第五話 ユズキの手作りカレー
私は、頭痛で目が覚めた。
それにしても、何で自分の部屋に居るのかがわからない。
両親は海外出張でいないはずだから、帰られるわけが無い。
確か私は放送室に居て、机の上のチョコレートを食べて、その後に眠くなって・・・。
眠くなったあたりから、記憶が途切れている。
私はベッドから起き上がり、時計を見た。・・・もうすでに、学校の門が閉じている時間帯だ。
私は諦めて、漫画を引っ張り出した。随分と古い漫画だが、結構笑える。
私が漫画で笑っているときだった。
「ゥアハハハハハハ!!」
さっきもお話した通り、両親は海外出張でいなく、私一人なのです・・・一人なはず。
私は用心深く階段を下り、手には木刀を持っていった。
そこに居たのは、恐れ多き理事長の息子率いる部員たちだった。
「杏仁!おきたか!」と、マキ先輩。
「ゥアハハハハハ!!見ろ杏仁!マイケルが・・・マイケルが・・・ゥアハハハ!!」と、カイ先輩。
「杏仁さぁん、お菓子ないのぉ〜?」と、楓先輩。
「杏仁!今日の晩飯は何だ?」と、カオル先輩。
「杏仁!ロデオボー○は無いのか!?」と、冬馬先輩。
「杏仁・・・すしの出前を・・・」と、欅先輩。
「・・・・何やってんですか!不法侵入ですよ!それと、カイ先輩もマイケルとジャクソン君の漫画をしまってください!」
皆、やりたい放題。
それに、散らかし放題。
「杏仁さん、お菓子・・・」
「黙ってください」
私は楓先輩に軽く笑いかけた。
「自分の食べたいものとかを要求する前に!散らかしたもの片付けてください!!」
「えー」と、部員(欅先輩除く)。
「片付けないと、家からつまみ出しますよ?」
私が言うと、部員たち(今度は欅先輩介入)は部屋を片付け始めた。
「あと、晩御飯は私が作りますから。できるまで待っててください。」
楓先輩とマキ先輩が目を輝かせた。
私はキッチンへ向かい、簡単なカレーでも作ることにした。
幸い、材料は冷蔵庫にすべて入っていたので、私は早速きり始めた。
「あっ」
しまった。野菜を千切りにしてしまった。
「ああっ」
しまった。肉を焼いてしまった。
「あああっ」
しまった。ルーを全部入れてしまった。
「ああああっ」
しまった。カレーのそこが焦げてしまった。
そんなこんなで、私の手作りカレーが出来上がった。
「はい!召し上がれ〜」
マキ先輩たちは怪訝そうな顔をして、カレーの入った皿を覗き込んだ。
「おい、杏仁・・・イモ、ちゃんと入れたか?」と、マキ先輩。
「え?入れましたよ?もしかしてとけちゃってます?」
「おい、杏仁・・・・カレーに油が浮いてるけど・・・」と、カオル先輩。
「あー、お肉、間違えて焼いちゃったんですよ。」
「杏仁・・・カレーがすごくドロドロだけど」と、カイ先輩。
「あー、ルー全部入れちゃったんですよ。」
「杏仁・・・このカレー、苦いぞ」と、冬馬先輩。
「あー、焦がしちゃったんですよ。文句あるなら、食べなくていいですよー」
「いえ!ないです!」と、部員たち。
私はおいしそうに(無理してる)食べてくれる先輩たちを見守っていた・・・。