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最弱主人公が書きたくて。

遅筆です。



「あ、やっぱ死んだ?」


気が付くと顔を覗き込む様な形で幼女がそこにいた。

赤い大人びた色とは裏腹に子供っぽいデザインのドレス、頭には赤いリボン。今度は素足に、赤くも透けたガラスの靴を履いている。どうやら、着替えたようだ。


「やっぱりってお前、分かってたんかよ」

「まあ、転生させるまでは分からなかったんだけどね。あんた、その体のまま転生しちゃってたし。せっかく新しい体用意してたのにぃー」


自分の苦労が無駄になったとばかりに幼女が溜め息を吐く。


「新しい体?やっぱりこの体が問題なのか?」

「そうそう!それ地球産でしょ!?地球の体じゃあの世界では使えないの!あの世界には魔素ってのがあってね。魔法を発動させる素みたいなものなんだけど、それに対しての耐性がないの」

「耐性?そんなものが必要なのか 」

「そりゃ必要よ。言わばアルミの代わりにペットボトルで濃硝酸を運ぶ様なもんよ」

「化学苦手なんだけど…」


幼女の表情が呆れや落胆を表す様なそれに変わり、溜め息混じりに再度、別の言葉で説明をする。


「まあ、簡単に言うとあんたにとっては毒の充満した世界なわけ」

「あー、そう言うことか。なら最初からそう言ってくれよ」


あ、イケない。幼女の表情がダメな方向にものすごくダメになってきている!まるでダメな何かを憐れむ様な、俺のメンタル的にもダメなものになって来てる!


「それで、あんたのその体をどうするかよね。そのままじゃ異世界じゃ生きていけないし」

「作り替えたり他の世界に転生したりは出来ないのか?」

「すでに作られたものを改造するのって結構な技術がいるのよ!とりあえず私には無理!」

「あー、じゃあ別の世界は?」

「もう転生先に登録しちゃったから今更変えられないのよね」

「マジかよ……」


幼女は仕事が早く、既に手続き的なものは終わらせてしまっているようだ。幼女の溜め息がまた増える。


「てか、毒が充満してんだったら防護服でも着ればいいんじゃないか?そうじゃなくても神様ならそれっぽい事くらいは出来るんだろ?」


そう提案してみたところ、幼女の顔が何か信じられないものを見たかの様なものに変わる。ころころとよく変わる表情だこと…。


「あんた、ただのバカじゃなかったのね。その発想はなかったわ!」

「なんか、バカっぽい幼女にバカって言われると傷つくな…」

「誰が幼女よ!てか、こう見えても私もう千年は生きてるんだからね!すっごいお姉さんなの!」


バカは否定しないらしい。てか、千年も生きてたらお姉さんってより老婆なんじゃ…。たしかこう言うのをロリババアって呼ぶんだっけ?


「まあ、あんたの案でいくわ!とりあえず、もう一回転生ってきなさい!」


幼女が指をビシッと指して命令し、その指した指をパチンッ鳴らすと同時にまた魔法陣が現れる。

それが放つ光が視界を白く染めると共に、脇屋 楠ワキヤクスノキは二度目の転生をした。











白かった視界が一瞬で晴れ、そこは前回と同じ街の真ん中だった。

周囲の喧騒は店が立ち並ぶ商店街に相応しくガヤガヤと五月蠅い。


「ここは……、前と同じ場所か。前って言っても居たのはほんの数分だっただろうけど」

「正確には分じゃなく秒ね。前回は36秒で死んだわ」


背後の少し頭より高い位置から、先ほどまでで十分に聞きなれた声が聞こえて来る。


「うわ!よ、幼女!?てか、ちっさくねぇ!?」

「誰が幼女よ!それに私は女神本体の言わば分身体。女神本体ではないわ!知識とか精神とかは本物と比べても遜色ないほどにハイなスペックなの!まあ、今回はあんたの補佐として来たナビゲーションピクシーってとこかしらね!ピクシーみたいに赤髪翠眼じゃないけども!」


その無駄な気迫に気圧され、「そうか…」としか反応できない楠。てか、女神本体と同じ程度って、本体自体すでに低スペックなんじゃ…。


「てか、そう言えばなんて呼べばいいんだ?」

「呼び方?そうね……じゃあ、崇高なる麗しき女神様って呼ばせてあげる!」

「分かった幼女でいいんだな」


幼女が調子に乗ったので速攻で切り捨てる。


「なんでそうなんのよ!てか、幼女じゃないって言ってるでしょ!」

「あー、はいはい。で、幼女は具体的に何をしてくれて、具体的に何が出来るんだ?」


幼女と呼ばれたことに怒りながらも、幼女は彼女自身の仕事について説明を始める。


「まあ、私の本体から与えられてる仕事は主に三つ!一つはあんたが生きる為に必要な防護服(仮)の維持ね!二つ目はあんたが受けられない転生者用の基本サービスの代わりの補足!三つ目は本体の私用だからあんたに関係あるのはこの二つね!」

「へー、てか防護服の維持ってなんだ?」

「防護服じゃなくて防護服(仮)ね!えっとね、まずあんたがこの世界で生きていけるように、あんたの体の表面から一センチの範囲を地球とまったく同じ状態に維持してるの!これが防護服(仮)なんだけど、この範囲内においては外からは地球と同じ物質のみが、地球と同じ人間が生きられる割合でしか入って来ないようにしてるわけ!あんたにとって有害な魔素とかは入ってきた瞬間に分解、霧散するわ!」

「おぉ、すごく便利だな!」

「でもね、その防護服(仮)の座標は常に移動するし、あんた自身の身体的変化にも合わせなきゃいけないでしょ!どことは言わないけど下腹部のさらに下とか!範囲外へ出た先っぽから出血して死亡とかお笑いにすらならないわ!汚い!」

「お、おう……」


言わないとか言っておきながらもさりげなく説明し、最後には汚いと切り捨てる。こいつ、真正の隠れサディストだ!


「あ、それと表面から一センチの範囲は地球と同じって事は、この世界のシステムの恩恵をあなたは受けられないの!魔法はもちろんステータスも上がらないしレベルアップもないわ!」

「え、それ詰んでね!?」

「だから私がいるんじゃない!まあ、私は知識や精神は女神な本体と同レベルだけどステータスは高くないし、戦闘は出来ないけどね!だからナビゲートと通訳程度はするわ!」

「え、通訳って言語も違うのかよ……。すでに生きていける気がしないのだけれども……」


この先の人生に不安を抱きながらも、とりあえず今は何か行動を起こさなければいけない。

幼女が確かナビゲートしてくれるって言ってたから、とりあえずどうすべきかだけでも聞いてみるか。


「なあ幼女、今からってどうすればいいんだ?確か本来ならするべき事もステータス画面で見れるって言ってたし、そこらへんも教えてくれるんだろ?」

「だから幼女じゃ……。ああ、もういいわよ!で、なに?今からやる事だっけ?」


幼女は顔を顰めて異論を唱えようとしたが、言っても無駄な事を悟ったのか話題を変える。


「とりあえずこれからはお金稼がなきゃ生きていけないんだし、冒険者ギルドか商業ギルドにでも入ってみたら?傭兵ギルドなら簡易装備は支給されるけど、対人戦が苦手だったり人を殺すのが嫌ならやめておいた方がいいわよ。知能指数の低い魔物や動物との戦闘が比較的安全なのは、こちらが圧倒的な有利な環境で戦う事が出来るからであって、対人戦だとお互い平等な状況での戦闘が多いし、相手に実戦経験がある場合は圧倒的に不利よ」


幼女の解説に「そうかなのか」とだけ返す。確かに対人戦より魔物を狩る方が、人間の優位性をフル活用すれば安全かもしれない。そう言えば、俺が転生する前にまだ他に相手をしなきゃいけない死者がいるって言っていたし、他にも転生した人間もいるんじゃないか?


「そう言えば、他にも転生者っているのか?もしいるなら、そいつらは何してるんだ?」

「あー、今この世界には六人いるわね。てか、全員一回目のあんたと同じ日に転生してるわよ」

「同期の転生者がいたのか?」

「まあ、今のあんたからしたら皆先輩だけどね。あんたが一回目に死んでから四十九日経ってるし」

「え!?なんで?」


自身が死んだと知覚してから体感時間的にはそれ程経っていないはずだ。どこでそれほどの時間が流れたんだ?


「そりゃ、人の魂が死んでから天に召されるまで四十九日掛かるのはどこの世界でも一緒に決まってるでしょ。同じ魂使い回してるんだし」

「じゃあ他の転生者って今何してんだ?」

「確か半数は冒険者になってたはずよ。他の転生者だと、一人は最年少宮廷魔術師になって騒がれてたはず。もう一人が盗賊ギルドで元気に義賊義賊してるわ。最後の一人は勇者として帝国の城に捕まって討伐系の何でも屋と化してたと思うんだけど、雑魚いし興味ないわね」

「なんか、置いて行かれた感が……」


一ヵ月と少し、それだけでも大きな差を付けられているだろう。

俺には無いと言っていたが、他の転生者には魔法もスキルもレベルアップもあるらしい。

もし前世でしたゲームの様にすぐレベルが上がるのであれば、四十九日と言う時間は重大な遅れだ。正直、不味い。


「まあ、魔王が復活して来たら全員またステータス画面のクエスト通知で集めるつもりだけど、それまでは放置でいいかな。結構順調に強くなってくれてるみたいだし」

「クエスト通知?」

「そう、転生者が何をしていいのか迷わない様に、勝手に強くなってくれるようにシナリオクエストとして指示を出してるの。クエストをクリアするとそれなりの報酬を送ってるわ」

「なんかそれ羨ましいな。俺には無いんだろ?」

「あんたにはその変わり私が付いてるじゃない!」

「それは頼もしいことで」


正直、他の転生者同様のシステムの方がありがたかったが。


「で、俺はどうしたらいいんだっけ?」

「んー、とりあえず冒険者ギルドにでも行ってみたら?」


幼女の提案に「そうだな」と軽く返し、俺達は冒険者ギルドに向けて歩き出した。













次回は冒険者ギルド。

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