クソ野郎、天剣を手に入れる!(あらすじ)
異世界『ヴェール』は、今窮地に襲われていた。
500年前に討伐した魔王に代わる、新たな魔王が生まれたのだ。
これにより、『ヴェール』では各地で魔物が増殖、凶暴化。
世界は魔物の脅威に怯える事となった。
そんな中、一人の救世主が現れた。
救世主の名前はセイル。大国『リギス王国』の片田舎に住んでいる青年だ。
彼は、観光で訪れていた『リギス王国』の王都で、中心街広場にある宝具……神剣を台座より引き抜き神剣に選ばれると、平和を取り戻す為に魔王を討伐すると決意。
自分と同じく王都に観光に来ていた幼馴染、義妹、従姉妹と共に、魔王討伐の旅へと出発していった。
それが今から2週間前の出来事。
旅に出た救世主一向は、順調に魔王の元へと向かいながら、各地で魔物たちを倒しているらしい。
このまま彼らは無事に魔王を討伐できるか?というのが、最近の王都の話題だ。
……どうでもいいわ!
「んなの知るか。バカ!バーカ!あのクソ野郎が!何でいかにも『ザ・平凡!』な見た目のお前が神剣に選ばれてんだよ!俺が神剣に選ばれろよ!クソッ!神剣に選ばれたらハーレム作りながら俺tueeeee!!して、魔王倒す予定だったのに!ファック!」
一人、声を荒げて騒いでいる俺の名前は、クエス・クソ。『リギス王国』の弱小貴族の元に生まれた三男坊だ。
俺は王国が魔王討伐のために、神剣を引き抜ける者を探していると聞き、わざわざ辺境の領地から王都まで来訪。
王都に着いた瞬間、神剣を引き抜きにかかったんだが……抜けなかった。
もう何しても抜けなかった。
手で引っ張ったり、紐を身体と剣に括り付けダッシュしてみたり……あげく、台座を破壊して神剣を引き抜き(引き出し)にかかったら、周りの衛兵に止められて、中心街広場に立ち入り禁止になった。
解せぬ。
俺は、ただ神剣を引き抜くのに必死だっただけなのによ!
しかも、俺が引き抜こうとした翌日にアイツが引き抜きやがったし!本当にクソだし、ムカつくぜ!
「クソ……って、あん?ここ、スラム街じゃん」
ムカついて歩いてたら、王都でもそこそこ危険なスラム街に来ちまった。
まあ危険といっても、スラム街の奥の衛兵の目が届かない場所だけだ。
俺が今居るのはスラム街の浅い場所。危険な目に合うなんてそうそう無いと思う。
でも、さっさと中心街に戻るか。俺、強くなんて無いし。
……って、あれなんだ?なんか剣が地面に刺さってるけど?
近づいてみると、剣の横にボロい看板があった。えーと、なになに?
……天剣?天界より授けられた宝具?
あー、つまりコレは、あれか。
「神剣の劣化版じゃん!使えないな!」
あー、使えないから王国もしっかり管理しないで、スラム街の入り口なんかに放置してんのか。
ハハッ!惨めな剣だな、オイ!
しかも神剣みたく台座に刺さってるんじゃなく、地面に直接かよ!
ゲシッ!
カランッ。
…………は?え?ノリで天剣を足蹴りしたら、なんか地面から抜けたんだけど……え?これって、俺が天剣に選ばれたの?
「……劣化版に選ばれても意味ねーよ!」
どうせなら神剣に選ばれろ!クソッ!
……まっ、一応貰ってくがな。
だってこんな所に、雑に刺さってたとしても、天界の宝具なんだからそこら辺の武器よりは強いはずだろ?
ハーレムや俺tueeeeeは出来なくても、冒険者でひと山当てるくらいは出来んだろ。
どうせ辺境に戻っても、魔物が沢山いるわ、領民からは愚痴言われるわ、両親や兄弟からは厄介者にされるわ、の日々が待っているだけだから帰りたく無いし。
そもそも王都に来るのと、今までの生活費で金はほぼ使ったから、金はどうにか稼がないといけなかった為、丁度良い。
と、言うわけで……冒険者登録するか。