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在りか ~私の居場所と異世界について~  作者: 白之一果
第1章 旅の始まり
47/67

第46節 奪われた神法と光の精霊

本日3節更新。このお話はその3節目です。

「どう言う事だ瑠璃!!」

「私にも分かりませんわよ!!」


 私を目覚めさせたのは、目も眩む程の光ではなく精霊達の言い争う様な声だった。

 まだ全く寝足りないと言うのに、この騒ぎは何だろう。それにこの光は一体。

 目を閉じているのに物凄く眩しい。


「瑠璃?蘇芳?そこにいるの?喧嘩?」

 

 寝起きのぼーっとした頭で、未だ見えない従者を呼ぶ。


「トーコ様!動かないで下さい!!」


 直ぐ傍で、今まで聞いた事のない焦った瑠璃の声がした。


「蘇芳!ミィ達を!!」

「分かっている!!」

(何?何か起こってるの?)


 薄く開けた目で見えたのは視力を失いそうな強い光。眩し過ぎて直ぐに硬く目を閉じる。


「トーコ様、失礼致します!!」


 瑠璃に抱き上げられる感触。


「ねぇ、何この光」

「分かりません!それより神力が……お屋敷が!!」

「屋敷が?どうかし……」

「崩れます!!」


 瑠璃の良く分からない答えと共に、落下する様な衝撃があった。


「何!?」

「お屋敷が崩壊しました!大気の神力とコンタクトが取れません!」

(え?何それ、どういう事?屋敷が崩れる??蘇芳は何して……)

「蘇芳!ミィ達は無事!?」

「…………無事だ!!」


 離れたところから蘇芳の声がする。


(そうだ、地下!)


 捕虜を説得する為、三人は地下牢の前にいたのだ。蘇芳が神力をコントロール出来ず屋敷が壊れたのだとしたら、地下は白い土の中である。

 一気に頭が覚醒する。


「ちょっと瑠璃!状況を説明して!!」

「あの鳥です。エルザーニスの鳥が戻って来て、空から光る神石を落としたのですわ!」

「鳥って伝書鳥!?」

「そうです!今その光がこの空間を包んでいます。神力と私達の間に割り込んで、コントロールを阻害しているせいで神法が発現しませんの!」

(何それ!!)

「辛うじてトーコ様の器と繋がってるけど繋げとくので精一杯だし!でもそれも切れそうなんだよ!!」


 萌黄の泣きそうな声がすく傍で聞こえ、ぎゅっと腕に抱き付かれた。

 

 奇襲だ。

 私が安易に伝書鳥をエルザーニスに返したばかりに、今この棲み処も私達の命も危機に瀕しているといる事実に愕然とする。

 

「瑠璃様!私神法使えます!!」

「私も!」

「私も大丈夫です!!」


 ミィの声を皮切りに、ホノライとノハヤの声も飛んでくる。

 アデル達は器の中にいる為か、謎の光の干渉を受けていない様だ。


「ではホノライ!ノハヤ!捕虜を光に還しなさい!!」

「「えっ!!?」」

「ミィ!トーコ様を守りなさい!!早く!!」

「はっ、はいっ!!」


 ホノライとノハヤの戸惑った気配。ミィの炎が起こる気配。しかし炎の壁はミィからも私からも少し離れている様な気がする。


「生きている者はいるか!!」

「ここにいる!」

「大丈夫だ!!」


 捕虜達が騒いでいる。生き埋めを免れたのだろうか。

 その内数は増え、喊声が上がった。


「魔女を倒せーーー!!」

「「「おーーーーーーー!!!!」」」


 恐れと言うよりも、感じたのは戸惑い。


「待って下さい!!駄目です!!」

「止まって下さい!!」

「魔女を狙え!!他は後でいい!!」

「魔女だ!!」

「魔女を!!」

「「「「「魔女を光に還せーーーーーーーーーーーー!!!」」」」」


 ホノライとノハヤの制止をものともせず、シュプレヒコールが響き渡る。

 捕虜の人数を考えれば声は少ない。それでも屈強な男達が此方に殺気を向けて来る。

 そこここで神力が渦巻き、神法が形成される気配がする。


「ホノライ!!」「ノハヤ!!」


 紅と瑠璃の、二人に向かって叫ぶ声が重なる。

 直後にパシン!と、何かが弾ける様な音がした。神法がぶつかって弾けたのだ。

 その後も何度か似た様な音が聞こえた。幾つかの神法は勢い良く私の直ぐ横を通り過ぎて行った。


(まさか、見えてないのに攻撃してるの!?味方に当たったらどうするつもり!?)


 腐っても神法師団のエリート。上手く的に当てられない訳ではないだろう。

 それに神法は本来攻撃に使用するものではないとホノライが言っていたではないか。


(見えてないのに無闇に攻撃って、自棄になってるんじゃないでしょうね!?それとも何!?私達の場所を確認でもしてるの!?)


 恐らく捕虜達の視界もない。足元だって悪い。だから此方へ武器や武術で攻撃を仕掛けられないのだ。

 それは恐ろしい事に此方側にも当てはまる。ミィの炎の壁らしきものが若干ずれた位置に展開されている事からも明らかだ。

 そしてホノライやノハヤ。二人はどうやって神法を放つ方向や距離を定めているのか。


(まさかとは思うけど、適当じゃないでしょうね!!?)


 守られている気が全くしない。寧ろ的になりかねない。

 しかも、二人では恐らく捕虜の神法には敵わない。神力が違い過ぎる。

 このまま攻撃が続けば確実に此方が殺られる。


(後どれくらいもつの!?)


 不思議な事に、見えなくてもこの明るい真っ白な世界はあの神の家から見た真っ黒な空間の様に畏怖を呼び起こすものではない。

 徐々に沸き始める恐怖心は、この白い世界に対してではなく人への感情だ。


(…………そうだ、神石!)


 ホノライ達の気配を探る。


(駄目だ!!)


 焦って集中出来ていないせいか、ぼんやりとした方角しか分からない。普段如何に神力を蔑ろにしているのか思い知らされる。


(何もこんな時に発覚しなくても……)


 心の何処かでどうせ力業で捻じ伏せられると思っていたに違いない。

 こんな事なら神力のコントロールもサボらずにミィ達と一緒に練習しておくのだった。

 代償が命なんて高過ぎる。


(そっか、皆ちゃんと練習してたから……)


 しかし今は落ち込んでいる場合ではない。


「瑠璃!私をホノライ達のところに連れてって!」

「トーコ様!?」

「早く!萌黄もいらっしゃい。紅ー!!貴方も蘇芳達の元へ来なさい!!」


 遠くまで聞こえる様に大声で叫ぶ。

 取り敢えず一塊になっていれば、味方への攻撃は回避出来る。最悪全滅するかもしれないが、中途半端に失ってその後気まずい方がいたたまれない。

 瑠璃が私を抱いたまま走り出す。流石は精霊。早い。人や神力の流れを上手く読んでいるのか、攻撃を躱して直ぐにホノライ達の気配の元に辿り着く。


「蘇芳!三人に神石を!!」

「はい!」

「ホノライ!ノハヤ!それで暫く攻撃を防いでいて!」

「「はい!!」」


 紅も直ぐに到着する。


「他の皆もここにいるわね!?」

「「「「「はい!!」」」」」

「ヨモギは!?」

「庭の隅の方に待機させています。まだ目が見えていないので危ないかと」

「そう」


 懸命だ。踏み潰されては敵わない。

 神石はまだあるが、外から無理矢理力をプラスするのだ。使い続けてどうなるか私は知らない。身体に負担などないのか。

 それに神石はいずれはなくなる。特にミィやホノライに渡せる火と水の神石は数が少ない。もし捕虜全員が此方に攻撃して来たとして、それで防ぎ切れるのか。


 恐らくホノライやノハヤは相手を攻撃している訳ではない。光に還せと言う命令には戸惑っていた。今はただ神法をぶつけて相殺しているだけなのだ。

 仲間を攻撃する事を、多分敵側の方が躊躇していない。戸惑いがある分此方の神法の威力は落ちる。


(私も加勢しなきゃ)


 普段は精霊達に任せっぱなしで、私は守られているばかりだった。

 でも今なら戦える。光に還せる気がする。

 殺らなければ殺られるのだ。


(手痛い…………分かってるよ。駄目なんでしょ?でも邪魔しないで)


 見えない神に反抗する。


(神法……何で攻撃する?効果的なのは水?風?……火……土?)


 私は徐々に、自分が神法を紡げない事に気が付いた。

 流れは感じるのに、上手く神力が纏まらない。編めない。組めない。


(何で!?)


 私の精霊は外に出ていて、今辛うじて繋がっている。

 その精霊達は繋がる事が精一杯だと言った。彼女達は今私の器から膨大な神力を引き出して、大きな神法を使う事が出来ない。


(何で何で!!?)


 逆も駄目だと言う事か。


「紅!ヨモギの神法は!?」

「まだ使えません!」


 ヨモギの状況も私と同じ。では集中力の問題ではない。

 神獣であるヨモギもそうだが、そもそも私の器は特別な神の器ではなかったのか。精霊がいなくても自らコントロールし、神法を発動出来る。出来るからこそ、自力でも自動回復もしているのではなかったのか。


(まさか本当は精霊達がコントロールしてた!?それとももっと精霊と強く繋がってないと発動しないの!?それとも…………)


 考えても知らない事は分からないのだ。

 ましてやこんな状況で、冷静な判断など出来る筈もない。


(属性がない無属性の神法……ってそんなの知らないし!!)


 良い案が咄嗟に思い浮かぶ筈もない。

 焦る程に意識は混濁し、纏まらなくなっていく。


(精霊を器に入れる!?どうやって!?外に出られる事が私の器のアドバンテージなのに、そんな事今更お願い出来るの!?)


 この状況で精霊に私への興味を失われたら戦況は絶望的だ。

 無意識に手が何かを探る様に前へ出る。触れたのは、前方で攻撃を防いでいるホノライと、私を守る様に炎の壁を展開するミィだった。二人は本当に直ぐ傍にいたのだ。


「トーコ様?」


 手の平に二人の温もりが伝わって来る。ミィの炎に触れている筈の腕はその熱を感じない。

 私はこの時初めてフレンドリーファイアが無効である事を知った。


(大丈夫……集中して……)


 神法が編めないのなら、神の称号はどうか。

 三人は弱いくせに、前に出て私を守ろうとしている。神力が小さいせいで大きな盾を作れないミィは、炎の壁の外側にいる。

 そこに掛けるのは己の命。


(何で…………)


 温かい神力が逆流を始める。

 神石がなくなると言うのなら、私が分ければ良い。本来私は自分で神力をコントロール出来るし、今自動回復も出来ている。

 根本的な解決にならないのは分かっている。でも。


(落ち着いて、塔子……今出来る事を……)


 そうだ。あの時みたいに、私は出来る。


「ホノライ、ミィ、神力を分けるから使いなさい。ノハヤは神石で暫く何とかして、なくなりそうになったら直ぐ声を掛けて。もしこれで防ぎ切れなかったら……………………一緒に大樹に還りましょうか」

「「「!!!!」」」


 三人がその言葉にどんな反応を返したのか、私には分からなかった。




 私が周囲の状況を把握したのは、それから暫く経った頃だった。

 徐々に光が薄れ始め、一際大きな爆発音と共に広場を囲っていた巨木の一本に穴が開いた。

 光の日が終わりを迎え始め、着々と火の気配が近づいている。


(やっぱり、人なんか信じるんじゃなかった……)


 まだ薄っすらとだが確認出来る。穴から現れたのは、帰ったと思っていた近衛師団。ガダールとルミアもいる。

 どうやらエルザーニスは巨木の向こうで待機しているらしい。


「流石は魔女様」


 攻撃が止んだ。ルミアの耳障りな拍手が風に乗って聞こえ、走り寄る捕虜達の足音を消す。

 見たところ、捕虜の数は半分に減っていた。


「これはどういう事?」


 巨木に穴を空けるのに神力を使い切ったのか、幾人もの兵士が穴の向こうで倒れているのが見える。

 やはり軍は人の命を軽んずるのか。万が一でも此方の力が上回っていたら、彼等に逃げる術があるのだろうか。


 此方の被害は取り敢えずな…………くはない。屋敷は壊滅し、強固に固められていた筈の大地は抉れている。庭に植えた木はめちゃくちゃに薙ぎ倒され、私達は傷だらけな上に土埃でとても汚れていた。

 更にタイミングの悪い事に、ホノライ達三人がそれぞれの属性の神石と殆どの神力を使い切ったところで、私がルミアの声に驚いて手を離してしまったのだ。

 私の神力にはまだかなりの余裕があるが、今から二人同時に手を繋いだりしたら不自然だろう。視界は徐々にクリアになって来ている。

 二人同時に回復させるのに必要な時間は体感でカップ麺が出来るより短い。なのにその短い時間が、この状況で確保するには果てしなく無謀に思えた。

 まだ精霊との繋がりは細いままだ。


「やけに森でうろうろしていると思ったら、この為でしたの」

「気付いていて何もしないとは流石は精霊!魔女様、あまり精霊を信用し過ぎると痛い目に会いますよ」


 ルミアが兵士に守られつつ、対談の時と同じ笑顔で近寄って来る。

 前列の兵士は抜剣し、後列の兵士は今にも神法を発する構えだ。


(何で精霊って!!……それより瑠璃が黙ってた……?)

「トーコ様駄目です!そんな挑発に乗っちゃ!!」

「煩い奴隷だ」


 ミィの叫びに眉間にしわを寄せたルミアの手がさっと上がる。


「きゃぁぁぁぁぁ!!」

「ミィ!!?」


 私の横に立っていたミィが、強い風圧を受けて後ろへ飛ばされた。

 神法師団もルミアもエリート。元々ミィの倍以上の神力を持っている上に、今のミィは殆ど神力が残っていない。

 押し負けて当然だ。


「…………何、してるの?」

「奴隷まで気に掛けるのですか?魔女様はお優しい」

「奴隷?誰が」

「そんな襤褸を被せただけの……おや?あの時のメイドですか」


 沸き起こった怒りが、神力と共に全身を巡る。


「それにしても良くもまぁ持ち堪えましたね。早々に方が付くと思っていたのですが」

「方が付くですって?」


 巡り、そして溢れる。もう止められない。私は怒っている。あぁ、右手が熱い。痛い。


「ヨモギ」


 広場の隅で、のそりとヨモギが立ち上がる。


「神獣を嗾けるか」


 それまで黙っていたガダールが殺気を飛ばす。兵士達がヨモギへ向き直る。緊張が此方まで伝わって来る。

 ルミアだけが私に対峙したままだ。


 兵士の数は捕虜も併せて凡そ五十。あの木一本傷付けるだけでどれほどの人数の神力を費やしたのだろうか。それとも弱い者や、若しくはエルザーニスの護衛として何十人かは巨木の向こうで待機しているのか。

 捕虜の神力はそれ程残っているとは思えない。しかし近衛師団が三十人もいれば、神力的にはヨモギを倒せるかもしれない。

 ヨモギが水属性に対する絶対耐性を持っている事と、兵士達の神への信仰心を差し引いて、どれだけ勝ち目があるのか。ヨモギの神力は満たされているけれど、神法は使えない。出来るのは物理攻撃のみ。


 そして恐ろしいのはガダールの統率力。兵士達を喚起鼓舞し、率いて目標達成させるカリスマ性。

 何せ彼は、圧政からレザーヌの民を救って領主に立った英雄なのだから。


「神獣と言えど、我に仇成す事は許さん」


 恐ろしい程の闘気が発せられる。このままでは戦いが始まってしまう。

 これにギリギリで勝ったとして、その後はどうなるのか。私と精霊の繋がりが回復する前にヨモギが力尽き、今度はエルザーニス達が乗り込んで来たら。


(ギリギリじゃダメだ。圧倒的な力で勝たなければ)


 私達に未来はない。


「ガダール、良いものを見せてあげるわ」

「邪魔立てする気か」

「見ておいて損はないわよ。アカリに、良い土産話が出来ると思うわ」

「何じゃと?」


 ガダールがほんの僅かに剣先を下ろす。

 ルミアの反応は更に顕著だ。


(やっぱりカギを握るのはアカリ・アリサカ……)


 大体、神の獣など倒して大丈夫なのか。


「魔女様、精霊と繋がっていなければ神法は使えませんよ?」

「どうやって精霊を判別してるのか知らないけど…………それは私には当てはまらないわよ」


 だって私は神の特別な器を持っている。自分で大気の神力を集められる。それは少なくとも干渉出来ると言う事。


(本当はコントロールも出来る筈なんだけど)


 瑠璃が最初にそう言ったのだ。私の器は神が創った特別なもの。神が入れない代わりに自身で神力をコントロールする事が可能な、優れた精霊の器だと。

 もし私の練習不足でコントロールが出来ないのなら、これから死に物狂いで鍛錬してやる。

 二度とこんな事が起きない様に。


(瑠璃が嘘付いてるんじゃありません様に……)

「確かに精霊がいないと安定はしないけど、それならそれでやり様はあるのよ」

「もう勝ち目はないと思いますよ?いい加減諦め……」


 私は徐に手を胸の前まで上げ、器を作る。


「今、呼んであげる」


 そう、出来る事はまだある。今これが私に出来る、最後の切り札。

 属性を持つ精霊は全部で五種類。今敵が私達にかけているこの忌々しい属性の席が、まだ私の特別な器には空いているではないか。


(出来ない事なんてないのよ。今まで呼べたんだから、きっと上手くいくわ)

「呼ぶ?何を……!!」


 周囲の光が私に集まって来る。身体の中を急激に廻り出す神力と、大気の光が上手く混ざり合う。

 光は徐々に人型を成し、私からは大量の神力が吸い取られていく。


「そんな馬鹿な…………貴方は神にでもなったつもりか……」

「神?まさか。そんなんじゃないわ」


 あれと一緒にされるだなんて、何て屈辱だ。

 奇しくも今日は光の日。

 条件は整った。


「出て来なさい、『山吹』!!」


 太く繋がった神力が、一気に集約する。私の中から、大気から、周囲の神力も神法もごっそり削り取って現れたのは、金にも銀にも見える長い髪を組紐と一緒に緩く前へ流す様に三つ編みに結い、青い刺繍の入った白い長袍を見事に着こなした二十代の男性。

 流石は精霊。その容姿は他と違わず、恐ろしく美しい。エルザーニスも中性的で綺麗だし、ルミアも美男子だが、やはり精霊と人とでは格が違う。


「山吹、この光を収めなさい!」

「畏まりました、トーコ様」


 残っていた神の力が全て引き寄せられる。

 同時に、急速に辺りから明るさが失われていく。


「ちょっと!手加減してよ!!僕とトーコ様の繋がりまで切れちゃう!!」

「貴方新人のくせにもう少し先輩を丁重に扱いなさい!!」

「…………!!」


 私を抱きしめる瑠璃の腕に力が籠り、背後から無理矢理萌黄が首に抱き付く。蘇芳が無言で、でもしっかりと私の手を握る。紅が慌てて走って行く。ヨモギの元へ行ったのだろう。

 神力が集まって来る。


(これじゃ過剰摂取だ。大気に返さなくちゃ)


 神力を吸収し過ぎると魔物化してしまう。

 私は内に溜まって行く神力を、熱を、返還しようと放出した。

 暖かい。


(繋がってる…………蘇芳も瑠璃も萌黄も……)


 ミィの気配もする。少し離れたところにノハヤとホノライ。ヨモギ、紅。そして大気。その先にある大樹。

 繋がっている。全てが私と、神力を通して深く強く繋がっている。


 やがて光は消え、夜の帳が再び落ちる。

 私達を邪魔していた神法は、その効力を全て失い霧散した。


(間に合った……)

「まさか……」


 呟いたのはガダール。

 大樹の光が照らすだけの広場は、夜とは言え明るく見通しも良い。

 外壁の穴の向こうから、エルザーニスが此方の様子を見た事もない表情で窺っている。


「これで形勢は逆転ね」


 大気の気配が変わる。

 長かった光の日が、漸く終わったのだ。

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