第四話 記憶消失のチョコレート
五人の鬼に襲われたけれど、何とか生還することができた。
私の心の中は、未冬ちゃんに申し訳ないという気持ちでいっぱいだった。でも、欅先輩直伝の誤魔化しで、なんとか傷つけずにすんだ。
私はかなり安心した。未冬ちゃんが泣いちゃうんじゃないかなぁとか思っていたから。
私が安心しきっていると、お昼の時間がやってきた。
「未冬ちゃん、一緒にお昼どう?」
未冬ちゃんは、黙って扉のほうを指差した。
「?」
私が、未冬ちゃんが指差した方向を見ると、そこには上級生らしき女子が三人。何のようだろう。
女子一「ちょっとさぁ、来てもらっていいかな」
「・・・?はい」
呼び出されたところは体育館裏。いかにも、って感じだ。
女子三「あんたさぁ・・・マキ君の何なわけ?」
「へっ!?」
女子二「ただの取り巻きなの?彼女なの?」
取り巻きでも彼女でも無い。ただの部活仲間だ。
やっと状況が理解できてきた。つまり、
私がマキ先輩のクラスへ行く。→女子三名が勘違い。→呼び出し。
「取り巻きでも彼女でもないです。マキ先輩とは、ただの部活仲間です」
女子たちが顔を見合わせる。多分、勘違いしたことを恥じているのだろう。しかし、
女子一「へぇ・・・でも、クラスとかには押しかけないほうがいいよ。勘違いしないでよね?あんたがマキ君の特別なわけじゃないんだから」
そういい残し、女子たちは去っていった。
私は腕時計を見た。もう、ほとんどお昼ごはんを食べる時間が無い。
私はダッシュで教室に戻った。
放課後。私は放送室にやってきた。
早く来すぎただろうか。放送室には誰も居ない。
それにしても、おなかが減った。お昼は、ほとんど何も食べていないから・・・。
先に絵を書いていようかな、と思って、机にかばんを置いた。
「・・・・・あれ?」
机の上には、チョコレートの箱があった。
私はその箱を開き、中を見る。おいしそうなチョコレートが並んでいる。
私はなにも気にせずに、おいしそうなチョコレートを口に入れた。
チョコレートをかんだ瞬間に、私の意識は遠のいていった。
マキとカイ、冬馬、欅、カオル、楓たちは、少し放送室に行くのに遅れていた。
掃除が長引いたからだった。
「あー・・・平凡な高校なのに、なんでこんなに廊下が長いんだ?理事長の息子ー」と、冬馬。
「知らん。設計した人に文句を言ってくれ」
「もう走るの疲れたぁー。どうにかしてぇ、理事長の息子さん〜」と、楓。
「お前はもう少し体力をつけろ。」
「廊下を長くする金があるなら、もう少し学費を抑えてもいいだろ、普通。」と、カイ。
「同感だ・・・・」と、カオル。
「それに対しては同感だな。」
マキたちは長い廊下(無駄に)を左に曲がり、放送室の扉を開けた。
「すまんユズキ!おそくなっ・・・・」
放送室に居たのは、眠りこけたユズキ(通称杏仁豆腐)だった。
カオルがユズキにかけよる。
「ユズキ!?」
「ん・・・」とユズキ。
ユズキはむくっと起き上がり、マキたちの顔を見ながら目を細めた。
「杏仁豆腐さん?」と、楓。
「うるさいな・・・・」と、ユズキ。
ユズキの言葉が発されたとき、皆いっせいに同じリアクションをとった。
「!!!???」
ユズキは面倒くさそうに椅子に座り、机をバンバンと叩きながら言った。
「誰か!お茶もってこい!!」
すると、カイが小声で、
「やばいぞ!ユズキの人格が反転している!」
「ゆずちゃん、こわいぃ〜・・・」と、楓。
「あ・・・・あれ、ボンボンチョコレート!?」
マキは、机の上にあったチョコレートの箱を指差した。
「ユズキ・・・あれ、食ったのか・・・」と、冬馬。
「ボンボンチョコレートで酔った人、初めて見た・・・」と、欅。
ユズキは待ちきれなくなったのか、両腕を振り上げながら襲い掛かってきた。
「はよぅお茶用意せんかい!!」
「うおぉぉ!!??」
襲い掛かってきたと思いきや、ユズキはへろへろと冬馬の上にかぶさった。
マキは目を点にした。
「ねてる・・・?」
「寝てる。」と、冬馬。
冬馬はユズキの寝顔を見ながら、微笑んだ。