まおうのさいご
「……にゃー?」
勇者ねーちゃんに首根っこをつかまれて、ぶらぶら揺れる三毛猫。
「りむーぶ・ぱんつ」
勇者ねーちゃんは、その三毛猫が被るぱんつを弾き飛ばすと。
「ふぁいあー・ぱんつ」
一瞬で、燃やし尽くした。
『あー。もしかしたら俺らみたく、誰かの魂とか宿ってたかもしれんのに!』
ありゃー。
成仏しろよーナムナム……。
「……さて、勝負はついたな?」
「にゃー」
勇者ねーちゃんの問いかけに答えることなく、三毛猫はぶらぶらしたままにくきうを舐め、顔を洗い始めた。
「む?」
「にゃー」
「……ふむ。とすると、あの悪魔のぱんつがこの猫を操っていたとみるべきか」
勇者ねーちゃんが、そっと三毛猫を地面に下すと、三毛猫はごろごろと喉を鳴らしながらねーちゃんの足に頬を摺り寄せた。
なんか媚びてるっぽいなー。
おっと、呪い解けてるっポイ?
癒しの白じゃー! あと汚物消去できれいさっぱり!
「……礼を言う、パンタロゥ。今回の敵は、流石にきつかったな」
三毛猫とはいえ、魔王やったもんなー。
しかもあいてもパンタロゥとかね。
『……ほんとに終わったんかな?』
え、なによー?
不安になること言わんといてー?
『三毛猫のぱんつは灰になったけどよ、俺らで考えてみ? 一瞬でクリエイト・ぱんつして、とらんすふぁーめんたるぱんつで移れば、再起可能やろ? 俺やったら前もってあちこちにぱんつ隠しとくけどな』
そういや三毛猫魔王はミニマムサイズのぱんつとかも飛ばしてきたもんなー。
小さいのやったらとっさにやられてもわからんかも。
周囲にぱんつ反応あるー?
『……俺ら、だけか? 小さすぎて拾えないっちゅーこともあるかもしれんけど』
とりあえずは、大丈夫ってことでいいんかね。
ふー、疲れた。
「むう、包囲から逃げ出した時に荷物も放り出したままか。街までは距離があるが取りに戻るのもな……」
んー、ちょっと待ってて勇者ねーちゃん。
『なんか考えあるのん?』
いや、三毛猫がやってた召喚ってさ、もしかしてーって思って。
荷物の中にねーちゃんのぱんつ入ってたよな?
『よう漏らすからなー、勇者ねーちゃん。替えは割と持ってるみたいやで?』
おし、さもん・ねーちゃんのおぱんちゅっ!
ぴっかー!と光って、勇者ねーちゃんの荷物が召喚された。
やっぱり、三毛猫魔王が魔物にぱんつ穿かせてたのは、操るためであると同時にさもん・さーぱんつで呼び出すためであったようだ。
『ほほう。これええ感じやなー』
「む、もしやパンタロゥか。助かる」
勇者ねーちゃんは、荷物を背負うと、まだ少しばかり痛むらしい足を少し引きずって歩き始めた。
「にゃー?」
その後を、三毛猫が付いてゆく。
「……お前も来るか? よし」
ねーちゃんが、ひょいと抱きげて、胸に抱える。
にゃー、と鳴いてお胸に頬を摺り寄せる三毛猫。
「(にゃは、たすかったにゃ)」
あん? 今なんか言った?
『……この猫、しっぽにリボンなんかしとったっけ?』
オボエテネ。
まあ、いんじゃね?
だまってれば、ぬこかわええから。
『まあ、そだなー』
何日か歩いて、ようやく街にたどり着くと。
なんか妙に騒がしくね?
『なんかおまつりでもあるんかね?』
ってか、武器持った兵士っぽいおっちゃんとかがわらわら歩いてるんだが。
なんぞあったんかね?
「……物々しいな」
勇者ねーちゃんも、首を傾げている。
あれかね、三毛猫魔王が魔物集めてたから、支配から逃れたそいつらが暴走してこっち来てるとか?
『あるかもなー?』
って、それまずくね?
「――そこのお方、少し待たれよ」
「む? わたしに何か用か?」
勇者ねーちゃんが兵士に声をかけられて立ち止まった。
兵士は何か紙に書かれた人相書きのようなものを何度も見比べて。
「もしやそなたはユーシャという名ではないだろうか?」
「……確かに、わたしはユーシャだが」
ねーちゃんが答えると。
わらわらと兵士が集まってきた。
って、え、ちょ、まさか。
五年前の、アレ、今頃になって?
『年増ねー…』
イッチャダメーッ!?
って、やばくね?
「……すまぬが、城まで一緒に来てもらおうか」
勇者ねーちゃんが、牢屋にいれられちゃうっ!?




