第十一話 姉との再会
「ただいまー」
私が、買出しから帰ってきた時のことだった。
「おかぇりー!それと久しぶりー!」
久しぶり・・・?
私は、私に挨拶を言った人の顔を見た。
それは、どこか見覚えがあって・・・。
「お姉ちゃん!!??」
「いやー、ホンマ、うちのユズキがお世話になってー・・・」と、姉。
「エヘへへ。そんなことないよぉ〜。杏仁さんはたまーに酔っちゃうこともあるけど、酔わなかったらとっても可愛くてやさしーのー」と、楓先輩。
「何やー、杏仁。自分、何食って酔ったん?教えてやー」と、姉。
「お姉ちゃんまで、杏仁って言うのやめてよ・・・」
「あはは、スマンスマン。ほんでユズキ、自分、何食って酔ったん?」と、姉。
「ボンボンチョコ・・・」
「プッ」と、姉。
「・・・・・お姉ちゃん。鍋作るんだけど。手伝ってくれない?」
「いいで。自分一人やったら心配やしな。」と、姉。
「何その言い方。私の料理が心配なら、お姉ちゃんだけ食べなくてもいいのよ」
「だって自分・・・その料理でワシを殺しかけたことあるやん。」と、姉。
藤山含む、周りにいた全員が吹きそうになった。
「それは六歳の頃の話でしょ!?もう!大体、何で家出した人がここにいるのよ!」
「あー・・・それやけどな。ワシ、男引っ掛けすぎて、行き場なくなってん(笑)」と、姉。
「バカ!」
「さすが安藤さんのお姉さんですね〜・・・」と、藤山。
私は、反射的に飛びのいてしまった。
「何でここに藤山がいるんですか!」
「僕もここでお泊りさせてもらうことになりました〜」
「ストーカーと一つ屋根の下なんて嫌です」
私がそういうと、ひょこひょこと楓先輩がやってきた。
「大丈夫だよぉ、杏仁さん。僕が一緒に寝てあげるから〜」
「なっ、何!?」
ソファで横になっていた一人が、過剰な反応を示した。
「よ・・・よし!杏仁!私も一緒に寝てやろう!」と、マキ先輩。
「遠慮しておきます。下心丸見えですよ」
私はそう言い残して、キッチンへ向かった。
「さっきお姉ちゃんは私の料理を馬鹿にしたけど・・・私が一人で鍋を作って、上手くできたら、さっきの言葉は取り消してね。」
「おー。望むところや。」と、姉。
ちなみに姉の名前は、安藤クヌギ。三年前に家出した十八歳。
姉が関西弁なのは、家出先が関西だったから。
何だかんだうるさいけど、昔はいい姉だった。
昔は。
「召し上がれー」
私を除いた全員が、鍋を覗き込んで怪訝そうな顔をした。
「なぁ、ユズキ・・・?何をどうしたらこうなるん?」と、姉。
「え?買ってきた材料を入れただけですけど。」
「まぁ・・・・問題は味やからな。味で勝負や。」と、姉。
私を除いた全員が、底が深い皿に鍋の具を入れる。
「・・・異臭が・・・」と、カイ先輩。
「あ、そうですか?文句があるなら、食べなくてもいいんですよ?」
「・・・杏仁は食べないのか・・・?」と、カオル先輩。
「さっき私、散々味見して、おなかいっぱいなんですよ。遠慮なさらずにたくさん食べてくださいね」
私を除く全員が、鍋の具と汁を口に入れた。
「どうです?我ながら力作だと思うんですけど。」
「安藤さん・・・あなた、科学部に入ることをお勧めしますよ。この腕なら、きっと活躍できますよ・・・」と、藤山。
「お褒めの言葉はうれしいんですけど。生憎、ストーカーのいる部活は入りたくありません」
私は一刀両断した。
「どう?お姉ちゃん」
「・・・・きっさまぁ・・・」と、姉。
「?」
「妹に料理で殺されそうになったの、これで二回目やでぇー!!来い!貴様を調教したる!」と、姉。
「え!?おいしくなかったですかぁ!?皆さん!」
私の質問は、虚しく響いた。