街道と野営地にいた。
最初は、また夢でも見てるのかと思った。
あまりに現実的に非現実だったから、そう思っていたかったのかもしれない。
でも、身体に残るじくじくとした違和感がこれは夢でないと告げていた。
身体に魂が定着していない、理屈じゃなくそう分かってしまった、この体は俺の形をした別のものだと。色も世界も内臓も脳みそもすべてひっくり返って、また裏返して、すべてが同じで違うのだと。
そこからはもう記憶が曖昧で、きづいたら色々と一方的にしゃべって今に至ってる。たぶん、パニックになってたんだと思う。自分が自分じゃなくなった気がして、確かめたかったのかもしれない、俺は俺なんだと。
でもさ、うん、気づいたと思ったら急につらつら身の上を話す人って・・・しかも、体に触れてる布の感じからしてなんも着てないっぽいし。この状況はたから見たら・・・
「確実に変質者だよなぁ・・・」
とため息をこぼしたら、どうやらそれまで聞こえていたらしい。
「ふむ、なにが変質者かは…なんとなく想像はつくけど、そう思い当ってるなら問題ないんじゃないか。まぁ、とりあえず落ち着いたようだし自己紹介でもしとこうか、あたしは柚葉。藤原柚葉、だ。名無しのごんべえの変質者くん。ああ、辛そうだからそのまんまでいいさね。動かれても困るし、おもに君が。まぁ、聞きたいこともいろいろあるだろうけど、とりあえず一服させてな。」
いままで焚き火の向こう側で身じろぎひとつせずにこちらの話を聞いていた柚葉は、おもむろに懐からたばこをとりだして口にくわえると、そういって先端に手を添え、指先に陽炎のようなものが揺らめかせ、次の瞬間に起きた火花によって火をつけた。なんでだかさっきから体がとてつもなく重いから起き上がらなくていいのはすごくうれしいんだが、さりげなく目の前で起きた不思議な現象に
「今の……どうやったんですか?」
何となく予想はついていたけど認めたくなかったからか、思わず聞いてみたら、それは一番返ってきてほしくない答えだったようで、柚葉は、まるでため息をはくかのようにタバコのけむりをを大きく吐き、空を見上げてぼそっとこぼした。
「やはり、そうか……でも、その聞き方から察するに、何となくはわかっているんだろ?たとえ君の世界であり得なかったとしても。」
ああ、わかっている。解ってしまっている。
有り得ない。否、あり得てほしくないという願望だ。
でも、俺はこの感覚を知っている。あぁ、そうとも知ってしまている。魂の根本に刻まれている、アカシックレコードの中に。
かのルシフェルが歪ませた世界の法則。
そして、その体を示す言葉は、茫然自失となった響の口から零れ落ちた。
「…魔法。」
小さいころにあこがれ、今だにモノガタリに求めるそれは、しかし、今いるこの世界が響がいた世界でないことの証明だった。
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あのあと、この世界についてと魔法における召喚の可能性をかいつまんで説明し、ひと段落ついたとこで今は処理しきれてないだろうからと落ち着くための時間をとっている。
聞こえていたかどうかは定かではないが。
あたしの推論が間違っていないとしたら……まぁ、この反応は妥当なとこか。
一応行動捕縛の魔術もまだかけてはいるが、しかしあっているとしたら何でまたこんなとこに喚ばれてきたんだ?
今この世界で『扉』の鍵を持っているのはあの子だけのはずだから絶対座標を間違えるような失敗はないだろうし、だとしたらわざわざここに落としたってことになるが、そもそも近々誰かを喚ぶなんて聞いてない。
とすると、さっきのこいつの話も参考にすれば考えられる可能性は―――――――
あたしが調査に出てからこの半年で異常について何かつかんだが、あたしを呼び戻す前に何らかの事情でよばないといけない状況に陥いり、しかも、あの子が自分のところにこいつをかくまうほどの余裕がなかった。てことは、誰かに襲撃されたか。まぁ、桂がついていれば大丈夫だろう、繋鏡の珠にも変化がないし。
とりあえずは、現状維持、か。
煙草の煙をくゆらせながら状況整理をしおえ、そういえばまだ名前を聞いてなかったと思いだす。あれだけつらつらしゃべっておいて名前が出てこなかったというのもいくぶん不思議なことだが。いや、しゃべっておいていうのは語弊があるか、魔法でしゃべるように誘導したのだから。まぁ、動揺してるときじゃないといまいち効果がないのが玉に瑕だけど―――そんなことを思い、焚火の向こう側に目を向けると時間がたって幾分落ち着いたのか、こちらを見て何か聞きたそうにしている男の子と目が合った。
「…どうかした?」
なんというか、そんなつもりはないんだろうがじっと見つめられるのは何となく気恥かしかったりする。
「いや、焚き火のせいなのかどうかわからないけど、顔よく見えないから何でだろって思って。一応視力は両目とも2.0のはずなんで…もしかして魔法ですか?」
「ああ、君を見つけた状況が状況だったからな、一応認識疎外と行動捕縛、それと言霊限定をかけさせてもらってる。わるいな。」
忘れてたけど。なんてことはもちろんいわない、というか言えません。おもに、年上の見栄とか意地とかその辺にかけて。しかし、やっぱり意外と観察力があるんだなと感心する。さっきのことも、さりげなく魔法で火をつけたことにも気づいていたし。今回のも、焚火の陽炎を媒介として認識疎外をかけたからきづかないと思っていたんだけど。
「いえ、そこはべつに…自分も、裸で外に人が倒れている状況だったらそうすると思いますし。むしろ、助けていただいてありがとうございます。」
といって、名無しのごんべえは行動捕縛のせいで身体がとてつもなく重いだろうに起き上がり丁寧に頭を下げた。というか、いい加減名無しのごんべえもめんどくさい。
「いや、そんなことないよ。どうやらこっちの事情で巻き込んじゃったみたいだし……まぁ、そこのあたりは後で詳しく話すけど。とりあえず、名前教えてくれる?」
「あ、そういえば、まだ自己紹介してなかったですね。俺は、時音響です。」
「そっか、響。よろしく!と、じゃあ、術外すからちょっとじっとしててくれ。あ、あと敬語止めて、あたしそいうの苦手なんだ。さてと―――『術式解除』―――ほい、解けたよ。これでもう不自由はないはずだけど…って、そんな驚いた顔してどうした?」
それはもう、顎が外れそうなぐらいあんぐりされたら誰でも気になるだろう。しかも、こっちの顔を見たとたんだとしたらなおさらに。
というか、女性の顔を見て驚愕するとは失礼なやつだな。
とか思っていたら、次の瞬間に上がった叫び声にびっくりしたのはこっちだった。
「冬華先生〜〜〜!!!!!!!!??」
「・・・ほぇ?」
口からタバコとともに零れ落ちた言葉は、あたしの心境を雄弁にもの語たっていた。
こんばんは。
何というかあと五分で日付が変わろうとしている時間帯に今晩はもどうかと思ったりするのですが。
まあ、その辺は置いといて。
ペンネーム、じぇらふ。改めくらあいです。
よろしくお願いします。
今回は、だいぶ大きく改定を行いました。何というかもう話の筋が変わってしまうくらいにorz
そこはご容赦をお願いしたいです。
あと、メッセージと評価もらえるとすごくうれしいです。
ではでは。
あとがきのP.S.
ブログ開設しました。作者紹介の所から行けるみたいです(←この辺のことは初心者すぎてよくわかってない;;)
日常的なことと小説の更新告知とかをする予定です。
お暇があれば来てくれると嬉しいですw