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第十八話 ゴールデンウィーク2日目・2

 ゴールデンウィーク2日目の、午後2時。

 

 「ぅわぁ〜・・・」

 私は、その風景に目を細めた。

 「久しぶりに来たよぉ、ここ♪」

 楓先輩は、ぴょこぴょこと小さくジャンプする。

 「本当久しぶりだなー。最後に来たのいつだっけ?」

 カオル先輩は、ガラスをつつく。

 「ぅおおおぅ!?杏仁、ハブが!ハブが!」

 マキ先輩は、何だか絶叫している。

 「杏仁、後でハブ対マングースが・・・」

 地味なことに興味しんしんな、欅先輩。

 「杏仁、あっちでは巨大ムカデ対ネズミが!」

 グロテスクな妄想を抱いている、冬馬先輩。

 「杏仁!あっちではマイケルとジャクソン君のショーが・・」

 妙にコドモっぽいショーを見ようとしている、カイ先輩。

 

 そう。今日は、暇なので動物園+水族館に来ちゃってます。

 

 私は呆れ半分、冗談半分で先輩方に声をかけた。

 「ほら先輩方!早く来ないと迷子になっちゃいますよ!」

 「む、心配要らんぞ、杏仁。私たちはこう見えても17歳なのだ。」

 「そういうところが心配なんですよー!」

 私は先輩たちを引っ張り、イルカトンネル(ガラスのトンネルの上を、イルカが通る)を一緒に通った。

 何だかマキ先輩は、トンネルの天井をを見ながらオドオドしていたが、私は気にせずに先を行った。

 が、それが間違いだった。

 

 みんな、見事にはぐれてしまっていた。

 

 「あれ〜・・・先輩〜・・・?」

 私は、先ほどのマキ先輩のようにオドオドしながら道を進んだ。

 ケータイで連絡をとろうものの、私のケータイは通話機能がついていない。そして残念なことに、先輩たちのメールアドレスも知らない。

 私は諦めて、人だかりの出来ている売店へ向かった。

 売店にも、先輩たちは居なかった。

 私はアイスクリームを食べながら道を進み、水族館の敷地から、動物園の敷地に移った。

 動物園の敷地にも人だかりが出来ており、ここだけ地球温暖化が起きているんじゃないかと言うほどに暑かった。おかげで、アイスクリームはすぐに液体になった。

 私はハブ対マングースの場所を練り歩き、グロテスクな最期のネズミが居る場所も練り歩いた。

 が、先輩たちは一人も見つからなかった。

 私は動物園の敷地から出、マイケルとジャクソン君のショーがやっている場所を見に行くことにした。

 

 

 マキは一人、「迷子」になっていた。

 本人は無自覚だが、これは十分に迷子と言える。

 「あんにーん・・・?」

 後輩の名を呼んでみるが、当然返事はない。

 マキは諦めて、イルカのトンネルを再び通りぬける。

 マキは、このトンネルは嫌いであった。

 嫌いというか、怖いのだ。

 このトンネルのどこかから水が漏れてきたら・・・というネガティブな思考にとらわれすぎているからである。

 マキは、売店を探した。

 ひょっとしたら、のんびりアイスでも食べているかもしれない・・・などと考えながら。

 でももし本当にのんびりアイスを食べていたら、ちゃぶ台返しの1回や2回は許してほしい。

 マキは首をひねり、辺りを見回す。

 ユズキも楓もその他も、みんないなかった。

 マキは、もう色々と疲れたのでアイスを買おうと思ったが、残念なことに小銭も札も無かった。

 マキは諦めて、売店を離れた。

 ハブ対マングースの場所にもユズキたちは居なく、巨大ムカデ対ネズミの場所にも居なかった。

 マキは再び諦め、マイケルとジャクソン君のショーを見に行くことにした。

 

 

 やっぱり、いない。

 諦めて別の場所を探そうかな・・・。

 そう思ったときだった。

 

 「杏仁!」

 

 マキ先輩だった。

 「・・・先輩・・・」

 「杏仁、カオルたちは見つけたか?」

 「いえ、まだです。先輩は?」

 「私もまだだ」

 「そうですか。でも、もう少しゆっくりでいいんじゃないですか?私もコレ、見たいし・・・・。」

 私は先輩に笑いかけた。

 「そっか、そうだな」

 

 

 ダメだ、ダメだ。

 うぅーん、今言ってしまわないと・・・。

 「ユズキ」

 「はい?」

 

 「すき、だ」

 

 

 

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