第二話 欅の本性
昨日は、本当に疲れた。
アニメ製作部の人たちに変なあだ名つけられるし・・・もう、最悪。
私、安藤ユズキは俯きながら廊下を歩いた。
その時、放課後を告げるチャイムがなった。
そして、私はそのチャイムと共に、マキ先輩の脅し文句を思い出した。
「おい、ユズキ!私の父はこの学校の理事長だ!もし放課後に来なかったら、この学校に居られなくしてやるぞ!」
追い出されるのは困る。この学校は、我が家の財産でようやく通える学校だったから。
私は、嫌々ながらも放送室のドアを開けた。
そこには、左から楓先輩、欅先輩、マキ先輩、カオル先輩、カイ先輩、冬馬先輩の6人がそろっていた。
「遅いぞ!ユズキ!」と、マキ先輩。
「はぁ・・・すみません」
「そうだー、遅いぞ、杏仁!」と、冬馬先輩。
「その呼び方はやめてください!!」
私と冬馬先輩の取っ組み合いに、マキ先輩が割って入った。
「あー、ユズキ!欅の手伝いをしてやれ。」
「あ、はい。」
私はパイプ椅子を欅先輩のところまで引っ張っていった。
「あの、欅先輩。私は背景を担当していいですか?」
「あぁ、うん。頼む」と、欅先輩。
昨日、マキ先輩から聞かされたのだけれど。私たちが作るアニメのストーリーは、男の子のルディ(マキ先輩)が、不思議な国に迷い込んでしまって、その国に同じく迷い込んだ男の子のルーシィ(カオル先輩)と力をあわせてその国から脱出するというお話らしい。ちなみに、楓先輩は出てくるウサギで、カイ先輩は意地悪な馬、冬馬先輩は鍵を握るお姫様なんだそうだ。
「そういえば、欅先輩はアテレコしないんですか?」
私がそういったとき、欅先輩は手を止めて固まってしまった。
「あのー、欅先輩?」
欅先輩は、話そうとしない。
そこに、楓先輩がやってきた。
「あのねー、杏仁豆腐さん。欅ちゃんは前のアテレコでかんじゃったから、それがトラウマにー・・・・」
楓先輩がまだ言いかけてるときに、欅先輩は楓先輩の口をふさいだ。
「かんじゃったんですか」
「・・・・・うん・・・・・・・」
欅先輩の自信なさげな声に、笑ってしまった。
欅先輩は落ち込んだのか、俯いて再び絵を描き始めた。
でも、その顔はかすかに笑っているように見えた。
マキはアテレコ室のガラスに張り付いて、欅とユズキを見た。
「何か仲良くねー?あの二人・・・・」
「そうか?」と、カオル。
「でも、お友達だから、仲いいのはいいことだよねぇ〜。はやく打ち解けてもらいたいしねぇ」と、楓。
その言葉に、マキの瞳が輝いた。
「そっかぁ!お友達かぁ〜」
「どうした?マキ」と、カイ。
「お友達って言うことで、安心したんじゃねーの?」と、冬馬。
マキは、スキップをしながら鼻歌を歌っていた。