第十六話 ゴールデンウィーク一日目・2
私はケータイの電源を切った。
「姉が、夜までに帰れないかも、だって。」
「ぇ」
「まぁ、いいんじゃないですか?姉だってもう18ですし。好きなようにさせとけば、そのうち帰ってきますよ。」
「あぁうん、そうだな。ひとり立ちを考えてもおかしくない年頃だしな・・・アハハハハ」
「・・・お風呂、入ります?もう焚いてありますよ」
「うむ。オムレツも食べ終わったし、はいってくるぞ!」
マキ先輩は脱衣所に駆けていった。
それにしても暇だ。
私はオムレツの皿を洗いに、キッチンへ向かった。
・・・そうだ。先輩がお風呂に入っている間に、アイスでも買いに行こうかな。
私は二人分の皿を洗い、手紙を書いて家を出て行った。
アイスはコンビニが一番安いので、私は家の一番近くのコンビニまで徒歩で行くことにした。
「あれっ、安藤さん?」
「あ・・・未冬ちゃん、こんばんは。」
コンビニには、未冬ちゃんが居た。
「安藤さんは、明日からどこか行くの?」
「・・・いえ。先輩のお守りもありますし。」
未冬ちゃんは目を見開いた。
「先輩って、マキ先輩!?」
「はい。旅行に置いていかれたみたいで・・・家で預かることになったんですよ」
「いーなー!うらやましー!」
「まぁ、先輩が居るだけ、にぎやかで楽しいですよね」
未冬ちゃんは目をぱちくりさせた。
「・・・そういう意味じゃないんだけど・・・」
「え?」
「だって!あんなかっこいい先輩と連休一緒に過ごすんだもん、そりゃーラブイベントとかに期待しないと〜〜」
「・・・そういうものですか?」
「そういうものでしょう、女子の本能として。」
私は小首をかしげながらアイスのコーナーへ向かった。
「だって、先輩とはただの部活仲間ですし、ラブイベントも何も・・・」
「はぁ・・・こりゃあマキ先輩たちも苦労するわ・・・」
「・・・へ?」
「なんでもない。じゃあ、私は帰るね!バイバーイ」
「はぁ。」
私はアイスを3つ買って、コンビニを後にした。
家から一番近いコンビニと言っても、家からはだいぶ離れている。
もう空は黒くなってきている。
私が空を眺めていると、誰かとぶつかった。
「あ、すいません。」
「あ〜、杏仁さんだぁ〜」
楓先輩だった。
「楓先輩。こんばんは」
「こんばんはぁ」
「・・・家にマキ先輩が居るんですけど、楓先輩も来ますか?」
「うん、いくいく〜。」
こうして、楓先輩も家に来ることになった。
「ただいま〜。すいません、遅くなりました」
「おかえりー杏仁、遅いぞぉ」
「ただいまぁ〜、マキちゃん」
「お、何だ。楓も居るのか?」
私はジャンパーを脱ぎながら言った。
「はい。偶然見つけたんですよ」
楓先輩は、マキ先輩の耳元で何やら囁いた。
「何おぅっ!そんな事は絶対に無いぞぉぉ」
マキ先輩は何やら焦っていたが、その光景は何だか微笑ましかった。
夜まで散々騒いで、楓先輩は帰っていった。
こうしてゴールデンウィークの一日目は無事に終わった。