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ゆうしゃゆーしゃ

 勇者ねーちゃんを取り囲むようにした兵士たちは、物腰と口調は丁寧であったものの大人しくついていくことしか許可しようとはしなかった。

「……むぅ」

 不穏なものを感じた勇者ねーちゃんだったが、襲いかかってきたごろつきとか盗賊ならまだしも、流石に城に勤める兵士に剣を向けるのはためらわれたようで、大人しくついていくことにしたようだ。

 ……しかし、なんだろな?

 犯罪者を捕まえたって感じとは、すこしちがうっポイ?

 武器も取り上げられてねーし。

『そのわりにゃ、強制召喚っぽいけどなー。つかまれたり縛られたりはしてないけど、両脇に前後をがっちり固めて、逃がす気まったくないやろー』

「にゃー……」

 ああ、ぬこもおびえとるやないかー。

『おまいのにゃん言葉通じるんか?』

 猫語とちゃうからわかんね。

『つかこのぬこ、俺をかじるってゆーかねーちゃんのおっぱいに興味ありすぎやー』

 えろぬこかっ!?

 なめねこなのかっ!?

『なめんにゃよー』

「にゃー……」




 でかい街だとは思っていたが、どうやらお城のある城下町だったらしく兵士たちに連れられて勇者ねーちゃんは城に連行された。

 すわ地下牢か、と思っていたら、なぜかたくさんのメイドさんに連れられてお風呂タイムに。

「む、パンタロゥはだめだ」

 俺らも洗濯しようとしたのか一人のメイドさんが持っていこうとしたけれど、勇者ねーちゃんが止めた。

 俺ら、自己再生とか防汚とか汚物消去とかで常にぴっかぴかの新品ですからっ!

 メイドさんに手洗いされるというのも、ちょっと心惹かれるものがあったけどー。

『……ママさんの手がなつかしいなー、おい』

 勇者ねーちゃんは雑だからなー。

「なー! にゃー! なー、にゃーっ!?」

 お、ついでに三毛猫も洗濯されたみたいやな。

 殺されそうな声だしとるわ。

『ぬこは水嫌いだからなー』




 ぴかぴかになった勇者ねーちゃんはなぜかドレスを渡されたのだけれど。

 首を横に振って、俺らを身に着けた。その上にいつもの巻きスカートを付ける。

 メイドさんたちは渋い顔をしたものの、最後にはあきらめたようだ。

 まあ、防御力とか比較にならんしね。

 なんでこんなとこ呼ばれたのかわからんから勇者ねーちゃんが警戒するのも当然だネ。

『けど、パッと見は山賊っぽいよなー。俺らの防御力上がってからは上の鎧もつけなくなったし』

 まあなー。戦闘スタイルもバーサーカーっぽいもんな、時々。

 しかし、これはあれかね?

 なんかお偉いさんの前に突き出される感じかね?

『そんなかんじやねー』




 案内されて、入った大広間には。

 ずらりと、偉そうに着飾ったオッチャン達が勢ぞろいしていた。

 正面にはまだ若いにーちゃんが、豪華な椅子に腰かけている。

 あの立ち位置って、やっぱ、王様とかってやつ?

『だよなー』

「貴公がユーシャ殿か?」

「確かに、わたしはユーシャだが。誰か説明してはくれまいか、これはいったいどういう状況であるのだろう?」

 良くわかっていないらしい勇者ねーちゃんは、頭を下げるどころか膝をつくことすらせずに首を傾げている。

 王様の御前ですよー、勇者ねーちゃん。

 ぶれいものーって斬られたらたいへんですよっ!?

「迎えの兵は何も説明しておらんのか。まったく……」

 王様は玉座から立ち上がり、ゆっくりと勇者ねーちゃんの目の前まで歩いてきた。

 周りのざわつく声など気にもしていないようだ。

「ユーシャ殿。貴公のこれまでの幾多の行いは全て我が耳に届いておる。そして、先の魔王撃破の報を受け、わが国では、貴公を公式に勇者として称えることにした!」

 えー、勇者ねーちゃん、本当の勇者になるってことかい!

 そりゃすっげなー!

 ……ところで三毛猫魔王倒した話とかもう広まってるの?

『おー、おめでとー勇者ねーちゃん!』

「……わたしは公式だろうか非公式だろうがユーシャなのだが、それがどうしたのだろうか?」

 って、勇者ねーちゃん、理解してねえっ!?

 王様、ちょっと困ってるだろっ!?

「こほん、あー、つまり、以後、貴公は勇者ユーシャを名乗り、今後とも世の平和を守るために尽力してほしい。そのために国からも支援を行う」

「……よくわからないが、かたじけない」

 なんかもらえるらしいと分かったのだろう、勇者ねーちゃんはようやく頭を下げ、その場に膝をついた。

 ……おいしーものとかくれる人には、ふらふらって着いて行っちゃうんだよね、勇者ねーちゃん。

『これ、ごちそう期待してる顔やなー』

「……女神の祝福を賜ろう。勇者ユーシャ殿、ともに前へ」

 まだ若い王様は、少しばかり刺激的な勇者ねーちゃんの格好に戸惑っていたようだが、手を差し伸べた。

 手を取って、勇者ねーちゃんを立ち上がらせると、そのまま手をつないだまま王座の方に向かっていく。

 なんか結婚式みたいだなー。

『勇者ねーちゃんは割と優良物件と違う? この世界的には少々行き遅れかもしれんけどー』

 しーっ!

 それはイッチャダメ―!

「――女神サチ・ヤーンよ、勇者ユーシャに、女神の祝福を」

 王座の奥にはカーテンのようなもので仕切られた場所があり、王が声をかけると脇にいたメイドさんぽい人が天井からぶら下がる紐を引いた。

 さー、っとカーテンが左右に広がって。

 そこにいたのは。

 目も覚めるような。

 蒼い髪をした、美少女。

 歳のころは、十を少し超えたくらいだろうか。


 ――え?


 どくん、と今の俺には無いはずの心臓が脈打つ。

 初めて見るはずなのに、どこかで見たことがあるような。

 アジア風の前で重ねる着物を幾重にも着込んで、頭には月桂樹の冠?のようなものを乗せている。

 その服装さえも、どこかでみた意匠に思える。


 まさか。


 王は、美少女の前で膝をついて頭を下げた。

 勇者ねーちゃんも、隣にならんで膝をついた。

「――汝ユーシャに、女神サチ・ヤーンの名において。祝福を授けます」

 美少女は小さく微笑んで、胸の前で手を組んで祈りのしぐさをした。

 淡い光が、ポゥ、とその身体から飛び出して、勇者ねーちゃんに降り注いだ。


「……ありがとうございます」

 勇者ねーちゃんが、深く頭をさげ、それからふと、何かに気が付いたように顔を上げた。

「……サチャーン……さっちゃん? ……もしや、あなたが、さっちゃん殿か?」

 その言葉に。

 美少女が瞬きをする。


『……ガチホモに後ろ掘られてその道に進んじゃったうんこマンである可能性が微レ存』

 んなわけあるかーっ!?

 さっちゃんだ、さっちゃんだよっ!?

 きれいになりすぎてて、すぐには気がつかなかったよ!?

 うわー、ママさんもきれいだったけど、やっぱ、さっちゃん美少女だわ。

「……ぱんたろー?」


 ――ッ!

 悪いな、勇者ねーちゃん!

 俺、さっちゃんのところに帰る。

 長いことありがとな!

『……んーじゃ、さっちゃんはおまいに任せたで』

 え? お前はもどんねーの!?

『勇者ねーちゃんが勇者として活動するにもパンタロゥの力が必要だろうし、ふたりそろってはいさよならは勇者ねーちゃんに悪いだろう?』

 で、本音は?

『――さっちゃんはやっぱひんぬーだったよ……てかブラ担当の俺、必要ねーだろーがよぅ……』

 さよか。

 んじゃ、勇者ねーちゃんのことは頼んだで?

『おう、まかせときー』

 勇者ねーちゃんに今、穿いてる俺を脱げって言うのもあれだしなっ!

 よし、くりえいと・おぱんちゅっ!


「……光が、集まって、ぱんつの姿に?」


 どんなぱんつがいいだろう、別れたときの「ちょっとせのびぱんつ」は三日しか一緒じゃなかったし、だから、さっちゃんがいちばんお気に入りだった。


「ねこのぱんつ!」


 「にゃんこぱんつ」で決まりっ!

 じゃあ、俺行くな。

 あばよ、相棒! さよなら、勇者ねーちゃん!

『おう、おまいもきばりやー』

 はっはー!

 念願の美少女のおぱんちゅやで?

 もう大興奮やわー。とらんすふぁーめんたるおぱんちゅ!

『変態めー……』


「……パンタロゥ、行くのか?」

『おう、でも俺は残るから安心しときー、ねーちゃん。ポカポカしちゃるで』

「む、そうか」


「ぱんたろー、おいでっ!」

 今行くよーっ!

 さっちゃんの、手の中へ。

「……」

 状況が良くわからないながらも、王様やら周りのおっちゃんたちがそろって明後日の方向を向く。

 それを確認したさっちゃんが、そっと着物の裾をたくし上げて。

 俺に足を通した。

 ああ、懐かしい、さっちゃんのあんよだ。

 ……って、あれ?

 俺をそのまま穿くって、さっちゃん今ぱんつ穿いてなかったわけーっ!?

「……かえってきた、ぱんたろー」

 おう、ただいまだぜっ! さっちゃん!

 なんかいい匂いする。

 ぽかぽかあったかい。

「……もう、どこにもいかないでね」

 おう!

 でも、にゃんこぱんつは流石にちょっと子供っぽすぎたかね?

 なんか別のにした方が……。


≪最終進化条件を満たしたよ、おにいちゃん!≫

≪こんぐらっちゅれいしょーん≫

≪進化しますかにゃ?≫


 え、まだ進化先あったんや。

 今のさっちゃんにふさわしい、最強のおぱんちゅにしたってくださいシス子ちゃん!


≪最終クラスチェンジが発生したにゃ≫

≪ゆうしゃのぱんつ Lv99 → めがみのぱんつ LvXX≫


 え、まさかそれ。

 存在すら確認されてなかった、あのぱんつ?


 光に包まれて。

 さっちゃんのやわらかくて暖かい感触を感じながら。

 俺は……。

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