クソ野朗、依頼を受ける
ギルド職員が押し付けてきた依頼書は全部で三つ。
一つ目の依頼は……薬草の採取。
王都から徒歩で二時間ほどの場所にある森で、回復薬に必要な薬草を、十束採取する依頼らしい。
報酬は……ショボイな。
せいぜい、安宿一泊ってとこか。
ん〜、この依頼はないかな。
報酬が安すぎて、これだけじゃ日々を生き抜くだけしか出来ん。
何より、天剣の力を試せねぇし。
二つ目の依頼は……魔物の討伐。
この依頼は、先程の依頼と同じ森で出てくるスライム三匹を討伐する依頼だ。
報酬は……一つ目よりマシな程度。
この依頼は、天剣の力を試すって意味じゃ良いな。
スライムなんて最弱の魔物相手なら、戦闘経験があんまり無い俺でも、余裕を持ちながら戦えるわ。
ただ、相変わらず報酬がな〜……まあ、三つ目の依頼を見てから決めるか。
三つ目の依頼は……荷物の配達。
王都から森へと行く方向の反対にある村に、小包みを届ける依頼だ。
報酬は……おっ?一番いいな。
安宿三泊くらいは出来るんじゃないか?
ただ問題として、荷物を届けるのに往復、二日くらいかかる。
これだと、村で一泊しないといけない。
時間がかかる上に、村までの道は安全な為、魔物が出て来ず、天剣の力を試せない。
……報酬はいいけど、一番この依頼は無いな。
うーん……どれもイマイチだな。
もっと報酬がいい依頼は無いのか?
できれば、魔物の討伐などの天剣の力を試せる依頼がいいんだが。
「すまない。もっと報酬がいい依頼は無いか?できれば、討伐系の依頼がいいのだが……」
「すいません。これ以上の報酬の依頼となると、ランクを上げて頂く必要があります」
「ランク?」
なんだそれは?
「ああ、説明しますね。ランクとは冒険者の強さ、依頼の達成率などを基に決められるものです。最初がFランク。次がEランク。それからはD、C、Bとランクが上がっていき、最も高いランクがAランク、となっています」
「なるほど。つまり今、俺はFランクということか」
「そうなります。そして冒険者は、それぞれのランク以下の依頼しか受けられない決まりになっています」
「……となると、Fランクの自分は、この依頼の中からしか選べないと?」
「他の依頼もありますが……この依頼と、ほとんど変わり無いかと……」
おいおい、マジかよ。
ランクを上げないと、このレベルの報酬しか貰えない依頼しかないのか。
これは早めにランクを上げるようにしないとな。
今回は、仕方ないからこの中から選ぶが……うーん、やっぱり二つ目か。
報酬そこそこで、天剣の力を試せる。
これが一番いいか……ん?ちょっと待てよ?
俺は二つ目の依頼を受けようとしたが、ある事を思いついた。
「聞きたいんだが、この採取と討伐の依頼、両方を同時に受けることは出来るのか?どちらも同じ森での依頼なのだが……」
「はい。それは可能ですよ」
よし!いけた!
この二つの依頼を同時に受けれれば、少し時間はかかるが、報酬は二つ分貰える。
同じ場所での依頼だから、一緒に受けられないかと思ったのだ。
二つ同時に受けられるなら、さっさと受けて森まで行こう。
行くまでに二時間もかかるからな。
「じゃあ、この二つ両方の依頼を受ける」
「分かりました。受理しておきますね」
「それじゃ、依頼に行ってくる」
「はい。初めての依頼、気をつけて行動して下さいね」
「ああ」
俺は窓口から離れて、冒険者ギルドの出入り口へと向かう。
さて、金稼ぎと天剣の力を試しに行くか。
●●●●●
私は、窓口の係りを別の人に変わってもらい、ギルド長の元へと来ていた。
理由は、先程私が担当した新人冒険者について話したいことがあるからだ。
「それで、話しがあるって言ったけど?何かした?」
「実は……先程、新人冒険者の登録を行ったのですが……その時、魔力を調べる球が」
「球が?」
「白く……輝いたんです」
「ほ、本当かい⁉︎」
「は、はい」
私が球について報告すると、ギルド長は座っていた椅子から立ち上がり、驚いた。
それも無理ない。
魔力を調べる球が白く輝いたという事は……。
「まさか、神剣に選ばれる者が現れたと思ったら……天剣に選ばれる者まで現れるとは」
天剣に選ばれた者の証なのだから。