第十話 ストーカーの正体+お泊り
冬馬先輩鼻血事件の翌日。
「やっぱり、ストーカーですよ」
私除く部員たちは、怪訝そうな顔をした。
「昨日帰る途中に見たんですよ。チラッとですけど、電柱の後ろに・・・」
マキ先輩は立ち上がった。
「よし、こうなったら杏仁の家にお泊りするしかないぞ!」と、マキ先輩。
「待ってました〜〜〜」と、楓先輩。
何でそうなるのかが不明だ。
「え〜と・・・アテレコは・・・・」
「何を言っている!アテレコなんていつかでいいよ☆」と、マキ先輩。
「アテレコはもう少しで終わるんだよぉ〜〜。だからいいんだよ〜」と、楓先輩。
「そうだぞ!アテレコより部員のほうが大事だからな!」と、冬馬先輩。
「・・・別にいいですけど。冬馬先輩?」
「なんだ?杏仁」と、冬馬先輩。
「家の布団とかに鼻血たらさないでくださいね」
私は、笑って続けた。
「もしもたらしたら、家からつまみ出しますんで」
「は、はい。」と、冬馬先輩。
そこに、カオル先輩が割って入った。
「杏仁!ストーカーはどんなやつだった!?」
「ストーカーですか・・・チラッと見えただけですけど、黒っぽいものが見えました」
「背は?」と、カイ先輩。
「私より高いです。180・・・くらいかなぁ」
「う〜む・・・」と、カオル先輩。
「心当たり、ありますか?」
「藤山・・・?」と、カイ先輩。
「あぁ・・・あの科学オタクですか。ストーカーとかしそうなフインキですよねぇ・・・」
みんな、絶句した。
「どうしました?」
「いや・・・何でも・・・」と、マキ先輩。
「何でもない、よぉ〜」と、楓先輩。
「そうですか。あぁ〜・・・泊まりに来るなら、ちゃんと用意してきてくださいね。パジャマとか、貸せませんから」
「じゃあ用意してくるねぇ〜」と、楓先輩。
「じゃあ、一回解散!集合は、杏仁の家だ!」と、マキ先輩。
「ラジャッ」と、部員たち。
私は部員たちに手を振ると、放送室を出た。
そういえば、買い物にも行かなきゃいけない。我が家には、ほんのちょっとの食材しかなかったんだ。
大人数だし、お鍋とかがいいかな。じゃあキノコとか買わないと。
私は駆け足で学校を出て、登下校の道に入った。
鍋はいいけど、予算の問題だ。足りるかな。
前も言った通り、私の両親は海外に出張でいない。そして、そのバカな親たちは生活費を全部持っていきやがったので、我が家には金はあんまり無い・・・。なんというか、ある金はすべて援助金だ。
私は石ころを思い切りけった。
その石ころは、私の前のほうにあった電柱に当たり、その電柱からドクロの仮面が顔をのぞかせた。
藤山(もうすでに呼び捨て)だった。
「ストーカーはあなたですか」
「人聞きの悪い〜」と、藤山。
「何ですか?また、クソ不味いチョコでも食わせるつもりですか。」
「いいえ〜、伝えたいことがあるんですよ〜」と、藤山。
「早く言ってください。あなたと喋ってると、イライラします」
「好きです!」
・・・・・・・・ぇ?
「・・・・・・」
「好きです!」
「ぐぇぶッ!?」
何じゃこいつは!いきなり抱きついてきたよ。
「あっ、痴漢はっけ〜ん」
ズドガ!
飛び入り参加の楓先輩の跳び蹴りが、直に藤山に入った。
「大丈夫か!?杏仁!」と、マキ先輩。
「あのー・・・あれは藤山・・・ぐぇぶッ」
何だこいつは。いきなり抱きついてきたよ。
「あぁ!杏仁が痴漢に襲われている!」
ズドン!
カオル先輩のえぐるようなパンチが、マキ先輩の腹に入った。
「大丈夫か!?杏仁!」と、カオル先輩。
「あのー・・・あれはマキせんぱ・・・ぐぇぶッ」
こいつも何だ。いきなり抱きついてきたよ。
「大変だ!杏仁が痴漢に襲われている!」
メキャッ
カイ先輩のパンチが、カオル先輩にめり込んだ。
「大丈夫か!?杏仁!」と、カイ先輩。
「あのー・・・あれはカオルせんぱ・・・ぐぇぶッ」
こいつら、何だ!?いきなり抱きついてきたよ。
「あ!杏仁が痴漢に襲われている!」
ドギャン
冬馬先輩の跳び膝蹴りが、カイ先輩を吹っ飛ばした。
「大丈夫か!?杏仁!」と、冬馬先輩。
「あのー・・・あれはカイせんぱ・・・ぐぇぶッ」
ホント、何だ!?いきなり抱きついてきたよ!
「ボル●スキーック!」
ズガガガ
欅先輩のボル●スキックが、冬馬先輩を大変なことにした。
「大丈夫か、杏仁」と、欅先輩。
「あのー・・・あれは冬馬先輩です」
「え」と、欅先輩。
あたりを見渡すと、残骸が転がっていた。
楓先輩は、跳び蹴りの勢いを止められずに、遠く離れたところに転がっていた。
「あの・・・みなさん、そろそろ夕食にしませんか?」
残骸たちがよみがえった。