第七話 ブラックモード、発動
昨日は、すごく疲れた。
アテレコすることになっちゃうし、放課後に先輩たちにしごかれるし。
私は通学路を通りながら、桜を眺めた。
「あ!杏仁豆腐さんだぁ〜」
うげ。楓先輩。
「おはようございます」
「おはよぅ〜」
昨日は、楓先輩も厳しかった。この人は、二重人格なんじゃないだろうか。
「そういえば、楓先輩はこの辺に住んでるんですか?」
「そうだよぉ〜。あの辺かなぁ」
「結構近いですね」
「そうだねぇ〜。今度遊びに行ってい〜い?」
一昨日の記憶が頭によみがえる。
そして、私は笑顔で言った。
「散らかさないならokですよ。」
「うん、約束ね〜」
私は下駄箱のほうへ行き、靴を履き替えようとした。
「あ・・・」
私の下駄箱の中には、一通の手紙があった。
「どうしたの?杏仁さん・・」
運悪く、楓先輩が現れた。
「なぁに?それ・・・」
「あっ」
楓先輩のブラックモードが発動し、楓先輩は下駄箱に入っていた手紙を取った。
楓先輩は、手紙を読み上げ始めた。
急な手紙で驚かせてごめん。
安藤に、話したいことがあります。
時間があれば、放課後に体育館裏まで来てください。
「べただねぇ〜・・・」
「・・・楓先輩?」
「ばっさり断りなよぉ。無名だし」
「あ・・・はい。放課後は部活もありますし・・・できるだけ早く終わらせますね」
楓先輩のブラックモードが解けた。
「うん!まってるからねぇ〜。早く行こぉ〜」
「はい」
中休み。
私がゆったりと読書をしている時だった。
ズパァァァァァン!
「ユズキィィィィイィ!!」
急に教室のドアが開き、部員(楓先輩と欅先輩除く)がやってきた。
「なっ、何ですか先輩方」
「何ですかじゃないだろユズキィィィイィィ!!」と、マキ先輩。
「お前がラブレターもらったって話が!!」と、冬馬先輩。
「もらいましたけど・・・ダメですか?」
「待ち合わせの時間はいつだ!?」と、カオル先輩。
「ぇ・・・放課後、ですけど」
「よし、殺そう!部活の時間を邪魔するやつは殺そう!」と、カイ先輩。
「そうだぁー、殺すぞーぅ!」と、マキ先輩。
「ま、待ってください。私がちゃんと断りますから、その・・・」
えーと、こういう時ってどう言えばいいんだっけ?・・・余分じゃなくて・・・えーと・・・・。
あ、思い出した。
「余計」
部員たちが硬直した。
「なことはしなくていいですよ」
「ユ・・・」
「はい?」
「ユズキのバカァァァァァ!!!!」
マキ先輩、カイ先輩、冬馬先輩、カオル先輩は走り去って行った。
私はそれを、口をあけて見送った。