第1節 魔女の一日と追想午前の部
二章スタートです。
木々の緑が濃く茂る神の季節も終盤、四季がもう直ぐ実りの季節へと移り変わろうかと言う頃、デルファーニア国の北西に位置するレザーヌ領の北方を何故か実質牛耳る事になってしまった白亜の屋敷の主人である私、トーコ・D・ウェネーフィカは、執務机で姿勢を正されていた。
(失敗した……)
目の前の応接セットには使用人であるミィ・F・ウェネーフィカ、ホノライ・F・ウェネーフィカ、ノハヤ・F・ウェネーフィカ、そして私の精霊である山吹が座っている。その周りには蘇芳、萌黄、紅が好き勝手陣取り、最後に私の背後に瑠璃が立っていた。
(外はこんなに晴れてるのに)
夏が終わるとは言え、まだ大樹の光は燦々と執務室に降り注ぎ、温まった背中から溶けて眠ってしまいそうになったところに瑠璃からの注意が入ったのだった。
(何処で間違ったのかしら)
私はこの世界に来て、森へ引き籠った筈だった。こちらに知り合いはいないし、ここの領主にも半ば力づくで近づくなとお願いした。
だから私は暫く自由だと思っていた。
(これは想定外過ぎる)
無知は罪、基、情報は力。足りなければ殺られるだけだと身に染みて、皆で勉強する事にしたのは良い。
思ったよりと言うか予想通り、覚える事は山の如く多く、学生の時より余程必死に勉強しなければならないのは命がかかっているから仕方がない事だとは思う。
それに生きていく為に生産活動をしないといけないのも分かる。ましてや使用人である彼等は、私が雇用契約時に言ったホワイト企業の「一の鐘で起床、二から四の鐘まで働けばその後は自由時間、五の鐘で就寝」という定義以上に働いている。
(いつか雇用契約違反だって訴えられるかも)
確かにホワイトな企業でも、九時始まりなのに朝礼が八時五十分からある――十分前に来いとか言うから結局八時四十分出勤かよ――とか、定時が五時なのに窓口も五時まで開いている――その後事務処理と片付けがあるのに残業代は?――とか、疑問に思う習慣や風習は沢山あった。
しかしまぁ、それくらいなら我慢しよう。本当は若干腹が立つが。
それより大きな問題が発覚した。私はあれから一週間以上が過ぎ、気付いてしまったのだ。
(休みがない!!)
そう、ここには休日と言うものがなかったのである。それがまさか我が身にも降りかかって来るとは思いもしなかった。私にとって休日と言うものはあってしかるべき。よもやない等とは思いも寄らなかったのだ。
だからついつい言葉に出てしまったのは仕方のない事だと思う。
「休みたい……」
会議中に「休みたい」などと発言したのは失言だったと認めるけれど。悪い事は正してほしいと思っている主の気持ちを正確に汲み取って、精霊達が注意してくれる様になったのも嬉しいけれど、でも。
「ちょっとくらいダラダラする日があっても良いと思う」
娘や幼い妹を見る様な好意的な使用人達の視線とは裏腹に、精霊達の冷たい目と言ったら。
「為政者に休みなどある訳ないではないですか」
爽やかな笑顔で瑠璃がそう言う。
別に為政者になった覚えはないが、確かに良い経営者に、お手本になる良き主になりたいとは言った。
(でもそこまで正確に実行しなくても……)
「トーコ様が皆より良い生活を送っているのは、その分責任を負っているからです」
何処でそんな人間社会の知識を仕入れて来るのか、続けて山吹に尤もらしくお説教される。
そんな事は分かっている。ただ私はブラック企業で過労の上事故死し転生した訳ではなく、カレンダー通りの年間休日に毎年四十日前後は有休を消化すると言うホワイトな企業で普通に勤めて来たOLなのだ。
(だから週休二日を求めるのは罪じゃないのよ)
まぁここの一週間は五日しかないので二日は休み過ぎな気もするが、私が言いたいのはそう言う事ではない。
従業員は皆何の疑問も抱かずに毎日文句も言わず良く働いている。もしかして不満が溜まっているのではないかと怖くなって来た私は、きちんと最初に提案した。
「光の日くらい休みにしない?」
「急にどうされたんですか?トーコ様」
喜ばれるかと思ったその提案に、目をぱちくりとさせ従業員達が此方を向く。
「休日、欲しくない?」
「休みの日、と言うと、その日の食糧は前日に調達するのでしょうか。狩りが二倍になるのはちょっと」
「調理も片付けも毎日少しずつやった方が楽なのですが」
「訓練を一日休めば身体は三日後退する。農作物を放って置く訳にもいかんだろう」
「自由時間も頂いているのにそれ以上は必要ございません」
そしてその上司に当たる精霊も笑ってこう言った。
「トーコ様、警備に休みも何もないですよ~。光に還りたいんですか~?」
今まで苦情も質問も出なかった訳である。この世界の住民に休日と言う概念がなかったのだ。
それは精霊達にも当てはまる。生命の誕生や維持にそもそも休日など存在しない。
「トーコ様、聞いていらっしゃいますか?」
「はい、聞いてます」
「言葉遣い!」
瑠璃にぴしっと水の物差しで背中を叩かれる。別に痛くはないが、本当に精霊達は一体何処でそんな知識を仕入れて来るのか謎である。
「聞いてるわ。今日はエルザーニスがアルゼンナーエへ着く頃で、明日はヤトーとの面会ね」
宜しい、とでも言う様に瑠璃が微笑んだ。
エルザーニス達と別れてからの規則正し過ぎる生活を思い直し、私は密かに溜息を吐く。
私は今朝もまた、いつもと同じ様に山吹に告げられた予定を思い出す。
「トーコ様、おはようございます」
「…………おはよう」
今朝も鐘の音と共に私に声をかけたのは瑠璃だった。介護かと言わんばかり背中を支えられながら身を起こし、背中に沢山クッションを挟まれてもたれかかると、何故か私のベッドの中にいる萌黄が悩殺の笑みでこちらを見上げ、毛布の中で私の太ももに手を置いて可愛らしい唇を開いた。
「おはようトーコ様。今日も素晴らしい一日だね」
(駄目になりそう……)
人として。
私は萌えに耐えながら萌黄の頭を撫でる。気持ち良さそうに目を細める美少年があられもない姿でそこに横たわっている。
もう何日もこんな日が続くから、萌黄が同じベッドで寝ている事は諦めた。
(あー天使……)
決して一人の従業員を特別扱いしている訳ではない。だって寝る時は別々なんだから。
なのに何故か朝起きると隣に寝ているのだ。一体いつ入り込んでいるのか、私の記憶にはない。
「本日の紅茶はアッサム風です」
瑠璃の言葉で、柔らかい萌黄の髪を梳いていた手をカップに伸ばす。ここには美味しい茶葉がないので、森の葉っぱを摘んで似た様な味のものを瑠璃に研究させ作ってもらっている。
お茶の準備をするのはミィだ。彼女は私が起きる前には起き、準備を済ませて待っている。そして準備したものを瑠璃に渡すといつも私の部屋から退出してしまう。以前誘ってみたのだが、これから朝食の準備があるのだそうだ。
(朝のお茶一つとっても、私は人にしてもらう事ばかりね)
なので私はこのセレブ風な朝のお茶の時間を、森へ食材調達に行っている紅以外の精霊達と共に過ごす。
私がお茶を飲みつつ萌黄の誘惑から目を覚ましている間に、最近家令の真似事をさせている山吹から今日の予定が告げられる。
「本日のご予定ですが、この後身支度を済ませて朝食の後二の鐘から座学、教養をホノライより学びます。その後蘇芳監督の元基礎体力作り、休憩のティータイムを挟んで瑠璃より神力調整の練習、その後瑠璃と萌黄と私による神法の実践練習、蘇芳と紅の実戦練習を挟んで三の鐘から昼食、午後は四の鐘まで明日のヤトーとの面会に備えて打ち合わせです。それから少し休憩を取って夕食、食後の自由時間を経て、本日は瑠璃とお風呂、その後就寝でございます」
休憩時間と言ってもほんの十五分とか三十分程度のもので、自由時間も体感で二時間程だろうか。娯楽と言えばオセロや将棋や囲碁を作ったくらいで、後は専らミィや萌黄を愛でつつ座学の復習をする時間に当てている。
兎に角学生や社会人時代より遥かに休む時間がないと私は思う。
この予定が大きく変わったのは木材団地に商隊が来た日くらいである。それでもやる仕事が変わっただけで、休む時間は寧ろ減るのだ。
「ではそろそろお支度致しましょう」
瑠璃に言われて飲み終わったカップを返すと、カップはそのまま蘇芳の手に渡り寝室から下げられていった。
因みに食器は、私の「物は神法以外の実物が良い」と言う発言の下、ミィやノハヤによって付近の木から作られている。個数が増える度に上達しているのが伺えてなんだか微笑ましい。
これはカップに限らず、家具も小物も全てに渡り、私は職人の内製化を進めていた。家は兎も角、紅にも彫金等を勉強させている。神法で形を変えたものであっても、この大地の様に自力で形が固定されるものに着いては形状を維持出来る。金属などはそのいい例だ。
物を自前で調達出来れば買わなくて済む。
(お金の心配をしなくて良くなるし、何より人に合わなくて済むのよ!!)
完全な引き籠り思考である。
私は瑠璃に神法で洗われ萌黄にふんわりと乾かされると、上等なドレスに着替えさせられた。私の事務仕事や打合せ中に萌黄が服を作っているのだ。それも植物から糸を生成するところから。風を操って高度な事をしているので私にはとても真似出来ない。
身支度を終えて庭に出ると、東屋付近に皆が集まっていた。私の希望で、全員揃って朝食の時間である。
「頂きます」
私の言葉で皆がそれぞれ食前のお祈りを唱える。宗教を制限はしないので皆いつも通り神に祈りをささげているが、私は絶対あの神に祈ったりしない。私に倣って東屋のテーブルに座る使用人の面々も神には祈らない。
「「「感謝します、トーコ様」」」
その代わりに祈られているのは何故か私である。別に強制したつもりはない。寧ろ止めて欲しいと伝えたが、断固拒否されて定着してしまった。
神に祈っているのは東屋の北、ヨモギの遊び場に集まっているガダールを含む捕虜達である。ガダールも使用人扱いなので此方に誘ったのだが。
「そこまで高望みはせん。儂はあれらと同じものを食す」
と、スパッと断られた。
もしかしたら同じものを食べて捕虜の指揮を上げたかったのかもしれないし、その間に情報交換をするのかもしれないが、それならそれで構わない。彼は使用人だが捕虜だ。逃がすつもりはない。
食事を終えると私は授業の為の準備に入った。
と言っても執務室に戻って教本を開くだけだ。待っているとミィが教本を以ってやって来た。
「それにしても、本当に本を持てるなんて夢の様です」
元奴隷のミィは、本と言うものを始めて手にしたらしい。私にすれば授業に教科書とノートがあるのは普通なのだが、初日の授業は何と口頭説明のみで行われた。
結果、当然私は覚え切れず、初日に音を上げたのである。
「教科書が欲しい!」
出て来る単語や常識そのもの全てが未知の世界。それは覚える事が多過ぎた。
買っていた紙はあっという間にいっぱいに書き尽くされ、白い部分は疾うになくなってしまった。そもそも慣れない羽ペンで、まとまった綺麗な字を素早く書く事は出来ない。ミィも文字を書く事が苦手らしく、書き取りは遅々として進まない。
「トーコ様、本は高いです。ここにはありませんし……」
折角執務室の壁一面を本棚にしたのに、そこにはまだ何も入っていない。
「それに印刷技術は商業ギルドの専売特許です」
(また商業ギルドか……)
ちょいちょい出て来ては邪魔をしてくれる商業ギルドに苛立ち、私は言ったのだ。
「なければ作ればいいでしょ」
「そう申されましても、ノウハウが全くありません」
申し訳なさそうなホノライに、私はその日の夕食時に皆の前で本の作り方を提案した。
「先ず瑠璃やホノライ、ガダールの知識をホノライが紙に書き出して、次に瑠璃が文字以外の部分を水で覆って型を作る。そして紅が型以外の部分、つまり文字の部分だけを絶妙な火加減で燃やさない様に何枚か軽く炙って、出来たものを表紙を付けて和綴じする。どう?」
「水を型に?」
「紙を焼くんですか?」
「そうよ、文字の形に炙って、文字を焼き付けるの。出来る?」
要はステンシルを神法で行おうと言うのだ。理由は単純。早くて安上がりだから。
「出来ます!必ず期待には答えて見せますわ!紅もいいわね!?」
「は~い」
「そ、そう?じゃあ転写は任せるとして、閉じ方は……そうね、紐がいるけどどうしよう」
「でしたら森に丈夫な蔓がありましたので、朝食の狩りのついでに採って参りましょうか」
「細いのが良いんだけど……まぁ繊維が取れるか試すか。後は隅を補強するのにノリがあればいいけど、ご飯粒がないから何か粘り気のある食材で」
「食材!?食べ物を粗末にするのは感心しません!」
思えばこれがノハヤに注意された最初だったかもしれない。
食料が貴重な今言う事ではなかったと反省する。
「粘り気のある植物が森にありますので、それは私が採ってまいりますわ」
「そう?」
こうして瑠璃の重い忠誠と指導の下皆で素材が集められ、試行錯誤の上主に瑠璃とミィが翌日の教材を手作業で作成するに至ったのである。
針や千枚通しは瑠璃が神法で代用している様だ。武器になりうる危険物は形に残らない方が良いかもしれない。
「トーコ様、これはとても画期的な事です」
出来上がった教科書を見て、ホノライが興奮して震える様に言ったのを覚えている。
活版印刷が主流のこの世界では準備するものが少なくコストも時間もかからない上、インクが擦れたり滲んだりする心配もない。
「もし商売になされば現金収入に……」
「無理よ、ホノライ。誰がこんな芸当出来るの?」
「…………そうですね」
興奮するのも分からなくはない。しかし、そもそも文字以外の部分を覆い、粗悪な紙を燃やさない程度に文字通り焼き付ける様な繊細な神法の調整が人に出来るとは思えない。勿論私だって出来ない。
だからこの方法を普及するのは無理なのだ。
教本なら既に活版印刷の本が存在する。地球の歴史から考えるに、それは恐らく和綴じ本より現代日本に近い精巧なハードカバー本だろう。
そもそも私はこの世界の人々を豊かにしようとか、歴史を進めようなどと言う大それた目標も夢も持ってはいない。
「トーコ様?授業を始めますが、宜しいですか?」
教本に思いを馳せていると、いつの間にか教師役であるホノライが、今日の進度について山吹、瑠璃と打ち合わせを終えて執務室にやって来ていた。
「あぁ、ごめんなさい。初めて」
「では本日は此方を」
私は新しい教本を受け取って、見返す為に開いていた昨日までの教本を閉じた。
(ある程度集まったら章立てして一冊にまとめようかしら)
そんな事を考えつつ私とミィはホノライからこの世界の事を習う。前半の座学は平民が親から教わる様な事から神様の神話等まで本当にこの世界の基礎中の基礎、後半の教養は主に貴族としてのもの。
後半の教養にはノハヤも参加する。
それを山吹と瑠璃、そして萌黄に見守られながら必死で頭に叩き込む。授業のスピードはかなり早い。覚える事が多いのでそれは仕方がない。何せ知らない事が死に直結するかもしれない世界にいるのだ。それは必死にもなる。またエルザーニスみたいなのに目を付けられては敵わない。
(それに、無知で馬鹿な主人に仕える使用人程可哀想なものはないわよね)
母に振り回された子供時代を思い出して私はそう思う。母が馬鹿で無知だったかは分からないが、父親代わりの母の彼氏が何度も変わり、その度に振り回されたのは事実だ。
(…………今更ね)
考えるだけ無駄だ。もう過ぎた事だ。私は頭を切り替える。
座学が終われば今度は軽装に着替えて三十分程度の体力作りだ。
「トーコ様、遅い。もっと早く。ペースを乱さずに」
監督は鬼コーチの蘇芳。内容はほぼ屋敷の広場の外周を走るマラソン。でも大人になってから走った記憶なんてない。そんなインドアな私には地獄の三十分である。
前に一度、布の靴で大理石何て走りにくいと言ったら、あっという間に大地は土に変わりそこを裸足で走らされた。柔らかい肌は傷つき血が滲んだ。あれは痛かった。それでも悔しくて走り切ったら、蘇芳は事も無げに言ったのだ。
「山吹が直してくれます。一瞬ですよ」
あれから普段激甘な蘇芳が私の中で鬼コーチに変わった。
走り終わると午前中の休憩時間がやって来る。私はいつもそれを目標に必死で走る。横目にガダールと捕虜達が訓練する姿を捉えつつ、ゴールで待ち構える瑠璃に向かってひた走る。
そして漸くゴールで瑠璃に抱き上げられた私は、そのまま神法で洗われて東屋で束の間のティータイムを楽しむのだ。
朝と同様、お茶と簡単な焼き菓子を置いてミィは屋敷のベッドメイクへと行ってしまう。私はホノライと明日の座学の打ち合わせをする山吹を除いた四人の精霊に付き添われ短いお茶の時間を楽しむと、午前中後半戦へと向かった。
場所はヨモギの庭。ここでは瑠璃を教師に、戻って来たミィと、ホノライ、ノハヤと共に神力を調整する実技訓練を行う。
「じゃぁ皆パラソルに入って」
降り注ぐ大樹の光を私は神法のパラソルで遮った。
日焼けを出来るだけ防ぎたいと言う乙女心と、神力の器の小さい三人の熱射病の予防、それから複数の神法を操る為の訓練でもあるのだ。
「流石ですトーコ様」
「いつもありがとうございます」
使用人に感謝されつつ訓練に入るが、いつも先生役である瑠璃に注意されるのは私だ。
この授業は瑠璃の指定する大きさに神力を抑えたり流したり、他人や自分の器や精霊に干渉したり、まぁ個人にあった訓練をするのだが。
「トーコ様、神力が多過ぎます。それではアデルの指が切れますわ」
他人の精霊に干渉し、精霊の小指に神力の糸を巻き付けてそろっと呼び出す、と言う私への本日の課題で、さらりと瑠璃が怖い事を言った。
対象にされていたミィが慌てて自分の胸を押さえ、アデルが自主的に飛び出したところで瑠璃に溜息を吐かれる。
「あの、トーコ様、申し訳ありません!トーコ様は器が大きいですから、その、繊細な神力は難しいですよね!!」
確かに器が小さいもの程細やかな神力操作を得意とする。それは自分の神力を扱う時、全体の割合で力を判断するからだ。
例えば神力を百だけ使って神法を起こす時、器が二千のミィは力の二十分の一を注力する。しかし私は五千分の一という細かい力を引き出さなければいけないのだ。
それが分かっていても、アデルを呼び出した上で神力を操作するという課題に及第点を貰って喜んでいるミィに言われては面白くない。
「でもアデルを傷つけるのは止めて下さい」
(不器用ですみませんね!)
ミィにもはっきりダメ出しもされる。
器が大きくても心は狭い。私はお子様なのだ。本当に大人げないと思いつつも。
調整が一段落すると、今度はそれぞれの属性の精霊について神法の実技訓練を行う。訓練を行いつつ新しい神法を開発したりもする。
先生役を入れ替えながら、全員が自分の持つ属性を一通り習う。属性の少ないミィとノハヤは、ある程度終えると昼食の準備入る為訓練を抜けて行く。ホノライは私達の中では唯一戦闘力を期待されている使用人なので、私と同じ時間目一杯水の神法を磨く。彼と私の練度の差はこの時間のかけ方にあると思う。何せ私は同じ時間で五属性分訓練しないといけないのだ。
(器用貧乏ってこう言う事かしらね)
まぁ幅が広い方が応用が利くと私は思っている。
三の鐘が鳴った。漸く午前の部の終了である。
私はホノライと精霊達を伴って東屋に戻った。
6/4 誤字修正しました。




