第六話 アテレコデビュー+冬馬の心境
「すみません、昨日は私のせいで・・・」
私はマキ先輩たちに頭を下げた。
「心配要らないって。な?マキ」と、カイ先輩。
「?」
「うむ。心配は要らぬぞ、ユズキ。そのかわりに、いっしょにアテレコするんだからな。」と、マキ先輩。
・・・・え?
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??」
「何驚いてるんだ?」と、カオル先輩。
「そりゃ、驚きますよ!私みたいなド素人がアテレコなんて・・・」
「ま、第十話までの絵は仕上がってるから、ゆっくりでいいぞ」と、冬馬先輩。
「なんたって放送まであと一週間しかないからねぇ」と、楓先輩。
「えぇぇぇぇぇえぇえぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??」
「杏仁の役は‘杏‘っていう女の子の役だ。まぁ・・・悪役かな。」と、欅先輩。
「でもまぁ杏仁に似てるし・・・・いい役だと思うぞ。じゃあ放課後、放送室でな」と、マキ先輩。
マキ先輩の最後の言葉に合わせて、皆は去ってしまった。
そんなぁ・・・・私がアテレコなんて・・・。
中休み。私が朝のショッキングな出来事でうなだれていると、未冬ちゃんがやってきた。
「安藤さん・・・」
「んー・・?なぁに?」
「ちょっと、ここでは言えないから・・・」
未冬ちゃんはグラウンドを指差した。
体育館裏。
・・・何?私、未冬ちゃんに恨まれるようなこと、した?
「私ね、昨日見ちゃったんだ・・・」と、未冬ちゃん。
「・・・何を?」
「安藤さんが、冬馬先輩に抱きついてるところ」
「!!!!!!?????」
な・・・何!?冬馬先輩が私に抱きついたんじゃなくて!!?もしかして、チョコを食べて意識が喪失したときに・・・・!?
「私ね・・・冬馬先輩のこと、好きなの」と、未冬ちゃん。
「へぇ・・・」
「安藤さんは・・・?」
「好きじゃないよ。」
未冬ちゃんの顔が明るくなった気がした。
「・・・かといって嫌いでもないし、好きでもない。友達以下、知り合い以上ってとこかな」
「へぇ・・・そっか。でも、抱きついてたのは・・・?」と、未冬ちゃん。
「ちょっと・・・具合が悪かっただけ。勘違いさせてごめんね」
未冬ちゃんは笑顔で去っていった。
冬馬は、軽いショックを受けていた。
体育館裏で、ユズキと未冬の話を聞いてしまったから。
何で傷つくのかも冬馬は自覚なしだが、多少はムシャクシャしているようだ。
「どうしたの?冬ちゃん」と、楓。
「いや〜・・・なんでも〜・・・?」
「杏仁さん?」
「ペぶろ!!?」
楓はにこりとわらう。
「冬ちゃんが変な言葉を使うときは、図星を突かれて困っているとき〜」
「うっ、うるせぇ!!」
「ホントにすきなんだねぇ、杏仁さんのこと」
「―――ぇ・・・」
楓は何も起こらなかったかのように、冬馬の前から去っていった。