クソ野郎、冒険者となる
冒険者登録をするため、スラム街から冒険者ギルドへと移動する俺。
途中で出会った見回りの衛兵に、剥き出しの剣を手に持って歩くなと注意された。
クソッ!仕方ないやん。鞘なんて無かったんだから!
しかし衛兵の注意も最もか。
街中で剣を剥き出しで持ってたら、誰かに当たるだけで怪我をする可能性もある。
もし誰かを怪我をさせたら面倒だからな。どうにかしないと……。
武器屋で鞘でも買うか?
いや、でも金なんてほとんど無いし……。
「……布で包んでおくか」
懐から布を取り出し、軽く刃の部分に巻きつける。
よし。これで、当たっただけで怪我させるなんて事にはならんだろ。
さっさと冒険者ギルドに行くぞ。
と、言うわけで冒険者ギルドだ。
ん?道中はどうしたって?
なんも無いからカットだ!カット!
とりあえずあの後は何事もなく、道に迷う事もなく冒険者ギルドに着けたんだが……。
なんか俺の知ってる冒険者ギルドと全然違うんだけど?
なに?冒険者ギルドって、木製で出来た小さな平屋みたいのじゃなかったか?
何これ?
シミ一つ無い綺麗な白壁。
見る者を圧倒する三階建ての高さ。
多くの者を迎えられるように、出入り口の扉が三つ。
誰が見ても冒険者ギルドと分かるように、大きな文字で『冒険者ギルド』と書かれた看板。
……もう一度言う。何これ?
えっ?お前ふざけてんの?
これが冒険者ギルド?
おい!じゃあ、地元の冒険者ギルドなんだよ⁉︎
ただの掘っ建て小屋じゃねぇか‼︎
か〜〜‼︎王都だからって豪華にしてんじゃねぇよ!冒険者ギルドめ!
あれか?重要なとこの冒険者ギルドは豪華にして、他のど〜でもいい所は適当に作ってんのか?
クソ野郎だな‼︎
「今から冒険者登録するわけだが、冒険者ギルドが嫌いなったわ……冒険者になっても、ギルドとは絶対仲良くならん!」
ギルドと親密にならない事を決めた俺だが、冒険者にはならないといけないので、ギルドの中へと入っていく。
ギルドの中には、腰や背中に武器を担いでいる、いかにも冒険者といった格好の奴らで溢れていた。
「さて……冒険者登録はどこですればいいんだ?」
出入り口から少し離れた場所で周りを見渡すと、冒険者の対応をしているギルド職員を見つけた。
ちょうど対応が終わったようだから、登録場所を聞くか。
「すまん。そこのギルド職員の人」
「はいはい。何でしょうか?」
「冒険者登録をしたくて来たのだが、どこですればいい?」
「ああ、登録ですね。それでしたら、あちらの窓口で対応しています。窓口で『登録がしたい』と言えば、登録が出来ますよ」
「そうか。ありがとう」
「いえいえ。これから冒険者として頑張って下さい」
「ああ」
ふむ、あそこの窓口か。
ギルド職員に教えてもらった窓口へ行くと、少し列が出来ていたので、それに並んで自分の番が来るのを待つ。
そこそこ時間がかかるか?
……五分経過。
「次の方、どうぞ〜」
以外にも直ぐに自分の番になった。
ラッキーだったな。
「冒険者登録がしたい」
「冒険者登録ですね。それではこちらの紙に、登録に必要な情報を書いてください」
「わかった」
ギルド職員から受け取った紙に、備え付けられていたペンで情報を書いていく。
名前……クエス・クソ
性別……男
年齢……18歳
書くのこれだけか。簡単だな。
ペンを置き、紙をギルド職員へと渡す。
「書いた」
「はい。じゃあ確認しますね……クエス・クソさん。男性。18歳で間違いないですか?」
「ああ」
「はい。では、最後にこちらの球に手を触れて下さい」
「……これは?」
ギルド職員が俺の目の前に出したのは、透明な水晶球だった。
これに触れろとはいったい……?
「こちらの球に触れると、触れた人の魔力を記憶しておけるんです。今後、クエスさんが依頼を受ける際や依頼達成の際には、こちらの球で本人かどうかの確認を行うんですよ。ちなみに球は各地のギルドにあって、情報は共有されているので何処でも確認はできるんです」
「なるほど」
随分と便利な道具だな。
これがあると、他人に偽装して依頼を受けるなんて事が防げるわけか。
んじゃ、どういった物かも分かったし、触れるか。
ピトッ、とな。
うお〜、触れたら水晶が白く光った。
これで、魔力を記憶してるわけか。
「えっ?……えっ?」
「ん?どうかしたのか?」
「あっ!い、いえ!何でもないです!」
「……?」
「と、とりあえず!これでクエスさんの登録は完了しました!直ぐに何かの依頼を受けますか!」
「あ、ああ……」
「では、こちらなど如何ですか!」
な、なんだこの職員?
露骨に動揺してやがる……!
今の球、なんか変だったのか?
凄い、気になる。気にはなる……のだが。
このギルド職員、目で威圧をかけてきやがる……!
絶対に話さん!って感じの目だわ。
おまけに、さっさと依頼を選べとばかりに、依頼書を手に持って、こっちにグイグイ押し付けくるし。
…………チッ!仕方ない。今回は引き下がろう。
下手に突っかかって、悪印象を持たれるのも、今後の冒険者活動に影響するからな。
話しを聞くのを諦めた俺は、押し付けられていた依頼書を手に取り、依頼内容の確認をする。
えっと……なになに?
次も多分、1週間後です。