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第十二話 ユズキの好きな人?

 「お風呂、空きましたよー」

 私は、脱衣所から居間に向かって叫んだ。

 「おーう」と、マキ先輩。

 後から、マキ先輩が返事をする。

 ・・・こういう夫婦みたいなシチュエーションは、実は苦手。ちょっと照れる。

 私が変な妄想を描いていると、

 「マキちゃん、お風呂はいるのー?なら僕も入る〜」と、楓先輩。

 「・・・見た目は子供。カラダは・・・」

 「マキ先輩、いやらしいこと考えてないで、とっととお風呂に入ってください!」

 私はマキ先輩の爆弾発言を遮り、脱衣所を出た。

 脱衣所を出て早速、

 「何や?いいフインキや〜ん」と、お姉ちゃん。

 「マキ先輩とは、ただの部活仲間!お姉ちゃんも人の心配してないで、彼氏でもつくれば?」

 「そやなぁ・・・。でも、ワシの美貌やからなぁ・・・彼氏、何百人もつくれるんちゃう?」と、お姉ちゃん。

 「・・・それ、男引っ掛けすぎた事の言い訳?」

 「ちゃうちゃう!わからんやっちゃなぁ〜、ホンマに!」と、お姉ちゃん。

 「関西人は関西に帰れ。」

 「実の姉に何やねん、その態度は!コロが悲しむで〜」と、お姉ちゃん。

 「ちょっとお姉ちゃん、コロの話は・・・」

 そのときだった。

 「コロって誰だ?」

 「・・・カオル先輩・・・」

 お姉ちゃんはさもおかしそうに笑った。

 「あー、聞いてないん?コロっていうのは、ユズキの好きな男やでぇ」

 

 「え・・・」

 カオルは、一瞬耳を疑った。

 しかし、クヌギは確かに言ったのだ。

 コロは、ユズキの好きな男だと。

 「もー、お姉ちゃん!」と、ユズキ。

 そしてクヌギは、カオルの耳元でささやいた。

 「何や、ショックかいな?」

 カオルは、誰が見てもわかるほどに慌てた(ユズキはわかっていません)。

 「いや、全然そんなんじゃないっすよ!」

 「ホンマかいな〜?」と、クヌギ。

 ユズキだけが、事情を理解していないらしい。

 「もう、お姉ちゃん!先輩のことからかうのやめてよ。・・・先輩、布団敷きに行きましょう」と、ユズキ。

 「あぁ」

 二階へ行き、カオルはユズキと布団を下ろした。

 しかし・・・カオルはコロのことで、もやもやしていた。

 「なぁ・・・ユズキ」

 「何ですか?」と、ユズキ。

 「コロって・・・」

 ユズキはほんの少し、頬を朱に染めた。

 「あぁ・・・コロ、ですか。あだ名なんですけど、色々な事があって定着しちゃって・・・。コロは大げさに言うと幼馴染で・・・お姉ちゃんが家出する前まで、ここにいたんですよ。・・・ながい間を共に過ごしただけあって、そりゃあまぁ色々ありましたよ。一緒に散歩に行ったり・・・」と、ユズキ。

 「今でも好きなのか?」

 「それはもちろん・・・コロはどうだか知りませんけどね。」と、ユズキ。

 そこに、クヌギが現れた。

 「あ〜・・・勘違いしちゃあいかんよ、カオル君。コロっちゅうんは、昔飼ってたポメラニアンの名前やで。コロコロしてるんで、コロや。」

 

 「でえぇぇぇぇえぇぇぇぇぇえぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇえぇぇぇぇえぇぇぇぇ!!??」

 

 「何や・・・知らんかったんかいな」と、クヌギ。

 「えーと、先輩・・・何だと思ってたんですか?」と、ユズキ。

 「人間・・・」

 

 その日は、コロの話を何度も蒸し返されるはめになった。

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