いろいろあった
――勇者ねーちゃんと旅した五年ほどの間には、いろんなことがあった。
そりゃあ、もう、ほんといろんなことがあった。
勇者ねーちゃんイベント起こし過ぎなのだ。
特級フラグ建築士とでもいうのか、とにかく巻き込まれるし絡まれるし首を突っ込む。
もともと武者修行の旅的なものらしいので、勇者ねーちゃんにとっては願ったりなのかもしないが、一緒にいる俺らにはいい迷惑なのだった。
全てを語るには時間が足りないし、少しばかり特筆すべきことだけ語ってみるとしよう。
まずひとつめ。
実は勇者ねーちゃん、勇者じゃなかた。
いや、何を言っているのかよくわからないかもしれないが、実は俺らの勘違いだったのだ。
勇者ねーちゃん、単にユーシャって名前だったらしい……。
まあ言い馴れちゃったので勇者ねーちゃんで今後も統一しとくけどなー。
ふたつめ。
勇者ねーちゃん、じつはまだ十代だった(驚愕の事実)!
いやあれから五年経ってるから今はもう、きっと二十歳超えとるんやけどね?
それが判明したのは「十年ワカガエール」だかなんたらいうスキルを使った時のことだった。
ウハウハ美少女になるかなーって思ってたら、さっちゃんバリの幼女になったのだ。
まさに勇者ちゃん! かわいかったぜー!
俺的には大歓迎だったのだが、勇者ちゃんが「こんななりでは剣が振れないのー」と抗議したので封印することになったのだ。
あれだね、北欧系の美少女はすぐに劣化するんだよなー。
妖精みたいな時期がみじかすぐる。
いや、勇者ねーちゃんも悪くはないんだけどなー。
みっつめ。
……これは正直、語りたくはないのだが。
男性系下着も、わりと極めちゃった……。
俺らのぱんつ魔法のおかげで、勇者ねーちゃんが結構有名になってきたころ。
洗濯して干されていた俺が、盗まれたんだよな。
さっちゃんに引き続き、勇者ねーちゃんからも引き離されるのかよって大騒ぎしたんだが、ブラ担当が勇者ねーちゃんに装着されたまんまだったので合流することはできたのだ。
だがしかし。
合流できるまでの数か月の間に。
俺は。
男に穿かれていたのだったー……。
ただの下着ドロかともってたら、不思議アイテムとしてのパンタロゥだと狙って奪われたらしい。
なんか強制的に変身させられて穿かれたんだ。
もっとも勇者ねーちゃんほど相性が良くはなかったらしく、さっちゃんに穿かれてた時の方がまだマシな程度の威力しかでなかった。
未だに思い出したくない男のパンツ時代唯一の収穫は。
特殊なぱんつに進化できる条件を満たしたことだった。
まさか「えっちゅうふんどし」が「てぃーばっく」や「ひもぱん」へ進化する条件だとは思わなかったよ……。
形状似てるっちゃー似てるけどさ。
おかげで、これまで「ぱんコレ」では敵側専用だと思われていた、いくつかの超セクシー系おぱんつに進化可能になったのだった。
勇者ねーちゃんもノリノリで穿いてくれたけど、ほぼ紐だけな「ぶいすとりんぐ」だけは流石に恥ずかしかったらしい。
「くくく、くいこむっ!?」
って顔を真っ赤にしてた。
何度か、さっちゃんの村があるはずの森にも挑戦した。
結果は全敗。
ぱんつ魔法やスキルを駆使してさえも、どうしてもさっちゃんの村にはたどり着けなかった。
まだ、あきらめてはいないけれど。
正直、打てる手がほとんどない。
そんな旅を続けるうちに、いくつか不穏なうわさを聞いた。
魔物が組織的に行動するようになっているというのだ。
そして、その陰にちらつく魔王の影。
最初にブラ担当が言った時には「厨二病やめれ」なんて返したものだが。
まさか、俺らが本当に、世界を救うために魔王を倒しに行くようなことになるなんて。
あの当時は思いもしなかった。
――そして今、俺たちの目の前には。
「にゃは、よくきたにゃ、ユーシャちゃん! 歓迎するにゃ」
なぜか頭に女性用ぱんつを被った、二本足で歩く三毛猫が居た。
「三毛猫のマオですにゃ!」
……どうやら、魔王らしいです。




