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宜しくです。
9月28日 午後16時7分 文章の誤りを訂正。
俺は今頭を抱えていた。現実から目をそらしたかった。しかしその出来事は宇宙天文学的な確率の奇跡が起こらない限り覆されることのない事象であり、かっこよく言うと因果とも言う。
「こんにちわ。お兄ちゃん」
「やめろ、やめてくれ、やめてください。本当にやめろください」
「あはは、変なお兄ちゃん」
「ぎゃゃぁぁぁぁぁッ!!その姿でお兄ちゃんって言わないでぇぇぇぇッ!」
目の前に立たずむのは昨日まで意味嫌っていた存在。クソ理不尽鈍感野郎だった。
えっ、わからない?
潤だよ、潤。主人公体質なアイツだよ。
見た目は完全に潤だった。
しっかぁぁぁぁしっ!
アレを解放していた。ナニがって………、それは………アレだよアレ。その………オッ、おおおオッパイがね………。すっごいふっくらとしていてね。なんというか………眼福です。
じゃなくてっ!!
何で親戚なの?しかもよりによって性別女だしっ!!性別女だしっ!………大事な事なので二回言いました。
くっそー。何でだよ!何でお前がイケメンなのに俺はイケメンじゃないんだ!メガネだし地味だし!あぁ、お前みたいに青春ヒャッホイしてキャッキャッウフフしたかった、コンニャロウ!
「………声に出てるよ」
「えっ………、ふ、ふん!お前なんて知らないからな!」
「いや、何でそんな怒ってんの?てか、家族にそんなこと言うなんて酷いよ!」
と言って腕を絡ませてきた。もう一度、腕を絡ませてきた。大事なことなので(ry
胸がぁ………、てか似合いすぎだろ。お前男と思ってたから胸があることで違和感あると思ったけど、案外そうでもないのな。
何かムカつく。
てか、コイツ俺のことからかっているだろ。リア充の分際で!
閑話休題。
そんなことで今俺らは空港に来ていた。まぁ、父親の迎えなのだが。
母はいまコンビニに昼御飯を買いにいっている。完全にパシりだ。
てか、さっきから空港の人達、特に男から向けられる視線が痛いんだが。
なんなの?俺なんかしたか?
「なぁ、潤」
「ん?何、お兄ちゃん」
「いい加減言い方直せ、キモい」
「あはは、ごめんごめん。」
「そして、俺から十メートル離れてくれたらなお嬉しい」
やんわりと言ってみた。何かコイツ、俺との近いんだわ。鬱陶しい。
お前男だったんだからな?しかも、リア充。俺はお前を許さん。例え美少女になってもだ!
だから、寄り付くな。
「えっ、それは出来ない」
「………」
「無言で嫌な顔するの止めて!」
そんな顔に出ていたのか………、そりゃ、そうだ今でもこの会話切り上げて全力で無視したい。言い出しっぺは俺だけど。
はぁ、なんか精神的疲れた。コイツはやっぱり苦手だ。
「いやー、何かねこっちも女な訳ですよ」
「いきなりどうした?」
「僕は百合な訳じゃないし。どうしても、あの子達の心には答えられないんだ」
あの子達というのは美沙子達のことだろう。コイツ、アイツらの気持ちには気づいていたんだな………。
少し見返した。少しだけだからな。
「しかもね………」
ふと、俺を見上げてきた。
「何だよ」
「あはっ、何でもないよ」
何だよ、ニヤニヤして気持ち悪いな。
珍獣を見るような目で潤を見ていると、母が戻ってきた。
「サンドイッチ、卵とカツどっちがいい?」
「卵で」
「僕はカツね」
「あはは、はい、どうぞ。………………――普通逆でしょ………」
母はぼそりと呟いた。おい聞こえているぞ。別に卵が好きだって良いじゃないか。
俺は卵サンドイッチにかぶり付いた。
◆ ◆ ◆ ◆
俺は不釣り合いだ。そう思った。
なんなんだ、この美男美女家族は!?
だいたい父親。お前いま何歳だ?俺、あんたのこと二十歳位にしか見えないよ。しかもイケメン。なんで、俺はこんな地味なのに家族はみんな整っているの?もう遺伝なんて信じない!!
目の前を歩く俺の家族に俺はずっと脳内で語りかけていた。あっ、俺目立ちたくないから二十五メートルほど離れて歩いている。
ちなみに、父親の周り………半径二十メートル圏内にボディーガードとみられる人達が七人。皆屈強だった。俺が二十五メートル程離れているのもそのせいである。
信じたくない。が信じないといけない。そんな理不尽が目の前に広がっていた。
こんなに、屈強な男達に囲まれてよく談笑できるな。お陰で目立っちまくりじゃねーか。
あぁー、恥ずかし。俺じゃないけど恥ずかし。
しばらく、歩くとアイツらコンビニに入っていった。はぁ、入るしかないのか。………いや、一声かけて外で待ってよう。
俺はコンビニに入ると父親に話しかけようと手を伸ばした………――
「成敗ッ………!」
世界が廻った。違った、俺が回った。
………………えっ、何で!?何で天井が見えんの!?
「………」
『………』
よくあるよね。たまに周りが凄く黙り込むこと。つーか首が痛いんだけど。
何で?なんで俺倒れてるの?
「………な、なにするんだ!」
沈黙を裂いて、潤が走りよってきた。お前は来なくていい。
「お嬢様。コイツは貴方のお父様に汚ならしい腕で害をなそうとしていたのですよ?普通なら処刑です」
しょ、処刑!?
物騒過ぎんだろ!屈強なボディーガードが言うと無駄に説得力が大きいからな。鳥肌立ったわ。
すると、潤は叫ぶ。
「お兄ちゃんはそんなことしないもん!」
なんかコイツ、無駄に女っぽくなってんだけど………。
そして、野次。お兄ちゃんって言った時の驚愕の顔やめれ。中々傷つく。 いくら、俺の顔が地味でも血の繋がりはあるんだから仕方ない。
「お嬢様。いくらお嬢様のお心が優しく綺麗だとしてもコイツは許せないことをしたのです。止めてはなりませんしそんな嘘を吐いてはいけません」
いやいやいやいや。俺まだなんもしてないし。ただコンビニの前で待ってるって言おうとしただけだし。
あー、首が悲鳴をあげている。普通に痛いんですよ。寝技をやられると。
すると、スタスタと足音が近付いてきた。
「離してあげなさい………」
「ご主人様………、おい、小僧次はないぞ」
そう言って離れていった。てか、目立ちまくりじゃん。………おい、そこのオバハン。警察に連絡は止してください。
「優」
父親が呼んだ。振り向く。
「すまん、息子よぉ!」
抱きついてきた。えぇぇ、やめろ!俺は男に抱きつかれても嬉しくないからぁ!あぁぁ、目立ってる。目立ってるぅぅぅぅ!
むさいやら、恥ずかしいやらで顔が熱くなる。………あっ、そっちの趣味は無いから。
「ちょっ、やめろ………!」
いい加減離れろ。髭が痛い。てか母に潤よ、微笑ましい物を見るような目で見るな。止めろ、今すぐ!
「すいません。他のお客様のお邪魔となりますので、出ていってください」
そりゃ、そうだ。あんだけ叫んでたら迷惑どころか呆れられるわ。
父親も母も周りをみて顔を真っ赤にしている。今更かよ。
すいません、すいません、と心無い謝罪をしてコンビニを出た。
「こういう危機察知はわかるのな」
「まあね」
潤はいち早くコンビニを出ていたらしく、澄まし顔で待っていた。
父親………めんどくさいので父で良いだろう。父と母は羞恥で「はうあ………」とか「おう………」とか全く情けない声を出していた。
自業自得だ。俺は巻き込まれただけ。
そう、自己完結しておいた。
――恥ずかしいのは変わらないが………………。
「はぁ………、でも良いや。しっかりと営業できているようで結構、結構」
――と父は偉そうに口を開いた。
………あっ、ここアンタのコンビニなんだな………。
次回は土曜日かな?