プロローグ
彼氏の家に夜初めて呼ばれたのは、少し雪の降る日だった。
「お邪魔、します」
昼間には何度か来た事がある。でもこんな日に夜呼ばれたとなると、それなりに何かあると思うもの。まだそういう関係ではない。
普段から博愛主義のイケメンに見える彼。予想に違わず、いつ来ても綺麗に片付いた家だ。アロマキャンドルのいい香りもする。無駄に女子力が高い。
彼の両親が事故で亡くなって、この一戸建てを相続したのは二年前の事らしい。付き合いだしたのは今年の春だから直接は知らないけれど、リビングにはまだ家族写真が沢山飾られている。
「くつろいでね、直ぐご飯の準備するから」
「ありがとうございます」
写真から、とても幸せな家族だった事が伝わってくる。
私は母が彼氏を次々変える我が家の現状と思い比べ、人生はままならないものだと幸せについて思いを馳せる。
「それは中学の卒業式。塔子さんはその頃どんなだった?」
「私ですか?普通の学生でしたよ」
「塔子さんなら文化祭で劇の主役とかに選ばれそうだよ」
「中三の文化祭は……ジュリエットをしました」
「ジュリエットかぁ、見てみたいなぁ。写真とかある?今度会う時に見せてくれると嬉しいな。それでもっと塔子さんの事聞かせてね」
「はい」
コートを掛けてくれる。お洒落して薄着をしたけれど部屋は暖かい。
この人に係れば私はお姫様扱いだ。この家でも何か手伝った事はない。告白されて何となくOKしてしまった関係上、彼は特に私に何も求めないのだと勝手に思っている。
(一体私の何処を見て好きとか思ったんだろ)
薄っすらと脳裏に浮かぶ私が家の細やかな誕生日。いつの記憶か忘れてしまいそうなほど幼い頃だ。最初の離婚をしてから母は、仕事でいつも遅かった。小学生の頃は、朝枕元に置かれたプレゼントを見て、無理して買うくらいならなくてもいいのにと思いながらも、嬉しくてお礼の手紙を書いたりした。
(だめだめ、感傷的になるのは良くない)
二度目の離婚をした時はっきり言われた筈だ。私には私の人生がある、と。今更母の興味を引きたいと思ったところでどうにもならない。
でもまぁ写真やこの家を見て、彼は随分違った環境で育ってきた事が分かる。
「どうかした?」
「いいえ、なんでもないです。手伝います?」
「いいよ、座ってテレビでも見てて」
付き合いだして七カ月。私がよそよそしいのは仕方がない。仕事の都合上月に一度か二度会う程度だ。
正直好きかもよく分からない。大人の恋愛とはこんなものだろうか。いや、子供の頃に恋愛した経験もないけれど。
彼は多分、いい人だと思う。思いたい。まだ私は彼を信用しきれていない。
目の前にテキパキと夕食の準備を始める料理男子がいる。良く出来た執事、なんて思っている事は間違っても口に出してはいけない気がする。あれは良く出来た「彼氏」だ。気を付けなければ。
彼は休みの日に家族で料理をしたりする事も多かったらしい。私は家事をしなかったし、正直母が家で家事をしている姿を見る事もあまりなかった。シングルの家庭では子供がする事もある様だけれど、家の場合は総菜と冷凍食品という素晴らしい文化が私を育てたのだ。
座って待っていると、その内豪華な食事が出てきた。
「本日のメニューは手毬寿司と北京ダックとポタージュとコズバレイヤ、あとドルチェも用意してあります」
「……多国籍ですね」
何か一個聞いた事ないものが入っていた。
「おいしそうです。ありがとうございます」
「どういたしまして」
危ない危ない、感想を間違えた。もっと喜ぶのが正解だった。彼は嬉しそうに微笑んでいる。セーフか。
丸焼きにされたアヒルがそぎ落とされて私のお皿に乗って行く。丸ごとなんて何処で買うんだろう。かぼちゃのポタージュは小ぶりなかぼちゃがくり抜かれてカップになっていた。
「ワイン飲む?」
「いただきます」
目の前にディナーが完成する。照明が半ば落ち、キャンドルが灯された。
(暗いんだけど)
「雰囲気作りね。塔子さん意外と流され易いし」
否定はしないけれど余計なお世話だ。
「塔子さん、今日が何の日か知ってる?」
「クリスマスイヴです」
「よかった。僕のなら兎も角先月の自分の誕生日も覚えてなかったみたいだし、あまり記念日とか気にしないみたいだから」
確かに興味はないが、街中にでかでかとツリーが立ち、木々がイルミネーションで光り輝き、ポインセチアやクリスマスソングがあれだけ氾濫していれば嫌でもそろそろだと気付く。ネズミの国なんかハロウィンのはるか前からパレードのCMをしていた。
ジャズが静かに流れる中、はた目にはいい雰囲気で食事をする。私はテーブルが片付けられるまで、彼の話に返事をしつつ、これからの事を想像してどうしようかと考えていた。
そして。
「塔子さん、これ」
テーブルの上に差し出された小さな箱を見て、開くまでもなく見当は付いた。
「道坂塔子さん、家族になりましょう」
生まれて初めて出来た彼氏、藤貴志から私が結婚を申し込まれたのは、雪の降る二十八歳のクリスマスイヴの事。
「ダメ、ですか?」
ぼーっと見つめる先には小さな箱が一つ、ポツンとテーブルの上に置かれている。白い小さな箱。中身はまぁ、指輪だろう。
「こう言うのは、開いて見せてくれるものではないんですね?」
「どうなんでしょう?僕も初めてだし、よく分からないけど」
「そう、ですか」
口から出たのはそんな言葉だった。いや、何か答えないといけないのは分かっている。それに年齢を考えればそういう予感もあった。
彼が箱を手に取り蓋を開けて中身を見せてくれたので、徐に取り出し眺めていると、もどかしかったのか彼はさっとそれを取り上げて、許可もなく私の左手の薬指にはめてしまった。私の頭の中は今真っ白。
(あら、ぴったり)
焦点の合わない背景の中で、彼が嬉しそうに微笑んでいる。
(お礼、言わなきゃ。……でも待って私。正直まだえっちもしてないし、私こんな態度だし。流石に早過ぎない?嬉しいのかも今一分かんないし……でも、嫌じゃない、かも?)
それはきっと一つの答え。
混乱する頭でぼーっと指輪に落としていた視線を上げれば、いつの間にか直ぐ隣に彼がいた。肩を引き寄せられ、更に二人の距離が狭まって、私は目を閉じる。彼の手の感触が私の二の腕を伝って降り、指先が絡み合う。そして、唇が触れ合う感覚…………より先に感じたのは、閉じた筈の視界を覆う眩しいくらいの光だった。
「藤さん、これもサプライズ、ですか?」
「…………僕じゃなくてサンタさんかなぁ」
いつまで経っても触れない唇を疑問に思い、目を開けるとそこは、白い大きな部屋の中だった。お尻に触れる床は大理石に見えるが、冷たくはない。
それよりも、彼が見上げている方が問題だ。目の前に立つ黒いスーツの女性が、射殺す勢いで私達を見下ろしている。
(サンタってブラックな方なの?)
「お前がフジ、か?」
透き通った声が、頭上から聞こえた。怖すぎる視線のせいで一瞬凍り付いたが、彼女に抱かれた少年が彼の名前を呼んだ様だ。
それは恐ろしく綺麗な少年だった。長いまつ毛に色素の薄い可憐な瞳。フード付きの真っ白なローブ、これまた真っ白な、輝く流れる髪。どう考えても身長より長いそれらは、自分で立つたら確実に引きずって汚れてしまいそう。
(だから抱っこされてんの?十歳くらいには見えるんだけど)
よく見れば凄い表情の彼女もかなり綺麗な、キャリアウーマンといった感じだ。お姉さん、いやまさか若く見えるけれどお母さん。いい感じに膨らんだ胸に高いウエスト。
対する私はどうだろう。不細工ではない。スタイルもそこそこ良い方だとは思う。でも勝ち目が何処にも見当たらないと思わせる、そんな女性。
「そう、です。藤貴志は僕ですが……」
少年の視線は真っ直ぐ彼に向けられている。私が腐っていなくても、思わず抱きしめたくなるくらい可愛いが、生憎美少年は黒尽くめのお母さんの腕の中である。
ずっと抱っこされている過保護っぷりを加味して、私は彼女をお母さん認定した。何か視線が更にきつくなった気がしなくもないが。
「お前は選ばれた。今から私の代わりをしろ」
「選ばれた?代わりと言われても。ここは何処で、君は誰かな?」
(そう言えばここ、何処だろう。さっきまで藤家のリビングにいたんだけど)
「お前に世界をやる」
何処かで聞いた様な台詞が聞こえた。
(半分じゃなくて全部ですか?何と等価交換させるつもりですか?)
それにしても美少年、口調が大分偉そうだ。過保護に育ち過ぎて暴君なのだろうか。
本当に子供かと疑いたくなるほど、少年の表情は微動だにしない。感情のない大きな瞳。
(この見た目でSとか人形とか、どれだけ腐心を鷲掴みにするつもりだ。せっかく隠してるのに!)
「君」という藤さんの言葉に、お母さんが目を細める。怖い。
「塔子さん、夢かなこれは」
「……どうでしょう?感覚は鮮明ですけど。夢でもそう言う事もある、のかもしれませんね」
「せっかくいい雰囲気だったのに。夢なら続きをしたいんですが」
(いやいやいやいや。こんな訳の分からないギャラリーの前でありえない)
たまに藤さんは押しが強い。普段さわやかイケメンなのに。世界の話は無視ですか。
「御使い、『人』というのは話が出来なかったか?」
「それほど下等ではないかと思いますが」
「塔子さん、よそ見しないでこっち向いて?」
「待って下さい」
慌てて彼の顔を押し戻す。口を塞いだ手をペロンと舐められてゾクッとした。
「ちょっと状況を、整理しましょう」
「……そうだね?」
(不満げな顔で言ってもダメ!)
熱くなった手をもう片手で包んで深く呼吸を繰り返し、パーソナルスペースを確保する。
よし、落ち着いて考えよう。これは本当に夢だろうか。今私達は白い大きな部屋の中にいる。パルテノンやタージマハルを思わせる、巨大な建造物の中といった感じだ。天井が物凄く高い。どっちも中入った事はないけれど。
まさかあの瞬間に某国のミサイル的天災で今天国直行という訳でもないだろう。そんな低い可能性は除外。素敵なお花畑も雲もない。天国はもっと幸せな場所の筈だ。
(もしや、最近巷ではやっている異世界転移もの……………ないわ、いい大人が)
この状況が長く続くなら何かの機能障害を疑う事にしよう。幻覚、幻視、幻聴。
(まさか炊いてたアロマか食事に変なもの入ってたんじゃないでしょうね?)
「どうしたの?」
「……何でもないです」
流石にそんな人ではない。と思う。人を見る目に自信など皆無だが。
(これは結婚に迷っている私のリアルな妄想なのでは?大丈夫か私)
「もういいか?私は眠い。御使い、説明を」
「仕様がないですね」
そう言えば人がいたんだった。都合よく忘れていた。
暫く黙っていた美少年を見ると、瞳が閉じかけている。お母さんにもたれ掛かる姿がなんとも可愛らしい。お母さんが美少年を抱き直し、藤さんに声を掛ける。
「では私から説明を。これは白の神。私はこれの世話係、黒の御使いです」
(そういう設定ですか。安直だな、私の妄想)
黒の御使いと名乗った女性は、髪も瞳も眼鏡も服も靴も真っ黒。美少年コト神様は上から下まで真っ白。
でも神というからには、御使いから見れば上司なのではないだろうか。これとか言っているけれども。
「貴方達が誰であろうと構いませんが、今直ぐ家へ帰して頂けませんか?」
対する藤さんは意外に冷静に返答した。そこはいつも通りだが、珍しく怒っている様子だ。いつもの割と博愛主義な彼なら、理不尽な状況であろうと理由くらい聞いてあげた気がする。
「それは無理です。貴方は選ばれてここへ来た。もうこの宮殿から出る事は出来ません」
「帰して、頂けませんか?」
「……ここは貴方のいた世界ではない。今の貴方では宮殿どころかこの部屋から出る事も出来ないでしょう」
「確かめても?」
「どうぞ」
藤さんが私の手を引いて立ち上がった。
部屋にいたからか、私達は靴を履いていなかった。まぁ白いローブからちらっと見えた美少年も裸足だったが、あれはお母さんに抱っこされているからいい。ちなみにお母さんはローヒールの黒いパンプスを履いている。
(あ、お母さんじゃなくて御使いさんだっけ?)
私達は今四角い部屋の中央にいる。左の壁際に大きな天蓋付きのベッド、右の壁にシンプルな白いマントルピース。床と壁、天井まで同じ大理石に見える。右前方の部屋の隅には「く」の字に本棚が置かれている。背文字なのか装飾なのか、どちらにしてもとても綺麗な装丁だ。その手前にテーブルと椅子が二つ。正面には大きな扉。
確実だと思うのは、正直どれもこれも高そうだということ。触って何かあったらどうしようというプレッシャーが手に汗を滲ませる。
部屋がかなり広いので、それぞれには少し距離がある。私達は部屋の中央から真っ直ぐ扉まで歩いて行った。そして藤さんが躊躇なく扉を押す。
「開きませんね」
「そうだね」
扉に取手やドアノブの様なものはない。見た目はギベルティの天国の門、よりはロダンの地獄の門寄り。
(あ、地獄って選択肢もあるのか。神様は兎も角、御使いさんはどう見ても悪魔……嘘嘘睨まないでよ)
そう言えば御使いは違う世界と言った。異世界説も有力か。まぁ夢なら何でも有りな気がする。
彫刻の堀に手を掛け引いてみる。扉はびくともしない。寧ろ過多な装飾で手が傷つきそうだ。
「単純に力が足りない、という漫画を見た事があります」
「男として自信無くすね」
「すみません」
二人で扉を押してみた。両側に引いてもみた。ついでに体重を掛けて下に押してみたり、持ち上げようともしてみたが結果は言わずもがな。繊細そうに見える装飾は、私達の力程度では壊れないらしい。
「ご理解頂けましたか?」
後ろから御使いの声が聞こえた。振り返ると、御使い越しに今まで気付かなかった窓が見えた。
天井付近にまで届く、細長い五つの窓。外は黒。「暗い」ではない。本当に真っ黒だった。宇宙の様な、何もない空間が広がっている。
漠然とした不安が沸き起こる。ここは本当に何処なのだろう。
「元の場所に、帰して下さい」
「出来ないと先程も申し上げました」
藤さんの言葉にも警戒の色が見え始める。その焦りが、益々私を不安にさせた。
「どうぞこちらへ」
御使いが神様を抱いたまま窓の方へ歩いて行く。
窓の手前に、ワイングラスを思いっきり引き延ばした様な、腰の高さほどの巨大な器が鎮座していた。御使いはその淵まで行き、中の液体を覗く。神様は腕の中で眠っている様だ。
「塔子さん、僕が付いてます」
安心させる様に微笑んで、藤さんは再び私の手を取った。正直あの窓には近づきたくない。けれど彼が手を引いて歩き出したので付いて行くしかない。
窓の外の闇が何もかも飲み込んでしまう映像が脳裏に浮かぶ。不安が恐怖に近くなる。握る手に自然と力が入る。吊り橋効果だろうか。彼以外に信じるものなどないかと思える。
(夢なら早く覚めて)
大きいとは言っても部屋の中。だというのに、そこまでの距離は跳ねる鼓動のせいでとても長く感じられた。
巨大ワイングラスの傍まで来ると、中に入っている液体の水面に何かが映っているのに気付いた。
「これが貴方に差し上げる世界、エルダーンです」
「エル、ダーン?」
「この白の宮殿の、白の神が管理する世界です」
どうやらここは白の宮殿と言う場所らしい。タージマハルも強ち間違ってはいない。あの扉だけを見れば神の世界の建造物というより俗世の宗教的建築と言った方がしっくり来る気もするが。
水面に映る世界は、航空写真を見ている様な感じだった。
(これが……違う世界)
夢も妄想もここまで来ると凄い。
「エルダーンにはこの水盤と神力を使って干渉します。貴方にはここから世界を見守って頂きたいのです」
その時、握られた彼の手から力がスッと抜けた様な気がした。
「見守る、ですか」
「そうです。ご理解頂けましたか」
「理解はしましたが……なぜ私を?」
「それは私には判り兼ねます。貴方を選定したのは青の神。青の宮殿が持つ世界『マリフェッセ』より呼ばれたと聞いていますが、それ以上は存じません」
「その、青の神様に頼んで帰して頂く事は可能ですか?」
「無理でしょう。払う代償を貴方はお持ちではない」
彼が御使いと普通に大人の会話をしている。ここをまるで会社か何かだとでも認識しているんだろうか。神や御使いは決して顧客ではない。
「ここに留まる事で、私達に何のメリットがあるのでしょう?」
「メリット?やはり『人』とは欲深い生き物ですね。そんなものは何もありません。貴方は選ばれた、唯それだけです」
御使いと彼の声が煩かったのか、神様が頭を上げた。眠気眼を擦る手を御使いに掴まれたが神様は抵抗せず、動物的な欠伸をした。
「もう遅い。お前は白の力に捕らわれた」
「白の力とは?」
「神の力。この宮殿の力。何でも良い。お前は私の代理と認められた。もう離れる事は出来ない」
「では彼女はどうなりますか?」
「彼女?」
美少年の視線が彼から離れる。そう言えば初めて視線が合った。
(もしかして今漸く私を認識した?)
「候補は一人だと聞いていたが?」
「その筈ですが」
暫くの沈黙。
「なかった事に致しましょう。青の神に余計な対価を要求されても困りますし、神の代理は二人もいらないでしょう」
「…………そうだな」
嫌な予感がする。もしかしなくても私の事だろうか。
不穏な言葉に口を挟もうと思ったが、意に反して口も身体も一切動かない。繋いだ手が汗ばむ。冷や汗が流れ落ちる。
神様がさっと手を前に出すと、いつの間にか手には魔法使いっぽい杖が握られていた。軽く挙げられたその腕を私は視線だけで追う。
カーーーーーーーーーン!
部屋に大きな音が響いた。儚げに振り下ろされた杖が瞬時に伸びて、思いの他大きな音で床を打ったのだ。同時に私の足元に、金色の魔法陣っぽい文様が出現した。凄く発光していて、何だろう、やはりとても不味い気がする。
【落ちろ、トーコ】
何かを考える暇はなかった。
魔法陣はせり上がり、私の身体の中を通り抜ける。視界を奪っていく眩い光。それは背筋が凍る様な、凄く不快な感覚だった。
『塔子さん!!』
触れている筈の感触はなくなっていた。
藤さんの叫んだ声が、何故か水中で聞く音みたいにくぐもっていた。




