とらぶるたいしつ
勇者ねーちゃんは、夜寝る前になると、俺らをきちんと人の形に並べていろいろ話しかけてくれた。
単なる独り言でも、たとえばぬいぐるみなんかに話しかけるみたいな、誰か聞いてくれると少しばかり話しやすくなる、なんてことがあるのだろう。
ぽつり、ぽつりと取り留めもなく話してくれる内容は多岐にわたっていて、この世界のことをほとんど知らない俺らにとって、とても興味深いものだった。
――あの街での出来事も聞いた。
ふらり、と街を訪れたねーちゃんが、何か仕事をしようと冒険者ギルド的な酒場を訪れて、酔っ払い連中に絡まれたのがそもそもの始まりだったらしい。
きっと酒場でねーちゃんに敵意を持ってたやつらのことだろう。
あれだ、「はっ、そんなほっそい腕で依頼がこなせるのかよ。ミルク飲んでクソして帰んな」「うざい」ドカバキグシャ、みたいないわゆるお約束テンプレかましてたわけだな。
……俺らのいないところでイベント発生しててもなーと、少しばかり思わないでもない。
とにかく雑魚どもを叩きのめして、険悪な雰囲気になってしまいギルドで仕事を引き受けるなんて状況じゃなくなったところに。割って入ってきて仲裁してくれたのが年増ねーちゃんだったんだとさ。
仕事を探しているならいいのがあるわよ、と紹介してくれたのが森の奥の調査。
俺らのいたあの森のことだな。
何か凶悪な魔物でもいるのか、森自体に何かがあるのか、ある範囲より先に進むと誰も戻って来なくなるのだという。
あなたくらいの実力があるなら、挑んでみてもいいんじゃない?
こんなところで酔っ払い相手にしてないで、その実力を証明してごらんなさい。
って乗せられて勇者ねーちゃんは森に入ることになったのだそうだ。
まさか賭け事のネタにされた上に、毒入り食料まで持たされることになるとは思わなかったようだがなー。
『……ってゆーか、その流れで不審に思わない勇者ねーちゃんがオカシイよな? 普通に考えたら誰も帰って来ないところに行けって、死ね、って言われてる様なもんやろー』
まあ、勇者ねーちゃんは人がいいからな。
その流れで年増ねーちゃんに感謝とかしてたわけだし。
考えるのが苦手ともいうけど。
『遠まわしにバカっていってねえ?』
そうともいう。
『酒場で大暴れしたせいで”もしかしたら生きて帰ってくるかも?”って思ったやつが結構現れて賭けが成立するようになった、ってのもある意味勇者ねーちゃんの自業自得なんかね』
それは微妙に違うくね?
ねーちゃんがなんかすっげートラブルに巻き込まれやすい体質なのは間違いなさそうだけどなー。
『それはいえてる。じゃなきゃ俺らに会ってねえよなー』
……俺らはトラブルかいっ!?
『あれ、自覚なかったん?』
「――しかし、さっちゃん殿というのは何者なのだろうな。初めて会った時のパンタロゥの姿からしてまだ幼い少女なのだろうから、あんな森の奥に入ることもないだろうし、ましてや下着を落とすとも思えない」
勇者ねーちゃんはそっと俺に触れて、撫でながら、ささやくように言った。
「所有者の欄に未だその名がある以上、あの森で命を失ったわけでもあるまい。……とするならば、さっちゃん殿はあの森に住んでいるのだろうか。まさか風で飛ばされた洗濯物、ということは? 何にしても、あの森の秘密に迫る、唯一の手がかりなのかもしれないな、お前は」
ってか俺らも迷子ですん。
帰れるものなら帰ってるわよぅ!
でも、確かにあの森は不思議の森っぽいわねっ!?
さっちゃんの村って、なにか隠れ里的なものだったりするのかもしれないわ!
『……なんでカマっぽい口調なん?』
いや、どうも勇者ねーちゃん、俺らが女性用下着なだけに、俺らの人格を女性っぽく思ってる節があるんだよな?
なんか触り方とか妙に気安くって、同性の友人に話しかけるみたいな感じだろー?
『ふむー。俺らの声は聞こえんからなー。まあ実際、男性的な人格が入ってると思ってたら俺らを着けたりせんやろしなー』
まあ、仲良くやっていこうぜー。
『おう。でもカマはやめときー』
さよけー。
――勇者ねーちゃんとの旅は、いろんな意味で波乱万丈に満ちたものだった。
あれか、勇者ってやっぱり巻き込まれ体質なんかね?
『かもなー』
街道を歩けば、盗賊や魔物に襲われる人々に出会う確率がほぼ100パー。
街に入ればぶつかった少女が実は……云々。トラブルに巻き込まれる確率が100パー。
『RPGでいうなら大規模キャンペーンシナリオが20本くらい進行中。小規模なクエストは100超えたくらいかね?』
やっべー。勇者やべー。
ゲームとかやってたらなんも起こらんのはつまらんやろうけど、こうもイベント続きだと正直ちょっとだるいわー。
たまにゃ温泉でのんびりみたいな展開はないんかねっ!?
『温泉とか行ったら、きっと湯煙殺人事件とかはじまるんやでー?』
ありそうで怖いっ!
しかし、意外に勇者ねーちゃん顔売れてないんやな?
こんだけいろいろ活動してれば少しは顔が知られるもんと違うんかな?
『顔バレしてたらやばくね? 何のためにあの街でたんだか』
冒険者ギルド?的なのも、基本はその街だけの組織らしいから、少し離れた街に行くだけでしれっとお仕事出来るようになってたもんなー。
『まあ勇者ねーちゃんもあんまり一か所に留まらんと、どんどん街を渡り歩いてるからなー』
……そういや、どこ目指してるんだろな?
当てのない旅、みたいな感じだけどさ。
『武者修行の旅、なのかね? 世界を見て回るってゆーか』
まあ、ぱんつのレベルはむっちゃ上がったよな。
なにせねーちゃんがぱんつ魔法使うたびにバカスカPPが入ってくるし。
防具系ぱんつはどんどん進化を繰り返してだいたい埋め終わっちゃって、しょうがないのでまた女性用下着系に戻って手当たり次第に埋めてる感じなのだ。
最初は驚いていた勇者ねーちゃんも、最近は「次はどんなのだろう……?」とほぼ日替わりぱんつを楽しみにしているようなところがある。
『こうなりゃ、全下着をコンプするかね……?』
ば、おま、まさか白ブリーフ系列をををっ!?
流石になー。
勇者になー。
男物のぱんつはなー。
んー? そういや「女勇者のぱんつ」とかって進化で行けたっけ? あれ何系だったっけ?
『イベント物に進化は無理じゃね?』
いや、意外といけんじゃね?
ふむー。こうなったら勇者のぱんつ、さらには伝説の「女神のぱんつ」とか目指してみるかっ!?
『あれ、存在すんの?』
あれだけ発見報告がないところを見ると、実はガチャではでなくって特殊なルートで進化する系だったりすんじゃね?
普通は進化させて目的のぱんつにするより、ガチャひいた方が速かったりするからなー。
意外と可能性高そうじゃね?
流石に全進化ルートを試した暇人はおらんやろ。
『こっちはぱんつ魔法によるPP貯めだったり、勇者ねーちゃんの異常なPPがあるから冗談みたいに簡単だけど、「ぱんコレ」では一人レベル最大にするのもすっげー大変だしなー』
まあ、とりあえずは可能な限りぱんつのレベル上げてどんどん進化してけば、いずれ進化先リストにでてくるんじゃね?
あるいは、「ぱんコレ」には無かった下着とかも出てくるかもしれないしなー。
『おう、たのしみやなー』
――そんなこんなで旅を続けるうちに。
五年ほどが過ぎた。




