表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/15

混乱

 高木氏が、目覚ましの音で先に起きてしまい、自分を起こしに来た。早朝五時に起こされて機嫌が悪く、怒ったような顔をしていた。こちらも頭がもうろうとしていたので、謝罪をするのを忘れた。早いうちに音の鳴らない目覚まし時計を買うか、寮長に頼んで別室に移してもらわないと、人間関係が壊れる。何せ急に配置換えになったから、生活の諸準備さえままならない。

 

 ワイシャツに着替えてネクタイを締めてから、朝食をどうするかに気づいた。ASDゆえの想像力のなさに呆れるが仕方ない。ジョブパートナーさんの車に乗り込んで、そのことを告げると、「朝食は自分で準備すること」と言われて途方に暮れる。「コンビニは?」と聞くと「まだ、開店していない」と言われた。そうだった。ここは不便な町なのだ。


 空腹と眠気で、なかなかやる気が出ない。制服に着替えてエプロンをつけ、仕事内容や道具や衣服の場所を口頭で教えられた。「視覚優位だから図にして欲しい」という言葉を何度も呑み込んだ。おそらく、昨日読まずに終わったプリントのどこかに書いているのだろう。などと考えていたら「メモを取らんか」と注意された。


 昔から、メモというのが苦手で、字は汚いし、要点はつかみづらいし、おまけによくメモをなくす。バイトでも毎日メモをなくすので、毎日新しいメモを買っていた。腕時計も良くなくした。流れで、その辺に置き、その記憶が丸々なくなるからだ。などと回想にふけっていたら「話をちゃんと聞いているか」と怒られた。


 怒られるのも、苦手で困る。子供のころ、いろんなことで怒られまくっているから、怒られ慣れていると思うのだが、今でも怒られると、全身が震えて足の力が抜ける。そして当然気分は鬱になる。たまに過去の嫌なことがフラッシュバックしてきて、頭がそれに占領されてフリーズしてしまうこともある。


 しまった。また回想してしまった。恐る恐る「聞き逃したのでもう一度言ってもらえませんか」と尋ねたが、不機嫌そうな顔をして「プリントを読め」と言ったきり、押し黙ってしまった。


 これからは連想して回想しないぞと決意して、なるべく話を聞こうと思ったら、職場に案内されて、先輩方相手に自己紹介させられた。こうなる予想はしていたが、「朝、考えればいい」と先送りしていたので、

へたくそな物言いになってしまった。


 仕事をしようとしたが、何をしていいのかわからないので、ぼうっと突っ立っていたら。「わからないなら聞かんか」と怒鳴られた。「何をすればいいんですか?」と尋ねると「配送の車が来るから商品を台車に積め」と言われた。しかし、その間に何をすればいいのかわからず、完全に思考停止していた。プリントを全く読んでいなかったことを後悔した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ