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5.武器の素材集め

「投石ね…」

「いや…昔の攻撃手段だったなあと思いまして…、はい」

「かなり昔だと思うんだよ」

「はい」

「イザベルはそれでいいの?」


 レーズンさんの厳しい叱責を受ける構えである。ぷかぷかと浮いているレーズンさんが上に上に浮かんでいっているように見える。私はただ「はい」を繰り返すのみだ。


「わ、私は、戦えるのであれば、なんでも…」

「イザベルちゃん…」


 でも、そうだなあ。私はちょうど視界に入る難しそうな顔のレーズンさんから顔を逸らす。村を覆い隠すように茂る木々が目に入る。その隙間からは青い空が覗いていた。

 試しにイザベルちゃんが投石している所をイメージする。ビジュアル的に手づかみで石を投げて戦うのはアレだろうか。格好つかないかな?攻撃力的にいえば心配だが…。格好いい武器を使った投げるやつ…。語彙力…。


「あッ!格好良く言えばスリングだ!!」

「今思いついた感じだね!!」

「うん!あのY字ので引っ張るアレ!投石よりかは格好良さがアップしたでしょ?レーズン!」

「まあ確かに…。それにスリングだったらその辺の石の他にも爆弾を撃ってもいいかもね…」

「それいいね!破壊力抜群!」


 盛り上がる一行。当のイザベルちゃんは事の展開に戸惑っているのか、視線をぐるぐる巡らせている。置いてけぼりにしてしまったかもしれないと、イザベルちゃんの意思を確認する。


「って事でイザベルちゃん、スリングに挑戦してみる?」

「…是非、お願いします!お二人とも考えて頂いてありがとうございます」

「いいんだよ、いいんだよ…!」


 思い切り頭を下げるイザベルちゃん。顔をあげた際、表情がはにかんでいるように見える。その顔が見たかった。


「じゃあ早速スリングを作る所から始めよっか」

「あれ?装備屋になかったっけ」


レーズンの言葉に、妖精村に戻って買いに行こうと思ったが、迷いなく、首を振られてしまった。商品の情報も把握しているのだろう。


「ないから、材料を集めないと。材料はそうだな…。丈夫なY字型の木の枝と、ゴムで十分だと思う。飛ばす用の石も何個か拾っておいてもらおうか」

「で、材料が集まったら?」

「村に戻って作ってもらう。ちゃんとした設備の所で加工してもらった方がいいからね」


ということで、素材を集めよう!と張り切り、拳を握っていたところ、イザベルちゃんが手をあげる。


「木の枝ってこれでよろしいですか?あと石も拾っておきました…」

「早い!」


その腕の中には、確かに丁度いい太さのY字の枝。そして手頃な石ころ。凄い、発見力、高し。


「じゃあ後はゴムーーってどうしたらいいんだ…?木からとれば…?やり方…」


まったくもって、どう採取するのかが浮かばない。


「ゴムはね」


 おもむろにレーズンは薬品の入った瓶を取り出すと、スライム達へ投げた。次の瞬間には、青い炎の中、燃え盛るスライムがみえた。

えっ?と目を瞬かせる間も無く、彼らはお金と、素材らしきプニプニをドロップして消えたーー。

声なき悲鳴が聞こえた気がする。


「レーズンさん、ようしゃない…」

「えー?手っ取り早くゴムを集めたかったから…。うん、これこれ、イザベルも拾って」

「は、はいっ!」


レーズンが手に取ったのは素材の方だった。目一杯ドロップしたそれをイザベルちゃんと拾い出す。

私もしゃがんで、お金と一緒に素材を拾う。大きくて柔らかい水色さ加減に、ソーダ味の特大グミに見える。


「これを圧縮加工したらゴムになるから」

「へええ…なにそれすごい、……素材、すぐ集まるもんだね!」


あっという間に収集完了。

加工の為、また村へ戻る事に。


✳︎✳︎


 お店に入ってすぐに、装備屋さんに「あれ?戻ってきたんですか?」と言われてしまった。


「武器を作って欲しいんだけど」


 そう言うレーズンが先陣を切る。顔パスなのか、そのまま店の奥へ進むと素材らしきものがいっぱいに乗った大きな机が目立つ部屋に着く。ここが素材を加工する場所なのだろう。机の周りには皮を縫っている子や、ドリルで牙を削っている子までいる。かなり本格的だ。

 机に近付いたレーズンは手近にある皮切れや骨などを手でどかすともってきた素材を勢いよく置いた。


「ナッツ、あの子に特注のスリング作ってよ。妖精族の腕を見せてあげて」


 後ろで物珍しそうに辺りを伺うイザベルちゃん、レーズンに紹介され、瞬時に顔を赤くさせた。

 着いてきていた装備屋の妖精さんはイザベルちゃんを眺めるも、すぐに机の上の素材に手をつけた。


「ん〜?スリングですか?子供用では無い感じですね。いいですよ〜。ウルフも狩れるレベルに作っとかないとですね!そのためにも爆弾もつけますね。仲間だからってサービスは無しで、ちゃんとした代金はきっちり貰いますけど、いいですか?」

「あぁ、爆弾の素材はこっちにあるから、その分値引いて頂戴ね。お願いします」


 お金にしっかりしているんだなあ、とか思いながら、妖精族のお二人のビジネスなやり取りを眺めるだけに努める。

 レーズンは私の背後へ回ると、ずっと背負っていたリュックをごそごそ探り始める。


「はい、火薬と凝固剤と代金、これぐらいでいいよね?」

「はい、十分です」


 投げた素材をにこにこしたままキャッチする素材屋さん。…って火薬、入ってたのね!うっかり火の気のする魔法とかモンスターに出会ってたら大変な事になってたかもね!私が!!


「レーズン、火薬の他に危険な素材って、入ってないよね?」

「……うん、大丈夫、大丈夫。それより彼女の作業見ててよ、ね!凄いから!」

「その間はなんだろうレーズンさん」


そんなあ。私達の手を引いて、装備屋さんの作業をよく見えるところへ引っ張るレーズン。

イザベルちゃんが回復薬ならいっぱい持ってますから、とおずおず気遣ってくれた。ありがとう、イザベルちゃん。


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