あくまのぱんつ
「じゃんけんてゆーのは……にゃ?」
三毛猫魔王、ぐーちょきぱーを説明しようとして自分のにくきう付きのおててでは、せいぜいグーとパーしか作れないことに気が付いたらしい。
「にゃー! あちしのにくきうじゃ、じゃんけんできないにゃー;;」
……これは、やはり。
『俺らみたいなのがぱんつに宿っていて、そいつが猫を操ってる可能性が高いな』
だよなー。
でもって戦闘力は低いとみて間違いなさそうだ。
これはもう、勇者ねーちゃんにズバっとやってもらうしかっ!?
「……」
しかし勇者ねーちゃんは三毛猫魔王を見つめたまま、無言で構えたままだ。
「ひとつ、尋ねよう、三毛猫の魔王」
「なんですにゃ?」
「貴様は、魔物を操って、何をたくらんでいる?」
「にゃにゃ?」
三毛猫は首を傾げて、それからにやあ、と口の端を吊り上げて笑った。
「……あちしの世界征服に興味もってくれたにゃ? 今からでもあちしの仲間になるにゃ?」
「世界など征服して何をする気だ?」
「にゃ?」
何を言われたのかよくわからなかったようで、三毛猫がさらに首を傾げる。
斜めにし過ぎて、ころん、と一回転して地べたに足を広げてお尻を付いた。
「え? えーっとにゃ、えーっと……」
困ったように、三毛猫がにくきうで頭をなでる。
『……これはあれやな、征服することが目的で、征服して何をするか考えてなかったっちゅ―顔やな』
はた迷惑な猫だなー。
こたつで丸くなってりゃ、勇者ねーちゃんも背中なでなでくらいはしてやったろうに。
「……」
「……」
無言で見つめ合う、三毛猫魔王と勇者ねーちゃん。
「えーっとにゃ? すっごい力が手に入ったらから、とりあえずやってみるかにゃーって感じですにゃー」
おお、ぶっちゃけやがった。
『やっぱそうかー』
「……」
無言で睨み付ける勇者ねーちゃん。
「……えーっと。じゃあ、みんながごろごろお昼寝して暮らせる世界をつくるにゃ! みんなしあわせにゃ!」
おー。
できれば美少女の膝枕を付けてくださいっ!
『俺はムチムチプリンなねーちゃんがいいですっ! って、俺らが転んでどーすんだ』
「……ふむ。しかし、それは力で成し遂げるものではあるまい」
勇者ねーちゃんは、ゆっくりと剣を振り上げた。
「その野望を斬って、捨てる」
「にゃっはー」
地べたに尻を付いたままの三毛猫が、にゃあ、と一声鳴いた。
「じゃあ、ガチバトルにゃ」
「……ッ!?」
開始の合図すらなく。
突然、空中に現れた礫のようなものが勇者ねーちゃんの腕をかすめて、彼方の地面に溝を作った。
って、今のまさか、ぱんつ・フォールかっ!?
しかも無詠唱っぽいっ!?
『ミニマムサイズっぽいが、速度は俺らのと対してかわんねーぞっ!?』
拳銃で撃たれたみたいなもんか、やば、こっちの防御力こえてるで?
ねーちゃん、かすっただけで血が出とるっ!
癒しの白じゃーっ!
ってか、誰だよ三毛猫魔王が攻撃力低いとか言ったやつっ!?
『俺らやろー? しかし、ひとつだけだったし、サイズは小さいし、勇者ねーちゃんほど無茶苦茶じゃなさそうだ』
「……今のは、ぱんつ・フォールか。とするとやはり貴様の被っているのは」
「にゃは、もちろん、パンタロゥにゃ!」
三毛猫魔王は、ぱんつのゴムを引っ張ってみょーんと伸ばした。
「……悪事に加担するパンタロゥなど、パンタロウではない。悪魔のぱんつに違いあるまい」
「あちしが被ってるから、むしろ魔王のぱんつだとおもうにゃ!」
ほむ?
って、悪いことするパンタロゥが悪魔のぱんつなのか。
ってことはうんこマン・たっくんもあながち間違ってたわけじゃねーんだな。
『考えてる場合と違うでー』
おっと。
「……くっ!」
続けて三つの礫が飛んでくる。
二つは剣で弾いた勇者ねーちゃんだが、一つを避け損ねて太ももを貫かれた。
「にゃは、これでもう、にげられないにゃー」
ばっかおまえ、こっちにゃ癒しの白があんだよっ!
……って、あれ? 血が止まらねえぞ?
『ちょ、これ、呪い属性ついてやがる! 癒すはしから傷が開く』
呪い耐性も結構あっただろ!? MAXじゃないにしても、効き目ないんかよ!?
『ちっとやそっとの呪いじゃないってことだろ! 見た目はアレでもやっぱ魔王だな、このにゃんこ!』
「……ふむ」
勇者ねーちゃんが、不敵な笑みを浮かべた。
≪熟練度が一定の値に達したにゃ、おにいちゃん!≫
≪耐水がLv90に上昇したにゃ≫
……って勇者ねーちゃん、カッコつけながら漏らしてんじゃねーよっ!?
『おちつけバカ! この近距離で、あのにゃんこはまだちょっとねーちゃんを傷つけることしかできてねえっ! 攻撃力が低いのは確かなんだよ!』
じゃあ、やられる前にやるしかねーのか。
『それに良く考えてみろ。ぱんつがあのにゃんこを操ってんだしたら、敵は結局のところあの黒のレースだけだ。対してこっちはッ! 勇者ねーちゃん、俺、おまい、三人だろ!』
そっか! 三対一とか圧倒的に有利じゃないですかー!
むっはー!
あのにゃんこ、とっとと倒してモフりたおしちゃる!
『おう、その意気だ! ってか乗りやすすぎだなお前……』
これまで攻撃は勇者ねーちゃんにまかせっきりだったが、俺とお前も参加すれは攻撃力三倍ってなっ!
勇者ねーちゃん!
やっちまうでー!
「にゃっは! ユーシャちゃんをどう料理しちゃおうかにゃー? お胸ふむふみしちゃおうかにゃー?」
「ふん、ならばわたしは貴様をモフりたおしてやろう」
「にゃは、にゃんこぱんち! にゃ」
ばかめっつ! くりえいと・ぱんつ!
「にゃにゃっ!? まさか、ぴんぽいんと・ばりあ・ぱんつだにゃ!?」
『おっしゃー! 効くかわからんけど、りむーぶ・ぱんつっ!』
「にゃ!?」
おしい、脱げそうにはなったけど押さえられたなっ!?
「パンタロゥ、助力感謝するっ!」
勇者ねーちゃんがなぜか剣を放り投げて。
ひゅー、と傷ついていない足で一歩踏み出し。
「――にゃ?」
三毛猫の、くびねっこをつまんで、ひょいと持ちげた。
ぶらーん、ぶらーん、とぶらさがる三毛猫魔王。
「……ねこはこうするとおとなしくなるものだ」
――え、これで決着?




