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宜しくです(’-’*)♪

「ごめん、俺ここで寝られる気がしない………」

「何故だ?ここは東京都内で一番と言われるほどのホテルだぞ。ベッドだってシルクで出来ているし寝心地も十分じゃn………」

「――だからだよっ!」


 黒ずみだらけの狭い空間で過ごしていたから、こんなベッドは慣れていないんだ!

 シルクとか破いたりして弁償するようになったら俺金払えないからなっ!

 ていうかこの部屋。俺の住んでいた部屋より三倍はでかいぞ。

 俺が、何年も働いて(バイト)働いて(バイト)働いて(バイト)頑張ったものをコイツらはすぐに手に入れられるんだ………。

 あぁぁぁぁぁぁ、働く(バイト)のが馬鹿らしくなってきた。


「ちなみにこのベッドの値段は?」

「うーん。大体一億三千万円くらいかな」

「ぶほっ………!」

「ちょ、どうした優!起きろ、おい、優!」


 あぁ、父さんの顔がぼやけて見える。俺は微睡みのなかに意識を沈めた。




◆ ◆ ◆ ◆


「ギャハハハハ!値段聞いて気絶って………!もうだめ………ギャハハハハッ!」

「お前はちょっと黙れ」


 俺は笑い転げる潤の顔にアイアンクローをかました。


「い、痛い痛い痛い痛い痛い!」

「痛いをいうごとに強くしていくぞ」

「………」


 そうかそうか。そんなに痛いか。潤の掴む手を話すと、顔を抑え、涙目でこちらを見てくる潤に対してもっと虐めたくなった俺は可笑しいのだろうか。

 イケメンだったころの潤を思い出してちょっと本気になっちゃっただけなんだ。許してピョン。


「しっかしなぁ………。こんな部屋に住めと言われてもなぁ」

「なら、もっと普通なのを探すか?」


 いつの間にか父が後ろにいた。腕には野球バットにグローブ。少なくとも某コンビニエンスストアの社長とは思えない。


「むっ、何か失礼なこと思ったな?」

「あんたはエスパーかよ」


 読心術なんて小説の中だけだと思ってた。

 まじまじと父を見ていると、腕を胸の前でクロスさせた。


「いやん」

「キモい。いっそのこと、死んでしまえ」

「酷いよ、息子。親にそんなことを言うなんて………」

「んなもん知るか。ありのままの感想だし」


 なんか、こうして絡むのがめんどくさくなってきた。

 粗か様に冷たい目をしていると、父はわざとらしくコホンと咳をしてから話始めた。


「まぁ、話を戻すとな。ここが住みにくいなら、近くに俺が経営しているアパートがあるから一度見に行ってみないか?ということなんだ。気に入ったら住んでもいいし………」


 そう言ってポケットに手を突っ込みごそごそと何かを探している。

 しばらく待つとお目当てのものが見付かったのかこちらに歩き寄ってきた。


「ほら、こんな感じ」


 二枚ほど四つ折の写真だった。

 外見は只のアパートだ。特に目立った箇所もない。室内は居間が一部屋、それに洗面所に風呂場、キッチンもついている。


「ほぅ………」

「どうだ?」

「良いんじゃないの、お兄ちゃん」

「お前はすっこんでろ」

「あ痛て」


 割り込んできた潤にデコピンをかました。

 お前は関係ねぇし。水上スキーを始めた泉ピ○子並みに関係ねぇわ。


「うん、ここ良いな。月いくら?」


 俺が問うと父は右腕をあげて、親指と人差し指で丸を作った。


「タダ」

「MA☆ZI☆DE」


 えっ、何で。俺が息子だからか?それともアンタが金持ちだから土地税とか簡単に払えちゃうとか。

 まぁ、深く考えても仕方がないか。


「気に入った?」

「かなりな………」

「そうかそうか」


 気分がよくなったのかニマニマしながら部屋を出ていった。心なしかいつもより足取りが軽いような気がする。

 うん、父も幸せ(?)俺も幸せ。これぞ一石二鳥だな。一応夢だったら悲しいので頬をつねっておいた。タダ真っ赤になっただけ。よかった、現実のようだ。


「よかったね」

「まあな………」


 本当によかった。無駄にカネを払わずに済むのだ。男子高校生にとって諭吉様は神様なのだ。使うものではなくて見て崇むものなのだ。いわばお守りである。それを家賃なんかのせいですぐにポンポン飛んでいくとなると精神的にくるものがある。

 使っていいのは樋口さんまでだ。そう俺は決めている。

 じゃないとすぐなくなるんだもん。明日の朝御飯代とか晩御飯のおかずとか、真田コロッケとか、かなり消費してしまう。

 お金は計画的に使いましょう。


「あっ、そうだ」


 何かいい忘れたのか父が戻ってきた。


「今日はもう遅いからここでねてね」

「えっ」


 ――バタン。

 無情にもドアが閉められた。以前なら埃が舞うところだが、さすが金持ち。埃どころか塵すらない。これじゃ、俺が汚物みたいだ。


「ドンマイ!」

「………」

「あ痛て!」


 今度は無言で潤の脛を蹴り飛ばした。一々人の心を抉ってくる罪人にはキツい罰を。………まったくこんなやつがよくモテたな。俺が女なら絶対付き合わねぇ。

 ………あっ、コイツ女だわ。まだリア充のころの潤が抜けていないみたいだ。そろそろ慣れないとな。

 これじゃ、いつか俺の身体がもたない。

 なぜかって?もちろんコイツにデコピンやら脛を蹴ったりするから、それで痛んだらもともこもないからな。

 ここにいると落ち着かない。悶絶する潤を残し俺は部屋を出た。




◆ ◆ ◆ ◆


 はぁ………。と吐いた息はそよ風によってかきけされた………。

 ――なんてカッコいいこと思ってみたのだが、案外恥ずかしいのな。実際はそよ風なんて吹いていないし、そもそもはぁ………、とか息吐いていないし。

 でも、皆もあるよね。ポエムみたいなの言ってみたいこと。そういうのがかっこよく感じちゃうお年頃。それが男子高校生。まぁ、大体そうやつ書くと他の友達のネタにされたり、からかわれたり、後はタダ引かれるか。

 俺には友達が少なかったから、からかわれたりとか引かれるとかは無かった。そもそもそんな話さないし。………あれ、目から汗が。

 そんなことは置いといて。近くのコンビニの時計を外からチラ見した。18時を少し廻ったところ。辺りは暗くなり始めている。

 適当に近くの自動販売機でコキ・コーラ買った。プシュ、と炭酸飲料独特の開封音がする。


「うわっ」


 程よくシェイクされていたのかブクブクと泡が溢れてきた。ついていない。

 近くに小さい公園があったのでしばらく炭酸飲料の機嫌が落ち着くまでベンチに座ることにした。俺はパーカーを羽織っているのだがまだまだ肌寒い。極まって身震いをした。

 何もすることがないのでスマホを取り出した。サイトに繋ぎ適当にゲームを探す。パズルにRPG、レースなどなど、俺はその中から適当に選んでダウンロードし始めた。

 見れば炭酸飲料のほうは落ち着いているので手に取りグビッと一気に飲んだ。


「うへぁ………」


 なんとも情けない声が出たが仕方がない。ほとんど炭酸が抜けている。しかもベタベタ。全く本当に運が悪い。

 スマホを見るとダウンロードが完了していた。俺が取ったのはボードゲーム系のゲームだ。RPGやパズルは苦手。

 しばらく手にとって遊んでいると画面下の方に広告欄がでてきた。


【クリッククリッククリッククリッククリック】


 ………なんだよこれ。

 とりあえずポチっと。いやぁ、こういうのって俺気になってついつい押しちゃうんだよね。

 しばらく待つと、【貴方に最高の出会いと冒険を】と出てきた。………これ、異世界パティーンじゃね?

 いよいよ日常系物語から異世界転生系の物語にへんかするのかっ?――とか思っていたのだが【利用料30000円から――】と見えた時点でブラウザバックして戻った。そしてボードゲームのアプリもアンインストールして消しといた。

 うん。見事に男子高校生の夢をぶち壊してくれたな。異世界なんて無いのは解っていたさ。でもさ、解っていても憧れるものは憧れるんだ。ハーレムとかケモ耳とかエルフとか………聞いただけで興奮するような夢がつまっているんだ、異世界には。憧れたって仕方ないだろう。俺には友達が少ないんだ。少しくらい夢を見させてもらってもいいじゃないかと俺は思うわけだよ。

 てかここまでフラグ建てておいてなんもイベントがないなんて、そりゃないぜ神様。慈悲の心を見せてくれよ、聖母様みたいにさ。これじゃ自費の心だぜ。うまい、山田くん諭吉様三枚!ふざけんな、ぶっ潰すぞゴラァ。

 俺は炭酸の抜けた炭酸飲料のベタベタになってない部分を持って全力投球した。それは綺麗に弧を描いてどっか公園外に出ていった。

 ………ふぅ、帰るか。正直あの家は勘弁願いたいが、ずっと外に居ては凍え死んでしまう。思い腰を持ち上げて公園を後にした。











次は月曜日(出来たら)


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