勇者との再会(注)
スタスタと向こうの方から見たことのある恰好が歩いてくる。
「あれは――もしかして勇者か?」
遠くを見て細目になりつついかにもウザったいというような声で戦士の少女はつぶやく。
確かに見覚えのある恰好、世界に一本しかないであろう伝説の勇者の剣。
消し去りたい記憶を思い出したときのようなふつふつとした感情が胸にこみ上げてくる。
「他人の空似・・・・・・確かに殺した・・・・・・はず・・・・・・」
自分の魔術に絶対の自信のある魔法使いの少女は信じられない様子だ。
人影が目の前まで来てしゃべりだす。
「よぅ。元気にしてる?ちょりちょりーんてなwwwお前らは一回死んだほうがいいべ?世界の何の役にも立てないんだからよ!なんてたって人間一人殺せないんだもんなー?ダメ魔法使いと口先だけの戦士ほんとゴミ!マジでゴミ!役に立たないお前らはせめて俺を喜ばせるために燃え盛ってキャンプファイアーになっちゃいなよ(笑)火の始末だけはしてやるからさ小便かけてやるからさ。」
「ああぁ!!!てめえもう一回言ってみろよ」
激昂して少女の顔は獅子のようになっている。
許さないそう言葉に出さずしてわかり今にも食いちぎって殺しそうな顔だ。
顔は真っ赤になり力がこもったこぶしからは血が流れだしている。
「そんな・・・・・・なんで!なんで!なんで!なんで!なんで!なんで!なんで!なんで!なんで!なんで!なんで!なんで!・・・・・・生きている?!・・・・・・たしかに・・・・・・たしかに殺した私の術は完ぺきだった。おばあちゃん直伝ミスは一個もない・・・・・・それなのに・・・・・・ありえない・・・・・・」
「あー?てめぇの魔法が弱すぎるんじゃないの(笑)とにかく一つはっきりしてることがある!お前が俺より弱くてお前の術じゃ俺を殺すことは絶対不可能ってことだ!わかったらひざまずいて靴をなめろそしたらさっきのことは許してやるよ(笑)」
呆けた顔をしている少女にむかって勇者は容赦のない罵声を浴びせる。
少女は状況が理解できていないところに、このクズ勇者に勝てないというわかりやすい現実を見せつけられた。自分は何のミスをしていない。悲しいことにこの勇者の言ってることが正しいというその証明になってしまっていた。
――彼女はその現実を突きつけられ泣き出した。