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ぷろろーぐ

「ちくしょー、またハズレかよっ!」

 俺はスマホを片手に悪態をついた。思わず床にスマホを叩きつけてしまいそうになって、あわてて手を止める。

 俺がやっているのは「ぱんつコレクション」こと「ぱんコレ」というゲームだ。

 ぱんつ娘、通称ぱんむすと呼ばれるぱんつ一枚のオンナノコを集めて部隊を編成し、レベルを上げたり進化させたりして最強のぱんつ部隊を目指すことを目標としたゲームである。

 ……自分で言っててなんだが、ちょっと頭おかしいゲームだと思う。

 昨今、いろいろなものが擬人化されてゲームになっているが、敵も味方も下半身がぱんつ一枚という、ボトムスを擬人化したこのゲームはちょっと製作者の正気を疑う。

 何が頭おかしいって、このゲーム、ぱんてぃコレクションではないのである。

 もしそうであれば、エロゲとかで普通にありそうな気がするし、俺だって男だしぱんつ一枚のカワイイ女の子のイラストを集めるのに否は無い。女性にはドン引きされそうだが、俺としてはむしろ「よくやったッ!」と声を大にして叫んでいただろう。

 だがしかし。

 ……もう一度言おう。このゲーム、ぱんてぃコレクションではないのである。


 ――つまり、女性用下着だけでなく、男性用の下着も擬人化されているのであった。

 ちなみに、こちらの場合は通称パンツ息子、パンむすという……。


「白ブリーフ、何枚目だよ……」

 画面に表示された、白いブリーフを穿いた、上はランニングシャツ一枚の少女のようにしか見えないオトコノコ。ランニングシャツの裾が長くて、ワンピースのように見えなくもないところが妙にかわいくてまた腹立たしい。

 胸はないけど。かわいいんだよ、ちくしょう。

 憮然としたまま、イラストをタップするとキャラボイスが流れた。

『ボク……オトコノコだよ……? いいの……?』

 ……いや、よくねーよ。

 どう見てもカワイイ女の子にしか見えないのに、ついてるだなんて詐欺もいいところだろうがッ!

 他人が男の()に萌えることを否定をするわけではないが、少なくとも俺は萌えられない。

 設定上、ついている、というだけで萌えられない。

 誰がこんなバカみたいなのを許したんだこんちくしょう。

 余談だが、男の娘な「白ブリーフ」などまだましな方で、「えっちゅうふんどし」などガチムキのオッチャンがこちらにケツを向けて、やらないか?とでも言いたげなイラストだ。男性向けの女性下着の擬人化に限らず、女性向けにと男性用下着の擬人化もしたらしいのだが、どう考えても方向性を間違っている。

 ……やっぱり頭おかしい。

 まあ、それはそれとして。

 俺はガチャを引くのに必要なポイントの残りを確認してため息を吐いた。少しばかりのめりこんでしまったせいで、だいぶ減ってしまっている。

「今月はだいぶ使っちまってるし、どうするかな……」

 白ブリーフでだいぶ萎えた。

 お気に入りの縞ぱんちゃんを表示させて、英気を養う。縞ぱんはツインテだ。誰がなんと言おうとツインテだ。縞ぱんは横縞がジャスティス! 異論は認めない。

「……あと2回、ガチャ回したらやめにするか」

 せめてオンナノコが出て欲しいぜ。

 全国で数十万人が毎日のようにガチャを回して、それでも噂レベルでしか存在が確認されていないという「女神のぱんつ」が出て欲しいだなんて贅沢はいわない。

 せめて「いちごぱんつ」ちゃんか、まだ持ってないかなりエロイ「ろーれぐ」ちゃんが出ないかなー。

 ええもんでますよーに。

 ぱんつの神(……そんなのいるのか?)にむにゃむにゃと祈りを捧げながら、ガチャを回す。

 すると。

「……ん!?」

 いつもと違うエフェクトに期待がかかる。これは、まさか、レア以上が出るときのっ!?

 ……が。

「って結局、白ブリーフかよっ!」

 表示されたのはおなじみになった白ブリーフくんであった……。

 くそう、ぬか喜びさせやがって。

 どうせならまだ持ってない「赤ブリーフ」とか、「ぶーめらんぱんつ」出ろよ、とか思ってしまう俺はかなり病んでいるのかもしれない。ホモちゃうけど。

「はぁ。……ん?」

 ため息とともに邪魔な白ブリーフを削除しようとして、ふと違和感に気が付いた。

 ブリーフのゴムの部分に赤いラインが入っている。

「こ、これはまさか」

 おそるおそる、画面の白ブリーフをタップする。

『ボク、オンナノコだけど……いいの?』

「げ、激レアキターっ!」

 イイヨイイヨー! カマワナイヨー!

 あまりに苦情が多かったせいだろうか。

 何度目かのバージョンアップで追加された、パンツ娘であった。男性用パンツの擬人化でありながら設定上はオンナノコであり、セリフやボイスがそれらしいものに変更されているという特徴がある。

 見た目にはゴムの部分に赤いラインが入っているだけという違いではあったが、設定上、オンナノコなのだ。男性用下着を穿いたオンナノコというのが、想像するだにまた背徳感があってとてもよい。むはー、たまらん。

 見た目はちーっともかわんないんだけどなっ!

 いいんだよ、公式設定がオンナノコってだけで!

 イラストの見た目はかなり好みなんだよ、白ブリーフ!

 ひゃっはー! ついてるぜー! けどついてないぜ(なにがだ)!

 浮かれまくって、部屋の窓を開け、空を見上げてぱんつの神にお礼の祈りを捧げる。

 ぱんつの神さま、ありがっとー!


 ――いいってことよー。


 ……あれ、なんか返事があったような?

 ふと見上げると、流れ星が。

「ああもう、ぱんつになりたい! おぱんつになりたい! かわいい美少女のおぱんちゅになりたいっ!」

 バカなテンションで思わず流れ星に願いごとをしたら。

 ……ってあれ、なんか流れ星こっちにむかってね?



 流れ星直撃。

 俺、死亡しますた。


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